第二章1 『女戦士』
【2018年1月19日改稿。内容に変更はありません。見やすくしました。】
「でさぁ、勇者は金欠に注意しろって言われたんだけど、僕って、あれじゃん? 酒飲みじゃん? 一日で使いきっちゃって、最初の町で定住的な?」
「やだも~、勇者様おもしろ~い!」
「あはあはあは!」
やべ、勇者超たのしい。
勇者ってスペックたけぇ~。毎晩女の子と遊べるなんて、極楽じゃん。
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「ここね」
時同じく、勇者のいる町に旅人がやってきた。
凛とした顔立ちの清廉な女性は、その装いから、傭兵だとわかる。剣を腰に差し、赤く燃えるような長髪を揺らしている。
彼女は迷うことなく噂の宿屋を目指した。
カランカラン。
「いらっしゃい。部屋なら空いてるよ」
「……すまない店主。ここに勇者はいるか?」
「ああ、あの人か。それなら今日も女子を連れてうるさくしてるよ。場所は五号室だ」
「そうか。感謝する」
そう言い、女性はそのまま廊下を進んでく。
「ちょ、お客さん?! ……もしかして、あんなべっぴんさんも勇者の連れか? くそっ! あの似非勇者め、羨ましい!」
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「でさ、僕は言ってやったの。僕が勇者――」
バンッ!
「え?」
突然、大きな物音と共に扉が開かれ、赤髪の女性が現れた。
「も、もしかして、あの人も呼んだの?」
彼女たちがざわつく。
しかし見たことのない人だ。それに怖い。なんか怖い。
「あの、部屋間違えて――」
ツカツカツカツカ。
「え、あ、あの……」
ツカツカ。
入ってくるなり、早足で近づいてきて、目の前で止まる。
「お前が、勇者?」
最初の言葉がそれって、結構あれな人?
「そ、そうだけど……」
「――っ! この愚か者オオオオオオッッッ!!!」
女性が叫びながら剣を抜き、振りかざす。
「きゃあああああああッッ!!」
「み、みんな?!」
彼女たちは悲鳴を上げながら一目散に逃げ、僕だけが取り残される。
「ひっ!」
戸惑っていると、剣の切っ先が、鼻に当たっていた。
「こんなところで、何をしている」
「な、なにって、働いて食べて遊んで、生活を――」
「……」
「す、すみませんでした!」
とりあえず土下座。
これは僕の必殺技だ。
「よ、よく見ると可愛いね。もしかして、僕を探してたの?」
そして褒めちぎる!
これでなんとか!
「――死ね」
お怒りでいらっしゃるうううう!
「私は、勇者の誕生を喜んだ。ようやく、憎き魔王を討ち滅ぼせると思った。この機会、どれ程待ち望んだかわかるか?」
きゅ、急に語り始めちゃってるんですけど。早く剣をしまってほしいんですけど!
「わかるか?!」
「い、いえ!」
こえぇぇぇぇぇ!
「それなのに! 貴様は魔王討伐へと出立し、未だにこのようなところで油を売っている……断じて許せん。わかるな?」
ご、ごもっともです。
だが、こっちにも言い分があるんだ。
「でもさぁ、金がないと旅できないし、女の子と遊べないでしょ? 僕にとって、衣食住遊は欠かせないの」
「あぁ?!」
「すみませんでした!」
やだもう、なんだよこの子。めっちゃ怖い! けど可愛い。
ヒトミちゃんと同レベルくらい怖い。それに可愛い。
でもこのままじゃ、また殺される。やっぱ可愛い。美形だし、タイプかも。
「……」
ここは、ホストで身に付けた話術で乗り切ろう!
そんでもって、彼女もハーレムに加わってもらう!
「ぼ、僕を殺したら、魔王は倒せないでしょ。その辺、よく考えてる?」
「――! 確かに、そうね」
切っ先が引っ込む。
内心ホッとしたけど、目の前の彼女はとてつもなくお怒りだ。
「けど、今も魔王が生きているかと思うと、虫酸が走るのよ! あんたが何もしてないから、余計に!」
すごい執着だ。
こういう子は何人もいたけど、別格だよ。
「な、なんで、魔王が憎いの? き、君みたいな可愛い子が、そんな物騒な格好してるのも、理由があるの?」
「魔王が、親戚だからよ」
「え?」
「私の祖母は、魔王の子を身籠ったの。それが母。けれど魔王は、母のことなんか気にかけなかった。それで祖母は、一人で母を育てたわ。私は母に育てられた人間と魔王の混血よ」
「……」
「私は許せなかった。魔王だろうと、人間だろうと、女を弄ぶ奴が許せない。なのに、勇者も同じだったわ。期待した私が馬鹿だった」
「それは違う」
「何言って――」
確かに、僕もそう思われることはある。
でも僕は軽く一線を越えたりしない。
「僕は女の子が好きだよ。でも、違う」
「は?」
「女の子は、僕にとって宝物だから、傷つけたりはしない」
「――!」
「それだけは、言っておきたいから」
「……」
やべ~~。
まんま先輩の持ちネタ使っちゃった。
一線越えないのはそうだけど、さすがに宝石ってキモいよね。
怒ったかも……。
恐る恐る見ると、彼女は赤面していた。
「ふ、ふうん。ちょっとは、信じてあげる」
あるええええ?!
チョロすぎね?! もはや、危機感しかなくね?
この子、果てしなく心配だわ~~。
あ、そうだ。
「わかった。心を入れ換えて、旅を再開する」
「……! わ、わかればいいのよ。激励に来た甲斐があったわ。魔王、絶対倒してよね」
「その事なんだけど、一緒に旅しない? 一人旅って性に合わないんだよねぇ」
「え」
「君がいたら、頑張れちゃうなぁ。ちら」
嘘だろ、赤くなってる。
本当に、心配になるほどチョロい。
この子を放っておいたら、ヤバくね?
「わ、わかったわ。そこまで言うなら、一緒に言ってあげる」
「ありがとう! じゃあ、まずは互いをよく知るために一緒に――」
「な、な、ヘンタイ!!」
バシイィィンッッ!!
頬が、痛い。
でも少し安心した。
ガードは固いのね。ガクッ。
こうして、仲間が増えました。




