番外編 『200話記念』
おかげさまで200話に到達致しました。
本当にありがとうございます!
読んでくださる方々に感謝を込め、もとい自己満足で番外編を書いてみました。
本編とは関係ない話ですので、多少キャラ崩壊してます。
以上をご理解の上で読んでいただけると幸いです。
ザザーン。
ザザァ……。
「海の音、照らす太陽……あぁ、まさか異世界に来て海水浴ができるなんてなぁ。魔王、楽しんでるか?」
「おい勇者。俺たちはどうして海水浴に来ている。時季外れを通り越して脳が追いつかん」
「そりゃあ、あれだろ。200話記念の慰安旅行」
「旅行!? 聞いてないぞ! ってか、突然この状況になって俺は混乱している! 早くデュラハンさんの元に戻らないと!」
「まあ焦るな、あれを見ろ」
勇者は優雅にビーチチェアに横たわりながら、トロピカルジュース片手に海の方角を指さした。
すると視線の先には水着姿で水遊びする美少女たちの姿が見えるではないか。
「あ、あれって」
「僕の仲間と、お前の部下たちだ」
「セイレちゃんたちもいるのか!?」
「そう。これはいわば、慰安とは名ばかりのサービス回!! 本編の流れだと水着姿の描写が皆無になりそうだから番外編でねじ込んできたってわけだ!」
滅茶苦茶だ。
だが、眼福に感謝。
「ちょっと勇者。早くこっち来なさいよ」
俺たちが水着美女たちを眺めていると、あちらから赤い髪の女性が歩いてくる。
彼女は確か、ついさっき剣を交えた勇者の仲間……。
「エリカちゃん、さすが水着を着こなしているね」
勇者の言う通り、彼女は整った顔立ちとスリムな体型がカッコよさを際立たせていた。
「ほ、ほめても何も出ないわよ。まあ、悪い気はしないわね」
「勇者様、わたくしもほめてほしいですよ」
彼女の後ろから、小さな女の子がひょっこりと顔を出す。
確か勇者と一緒にいた魔法使いの子だ。
「……」
しかし何故、彼女はこの世界でスクール水着を着ているんだ。
「うん、モルちゃん解釈一致だね」
「嬉しいですよ」
「いや、褒めてないだろ」
いかん、思わず突っ込んでしまった。
しかし魔法使いからのリアクションはなく、三人で楽しそうに話し始めた。
どうせ夢オチだろ。
……でもまぁ、せっかくだから?
羽を伸ばすのも悪くないよな。ここの所、ずっとシリアスモードで疲れたし。
いや、決してみんなの水着が見たいからという煩悩ではなくて――。
「あ、魔王様! ようやくいらしたのですね」
「この声は、サキさん?」
「はい、あなたの秘書です!」
満面の笑み、いつもよりも高いテンション、そして強調してくる胸元。
間違いなくサキさんだった。
「ど、どうでしょう? 水着姿なんて恥ずかしいです」
そう言いつつも尻尾はゆらゆらと揺れている。
「……」
しかしサキさんはパレオのついた紫色の水着だったが、普段から割と露出度が高い分……肌色に見慣れてしまっているというか。
そもそもいつもの格好のほうが過激な気がする。
――なんて絶対に言えない。
「うん。サキさんも似合ってるよ」
「あ、あれ? なんか魔王様にぎこちなさを感じてしまうのは私だけですか?」
バシャッ!!
「きゃあ!」
二人で話していると、突如サキさんに水がかけられた。
「サキュバス様、魔王様を独り占めしないで、ください」
海からひょこっと顔を出したセイレちゃんがムスッとしていた。
おお、人魚が水に浸かるのって初めて見たかも。
「正室だからって、容赦しないわよ? これは番外編なんだから、私が正室の座を奪い取ってあげます」
「んなっ! そ、そんなこと、魔王様はしません!」
「もちろんだよセイレちゃん!」
「グサッ! そ、そんな……がく」
サキさんには悪いが、早くセイレちゃんの水着が見たくてたまらないんだ。番外編だから許してほしい。
「セイレちゃんも、水着なの?」
「……! え、えと、その。ご期待に沿えず申し訳ございません。いつもの格好です」
あ、そっか。
見慣れてしまっていたけど、セイレちゃんって普段から上半身は気持ちばかりのベールと胸につけた貝殻だけだったんだ。
いや待てよ?
俺は海岸の方へと視線を向ける。
するとそこには楽しそうに水浴びをするミノ子さんの姿があった。
いつもどおり、ホルスタイン柄の水着を着ていた。
魔王軍、元から水着みたいな格好の人が多すぎないか?
「魔王様? こちらで遊ばないのですか?」
「あ、うん。少し考え事を――」
いや待て。まだ一人、希望の光が残っているじゃないか。
いつも白無垢に袖を通している雪女さんならどうだ? あの人の水着……いや、そもそも氷のような肌をまじまじと見たことなんてない。
これは是非にでも――。
「雪女さんも来れたらよかったんですけどねぇ」
「え?」
ミノ子さんは髪から滴る水を軽く絞りながら陸に上がってきてそう言った。
「雪女に炎天下は無理よ。溶けて死んでしまうからね」
「そ、それもそうか」
「魔王様? な、なんでそこまでガックリと肩を――わ、私の水着で十分ですよ!」
確かに眼福なんだけどなぁ。
てか、いつの間に復活してたんだ、サキさん。
「鍛錬終了。む? これは魔王様。水中鍛錬ですか? 我が護衛いたします」
そう言って屈強な身体の首なし男が陸に上がってきた。
「……!」
「魔王様?」
そうだ。デュラハンさん。
こんなことしてる場合じゃない。早く夢から覚めるんだ……!
「ごめん、デュラハンさん。すぐに行くから」
「……我のことは気にしないでください。あなた様は、ただ、前だけを向いていてください」
「え……」
唐突に視界がブラックアウトした。
ああ、夢が終わるのか。
それはそれで、なんだか空しいな。
第十一章「社畜魔王、失墜する」は来年から投稿いたします。
よろしくお願いいたします。