第一章15 『待ってろ勇者』
【2018年1月19日改稿。内容に変更はありません。見やすくしました。】
魔王として幾日も過ぎ、身体も仕事も、そして立場も慣れてきた。
そんな折、偵察部隊から勇者の情報が送られてきて、俺はサキさんと共に内容に目を通す。
「えぇっと……」
『勇者は現在、酒場で働いており、まったく脅威とは考えられません。しかし、今後も注意を払う必要があるかと。彼の回りには、多くの女が集まり、勇者は夜な夜な宿に女を呼んで親密にしておられます。そのカリスマは注意すべき――』
「ま、魔王様……」
手紙を途中で投げ捨てていた。
勇者が女遊びに夢中。聞いたことがない。
なにより、腹が立つ。
「ど、どうなさいますか?」
この勇者が、俺のライバル。信じたくない。
「一度、挨拶にいくか」
「――!」
「勇者の無能ぶりを拝見しに行き、笑ってやろう。魔王の力を見せつければ、こんな勇者は敵じゃない」
「それは面白そうですね! 人間への威圧にもなりますし! 至急、日程を確保しましょう!」
「頼むよ、サキさん。……待ってろよ、勇者」
この時、俺が本気になったのは、言うまでもない。
魔王の俺が言うのもおかしな話だが、勇者、許せん!