第一章1 『権力がほしい!』
【2018年1月19日改稿。内容に変更はありません。見やすくしました。】
――!?
暗闇だった。気がつくと身体はなく、ただ意識だけが確かにあった。
そうか、ここが地獄か。
親不孝者にとってはうってつけの場所だ。
――死んだんだ、俺。
孤独と虚無が揃った暗闇で、俺は最期の瞬間を思い出す。
不特定多数の悲鳴と、電車の急ブレーキ音に眩しい光が混ざりあって、鬱陶しいくらい耳にこびりついていた。
『目覚めたか、愚か者よ』
――!
だ、誰だ? 地獄の門番とか?
『我は、貴様に選択を与えるための存在である。貴様のように、くだらない生き方をした者を正当に裁くための概念だ』
さ、裁くって、地獄にも裁判があるのか?
冗談じゃない!
地獄でまで痴漢の冤罪に怯えたくない!
『……選択を与える。心して聞くがいい。貴様は幸運にも権利を得たのだからな』
幸運?
『そう。誰もがチャンスを与えられるわけではない。貴様は特別に選ばれたのだ』
そ、それって、ラッキーってこと? 生前の善行の数々が実ったんじゃ――。
『関係ない。ただの運だ』
……そ、そうですか。
『ちなみに、貴様は電車に跳ねられ、四肢が吹き飛んで肉片に――』
わああああっ! 詳しい説明はいらないですから!
『気にならないのか? 葬儀には貴様の親族が参列し、バカ息子の死を悲しんでいたぞ』
――!
『わかったか。貴様の愚かな行為の意味が』
……わかってるよ。
自分でも、バカだと思う。
でも、あの時はどうにもならなかったんだ!
『どうにかしようと、したのか?』
そ、そんな酷なこと言わなくても。
『貴様は、貴様の命が自分だけのものと思っていたか』
それは……。
『どこまでも愚かな者よ。そんな貴様に、選択を与えよう』
さ、さっきからなんなんだよ。
その、選択って。
『転生をするかしないか、その選択だ』
転生……。
それって、生き返るってこと?
『違う。別の世界で別の命として生きるということだ』
別の命?
『転生すれば、すぐに理解できる。するのか、しないのか。今はただ選択せよ』
する!
させてくれ!
いや、させてください!
『よかろう。では、希望を一つ聞き入れよう』
希望?
『どのような生き方をしたいのか、答えよ』
その問いには、少しも迷わなかった。
権力がほしい!
そうすれば、二度とあんな辛い思いはしなくて済むからだ。
『その希望、聞き届けた』
ほ、ほんとに?
『我が言葉に、偽りはない』
ありがとうございます!
『次の命、大切にせよ』
あ――。
その言葉の次に、暗闇から意識が遠のいた。感覚で言えば眠りに落ちたような感覚だった。