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社畜魔王とクズ勇者  作者: 新増レン
第一章 「社畜魔王、誕生」
18/209

第一章13 『戦い、終えて。』

【2018年1月19日改稿。内容に変更はありません。見やすくしました。】



「ううん……」


「あ――! おはようございます、魔王様」



 目を覚ますと、目の前にサキさんの顔があった。

 そして周りを見ると、この世界に来た時と同じ、寝室の上に寝ていることがわかる。


「な、なにが起こったの? オーガは?」


「魔王様はオーガとの戦闘が終わり、直後に気絶なさったのです。ですが安心してください。オーガの殲滅は完了いたしております」


「……そう、だったんだ」


「まったくもう……ふふっ」


 サキさんは笑い、こちらを優しく見つめ、くすりと笑いをこぼす。


「血を見て卒倒する魔王様、初めて見ました」


「ごめん……」


 サキさんはふるふると否定した。


「謝らないでください。あれが、あなた様にとって初めての戦いだったのですから」


 そう言い、潤んだ瞳でサキさんは俺を見た。

 どこか赤みがかった頬をしていて、とても色っぽく見える。


 見た目は年下のようで、まだ発展途上の身体なのに、目を合わせるだけで息が乱れる。


 これって、サキュバスの――!


「本当に、別人なんですね」


「え?」


 予想していなかった一言に、呆気にとられた。



「いえ、たまに魔王様らしい姿をお見せになっていたので、冗談かと思っていたのです。ですが、確信しました。あなた様は元の魔王様ではないようです」



 まあ、自覚してるけど。面と向かって言われると、キツイなぁ。


「そ、そんな顔しないでください。私はどこへも行きません。秘書の居場所は、あなた様の隣だけですから。それに……」


 ちゅ♥️


「――な、ななななにを!?」


「オーガから私を守ってくださり、ありがとうございました。そのお礼ですよ」


「で、でもキスなんて! 唇は生まれて初めてだったし」


「あら。私が初めてでしたか。それは、嬉しいです。――でも、キスが初めてということは、もしやどうて――」


「わあああああ!」

「うふふっ」


 サキさんはイタズラっぽく笑う。

 妖艶な笑みで吸い込まれそうな魅力だ。


「忘れてました? 私、サキュバスですよ? キスなんてまだまだです。うふふっ」


「な、なんか、今日のサキさん、やけに積極的のような――」


「さあ、楽しみましょ――」


 ガチャ。


 サキさんは目をぎらつかせたが、扉が開いた。


「魔王様、お目覚めに――」


「あ……」


「サキュバス様、いらしていたのですね」


 ミノ子さんがにこやかに笑い、サキさんは焦っている様子だった。


「魔王様、失礼します!」


「え、あ!」


 ミノ子さんがやってくると同時に、サキさんはあわてて部屋を出ていく。これまでと違い、隠していた小さな翼で宙を舞いながら、あっという間に退室した。


「な、なんだったのですか?」


 ミノ子さんに訊かれ、首をかしげるしかなかった。













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