第一章13 『戦い、終えて。』
【2018年1月19日改稿。内容に変更はありません。見やすくしました。】
「ううん……」
「あ――! おはようございます、魔王様」
目を覚ますと、目の前にサキさんの顔があった。
そして周りを見ると、この世界に来た時と同じ、寝室の上に寝ていることがわかる。
「な、なにが起こったの? オーガは?」
「魔王様はオーガとの戦闘が終わり、直後に気絶なさったのです。ですが安心してください。オーガの殲滅は完了いたしております」
「……そう、だったんだ」
「まったくもう……ふふっ」
サキさんは笑い、こちらを優しく見つめ、くすりと笑いをこぼす。
「血を見て卒倒する魔王様、初めて見ました」
「ごめん……」
サキさんはふるふると否定した。
「謝らないでください。あれが、あなた様にとって初めての戦いだったのですから」
そう言い、潤んだ瞳でサキさんは俺を見た。
どこか赤みがかった頬をしていて、とても色っぽく見える。
見た目は年下のようで、まだ発展途上の身体なのに、目を合わせるだけで息が乱れる。
これって、サキュバスの――!
「本当に、別人なんですね」
「え?」
予想していなかった一言に、呆気にとられた。
「いえ、たまに魔王様らしい姿をお見せになっていたので、冗談かと思っていたのです。ですが、確信しました。あなた様は元の魔王様ではないようです」
まあ、自覚してるけど。面と向かって言われると、キツイなぁ。
「そ、そんな顔しないでください。私はどこへも行きません。秘書の居場所は、あなた様の隣だけですから。それに……」
ちゅ♥️
「――な、ななななにを!?」
「オーガから私を守ってくださり、ありがとうございました。そのお礼ですよ」
「で、でもキスなんて! 唇は生まれて初めてだったし」
「あら。私が初めてでしたか。それは、嬉しいです。――でも、キスが初めてということは、もしやどうて――」
「わあああああ!」
「うふふっ」
サキさんはイタズラっぽく笑う。
妖艶な笑みで吸い込まれそうな魅力だ。
「忘れてました? 私、サキュバスですよ? キスなんてまだまだです。うふふっ」
「な、なんか、今日のサキさん、やけに積極的のような――」
「さあ、楽しみましょ――」
ガチャ。
サキさんは目をぎらつかせたが、扉が開いた。
「魔王様、お目覚めに――」
「あ……」
「サキュバス様、いらしていたのですね」
ミノ子さんがにこやかに笑い、サキさんは焦っている様子だった。
「魔王様、失礼します!」
「え、あ!」
ミノ子さんがやってくると同時に、サキさんはあわてて部屋を出ていく。これまでと違い、隠していた小さな翼で宙を舞いながら、あっという間に退室した。
「な、なんだったのですか?」
ミノ子さんに訊かれ、首をかしげるしかなかった。