第一章Ex3 『とりあえず乾杯!』
【2018年1月19日改稿。内容に変更はありません。見やすくしました。】
勇者としての旅が始まった。
なんかよくわかんないまま、勇者の剣とか盾をもらったけど、あの人たちは見送ってくれただけ。
一人旅の真っ最中だった。
「…………ありえない!」
草原の上、僕の声だけが木霊した。
「仲間は?! 美少女は?!」
叫べど、何も出てこない。
装備は用意してくれたのに、旅の仲間がいない。
勇者として旗揚げしたのに、ダサすぎじゃん!
「はぁー、死ぬ。生き返るために魔王討伐目指すのはいいけどさぁ! 女の子のいない旅なんて、地獄のほうがマシだっての」
さんざ愚痴を言ってみても、どうにもならない。
こちらの世界も、思うようにはいかないか。
「女の子を落とすのも、旅をするのも、まずは情報じゃん? なのにスマホもないなんて、最悪じゃね? ……めんど」
喉も乾いて、足も痛い。
誰か助けてくんないかな……。
「酒飲みてぇなあ…………あ、そうだ。確か……」
さっきもらった地図を取り出し、ひとまず自分の場所を確認してみた。
「えっと……この町から出てきたから、今はこの辺? お、このまま道なりに行けば町があんじゃん! ラッキー!」
急にヤル気でた!
町なら酒場がある。酒も飲める!
「金ならもらったのがあるし、飲むしかないっしょ!」
僕はそこから走りだし、町へと一直線に走った。
そしてその夜は果実酒を浴びるように飲み、記憶が飛んだ。
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翌日――。
「………………………………金がねぇ」
血の気が引くのは初めてじゃない。
前の人生でも、何度も味わった。
だけど、あの時は誰かに頼れた。
けど今は、女の子の知り合いも同僚もいない。
洒落にならなかった。
「ヘルプミィィィィイイイ!」
通じるはずのない中学英語で助けを呼ぶも、宿屋の店主に怒鳴られただけだった。
旅立って二日目――――――破産した。