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社畜魔王とクズ勇者  作者: 新増レン
第一章 「社畜魔王、誕生」
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第一章8 『目指せバッドエンド』

【2018年1月19日改稿。内容に変更はありません。見やすくしました。】

 


 勇者誕生の報告があり、事態の把握に向けてサキさん達は仕事に戻った。


「暇だ……」


 魔王の俺はというと、数日は安静にした方が良いとの全会一致で、寝室にて暇をもて余していた。


 魔界というのは、とてつもなく殺風景な場所だった。


 昼なのか夜なのかわからないワイン色の空にはコウモリが飛び交い、深紅の星が散らばっている。

 下を見下ろせば、賑やかな城下町が見えるも、魔王は下町に出かけてはならないらしく、市場で売っているゴツゴツとした肉や無駄に輝く魚も眺めることしか出来ない。


「……そういえば、魔王になってからなにも食べてないな」


 ふと呟くと、俺の中の魔王が眠そうに答える。


『俺様の身体は、何も必要としないんだ。食事も必要ないから、安心しろ』


『……本気か? あの至福の一時が必要ないなんて、地獄だぞ』


『お前さんも、すぐにわかる。それより、俺様はしばらく寝るわ。さっきから話しすぎて疲れた』


 魂でも、疲れるのか……。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 しかし、落ち着かんな。


 以前なら、休みの日なんて無かったし、こんなに何もしなくていいなんて、落ち着かない。

 仕方なくベッドに転がってみると、欠伸が出た。


「ふわぁ~~あ」


 食欲は無いくせに、睡眠欲はあるみたいだ。


「寝るか……」


 目を閉じると、すぐに眠りに落ちた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ん? またこれか?

 おい、魔王。なんの用だ?


 夢の中なのか、俺は暗闇にいた。


 魔王の仕業かと思いきや、彼は一向に姿を見せない。

 すぐに異変に気づくと、同時に例の声が響いてきた。



『上手く、やっているようだな』



 この声、あの時の! もしかして、また死んだの?!

 死因は?! ベッドからの転落死? それとも勇者の特攻?


『落ち着け。死んではおらん』


 な、なんだ。びびったぁ……。


『我は一つ、教えることがあったのだ』


 教えること?


『うむ。貴様、勇者の出現を知っただろう?』


 まあ、知ったけど。すごいな、そんなタイムリーな話題を知ってるなんて。


『知ってるもなにも、勇者とは、貴様と同じく、死して転生した者だ』


 ――!


『奴は、魔王の討伐に向けて動き出した。目先の利益もあるようだが、奴には教えてある』


 教えて……って、なにを。


『貴様にも、今伝えよう。神の意思を』


 神……!

 それって、あんたの上司か?


『階級では、そうなる。そんなことよりも、選択せよ』


 え、また選択?


『聞くか、聞かぬか』


 聞くよ!

 神様の声を無視したら、痛い目に遭いそうだし。


『賢明だ。神の意思は、一つ』


 ごくり。



『魔王と勇者、どちらか生き残った者に、人生を与えようという話だ』



 人生……。


『つまり、元の人間として、やり直す機会を与えるということだ。貴様らの死ぬ前に時を戻すことも、神には可能だ』


 それって、あのホームからの線路ダイブをやり直すことができるってことじゃ……!


『その通りだ』


 や、やるよ! 勇者を倒せばいいのか?!


『……倒すのではない。殺すのだ』


 え……。


『与えられる者はただ一人。勇者は、とっくに覚悟を決めている。どちらにせよ、どちらかは死ぬ』


 一回死んだくせに、想像したらゾッとした。

 本当に、魔王と勇者の戦いだ。

 だが、こちらもやられるわけにはいかない。勇者を倒すのは、魔王の役目だ。


『よいのか?』


 選択の余地ないって。黙ってたら、勇者にやられるし。


『死ぬのが、怖いか』


 そりゃあ、あんなの御免だ。怖いに決まってる。


 だけど――。

 俺を認めてくれた人たちが死ぬのは、もっと怖いんだ。


『……そうか。健闘を祈る』


 言われなくても、そうする。

 魔王が勇者を倒すバッドエンド、見せつけてやる。


『ようやく生きる意味に気づいたか、愚か者よ』


 その言葉と共に、暗闇は明けてくる。


 俺は静かに目を開けた。












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