第22話
4連投2話目です。
アースドラゴンがその山のような体を動かして、右足でアーティルを潰そうとする。それをアーティルは右に避けて、踏み込んできた右足を斬るが、硬くて刃が通らなかった。続けざまに三撃加えるが、全く効果がないようで、落ち着くためにも一歩下がって剣を構え直す。
「硬いな……」
僕もアースドラゴンの一挙手一投足に注視し、次の行動を見逃さないようにしていると、大地に根を張るようにどっしりと構えながら口元に魔力を溜めているのが分かった。竜の代名詞とも呼べる攻撃、【息吹】である。
アーティルさんもアースドラゴンが何をしようとしているのか察したようで、落ち着きながらも素早く言葉を紡ぎ始めた。
「【地に宿りし者】【精霊の声を聞け】【広大なる命の息吹】【守としてあらん】!」
アースドラゴンが息吹を放つ。魔力が目に見えるほどの奔流となって、洞窟内を照らしながらアーティルへと向かっていく。このまま息吹が直進すれば部隊が全滅するだけでなく、下手をすれば洞窟が崩壊するだろう。だけど、そうはならなかった。
「【硬化なる風の波】『深緑の守護神』!!」
アーティルが詠唱を紡ぎ終わり、魔法を発動した。
剣を横に薙ぎ払うと、剣の周りに渦巻きながら巻き付いていた緑色の魔力____風の塊を可視化した物とでも言おうか____が目の前に広がり防壁となって息吹を止める。
ドラゴンの息吹と緑の防壁がぶつかりあい、辺りに強烈な風が吹く。周囲一帯には茶色の魔力と緑色の魔力が飛び散り、それが洞窟内を幻想性を高めていた。
「……すげぇ」
カナタが感嘆の声を漏らした。正直、僕も驚いている。
息吹は十秒ほど続いたが、だんだんと魔力が散っていき遂には何事もなかったかのように消え去った。
アーティルとアースドラゴンが魔法の競り合いを続けている間にも避難は続いていて、息吹が終わると同じ頃にカナタとセルジュ、アーティルの補助ができる数人の精鋭騎士、そしてアーティルを除く者たちの避難が終わった。
「アーティルさん! 避難完了しました!」
「わかった! ありがとう!」
アーティルは振り向かずに返事をし、両手で柄を持ちながら思い切り剣を地面に突き立てる。
「今度はこちらの番だ!」
剣が緑色の光を帯びた。魔力が、緑の粒子が剣に纒わり付く。
「【風を宿し】【地を宿し】【孤高なる大樹となる】【気高き勇姿は聖者の証】【森に座する深緑の全て】【我が剣に応えよ】……」
地面に刺さった剣をゆっくり引き抜く。剣は完全に緑色に包まれており、まるで風が剣を成しているようだった。
アーティルがアースドラゴンへと剣を向ける。
アースドラゴンは攻撃されることを察したのか、先ほどと同じく口に魔力を溜め始めた。
「【翠の破剣は孤に捧ぐ】『緑王の讃歌』!」
アースドラゴンが息吹を放ち、その直後にアーティルが剣を振り下ろした。
巨大な緑の剣が真っ向から息吹を断つ。息吹は断たれた場所からどんどんと消失していく。
振り下ろされた剣はアースドラゴンの体も真っ二つにした。衝撃波が広がり、洞窟の入口にすら砂埃が舞う。
「………」
「これが騎士団長級の実力か……」
僕は唖然として声が出ず、カナタもアーティルさんの強さを感じながら呆然としていた。すると、アーティルさんが洞窟の奥から慌てて走ってくる。そして、ぼーっとしていた僕達に強い口調で、
「洞窟が崩れるから離れて!」
その言葉で我に帰った僕達はすぐに洞窟の外に出て先に避難していた部隊の人達と合流。そのまま洞窟周辺から撤退した。
◇
時は移り、王都への帰還途中、カナタが僕に話しかけてきた。
「……なあ、セルジュ」
「ん? 何?」
「あのモンスターさぁ」
「あのモンスター? アースドラゴン?」
「いや、俺達が相手にした小さい方の」
「あー、リザードマン?」
「あいつらってさ、何食って生きてんだ?」
土系のリザードマンの主食は確か鉱石だったはずだ。ボスがアースドラゴンだったことから、恐らくアースドラゴンのお零れを貰うためにあそこに住み着いたんじゃないかと思う。
「洞窟に住んでいるリザードマンだから、鉱石とかじゃないかな? 消化液を使って小さくしてから食べてたんじゃないかな?」
「そうか………まぁ、そうだよな……」
「どうかした?」
「………いや、何でもない」
そんな話をしているうちに王都はもう目の前に迫ってきていた。
◇
帰還後、すぐに騎士団本部へと向かった。大広間へとダオスさんを訪ねに行く。広間には僕とカナタ、アーティルさんにヒエクラフトさん、そしてダオスさんがいた。
アーティルさんがダオスさんに今回の件を報告する。ダオスさんとヒエクラフトさんは満足そうに頷きながら微妙に笑顔を浮かべていた。
「そうか。それは大変だったな。ご苦労だった」
「怪我人は出たが死傷者は無し。素晴らしい成果だと思うぜ?」
「あぁ、私もそう思う」
満足そうにダオスとヒエクラフトが話す。そこにカナタが割って入った。
「ダオスさん、一つよろしいですか?」
「ん? どうしたカミヤ君」
「カナタ?」
突然のカナタの行動に訝しむ一同。僕は真剣な表情をしたカナタを見て思わず声を掛けてしまった。
意を決した様にカナタが口を開く。
「今回のモンスター乱入の件。お二人は知っていたのではないですか?」
「え!?」
カナタのその言葉を聞いて一番驚いていたのはアーティルさんだった。




