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異世界転送  作者: 画谷とをり
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第20話

ちょっとリアルで身内が交通事故に遭ったり、曾祖母が入院したりでゴタゴタしていましたが、段々と落ち着いてきたので更新再開です。

 


 合計して10日ほど続いた修行の後、アーティルさんが率いる新緑軍と共に、僕とカナタはダオスさんに呼び出された。



「やぁ、2人とも。シエラやアーティルに修行をつけてもらっているそうだね。どうだい? 少しは成長したかい?」

「まぁ、それなりには」



 ダオスさんに成長の程を問われる。カナタは即答とは行かないまでも、ある程度の間を開けてから返事をした。


 一方、僕の方はと言えば、言葉が喉に詰まって出てこない。

 成長したのかどうかと聞かれれば、確かに成長したのだとは思う。だけど、僕は昔から劣等感ばかりを感じてきたせいで、どうにも本当に成長したという実感が湧かないのだ。


 そんな僕の様子を見て何かを察したのか、ダオスさんは深くは追及せずに話を進める。



「それは良かった」



 そして、全員に向き直ってから話を始めた。



「今回、北西の森林に潜伏する盗賊団の基地制圧作戦を行う」

「マジか……」



 カナタが小声で何かを呟いた。僕は別に地獄耳ではないからカナタが何を言ったのかは分からなかったけど、とりあえず驚いている風には見て取れた。


 まぁ、驚いているのはカナタだけじゃ無くて僕もなんだけど。

 心の中ではまだ平静を保てているけど、周りから見れば今の僕は焦っているように見えるだろう。あれ? これって普通は逆な気が……


 そんな緊張感の一切ない考え事をしている間にも話はどんどんと進んでいく。



「そして、アーティルの団長昇格試験も兼ねている。そのため、アーティルが指揮役となる」



 アーティルさんが皆の前に出て一礼する。

 一応、貴族である僕から見てもかなり綺麗な礼だった。

 というか、騎士って作法とかも覚えなきゃいけないんだったっけ? もしアーティルさん自身が必要だと思って身につけたのなら、凄い向上心だ。



「目的はあくまで制圧だが、相手が抵抗してくるようであれば、殺してしまっても構わない」



 一瞬だけピリッとした空気が流れる。その空気はすぐに霧散して消えたが、皆の心の中に何かしらの考えを残すことにはなったはずだ。



「全員の帰還を願っている」



 話はこれで終わりらしかった。

 集まった面々は解散して、それぞれがそれぞれの準備を整えるために慌ただしく動き出す。

 そんな中で、僕とカナタの方へと近付いてくる人物がいた。アーティルさんだ。



「まさか任務に参加することになるなんてね」

「申し訳ない。ダオスさんの事だから何かしら理由があるのだろうけど……」



 カナタがちょっと皮肉気味に言った。アーティルさんは申し訳なさそうに苦笑いを顔に浮かべていた。

 それにしても、カナタが皮肉っぽいことを言うなんてかなり意外だった。いや、カナタの事だから案外考えもなしにただ思ったことを言っただけかも。うん、多分そうだろう。


 それはそれとして、僕もアーティルさんに先程の話について少し聞きたい事があった。



「盗賊団って……()()……?」

「うん、ルーラル団だよ。でも潜伏しているのはその一部らしい」

「一部?」

「あぁ。確認されているのが小規模なんだ。おそらく大規模な作戦を起こすための前段階で拠点を構えているんだろう」



 敵が小規模だといっても、油断は禁物だ。

 人間は想像しているよりも簡単に死んでしまう。どんなに簡単な事に思えても、敵と戦う以上は常に本気で挑まなければいけない。



「なるほど、事が起きる前に鎮めておきたいと」

「そういうことだろうね。そこまで危険な任務ではないから、安心して大丈夫だよ」

「なら良かったです」

「君達も準備を始めてくれ。30分後に北門で待機だ」

『了解』




 ◇




 太陽がちょうど真上に昇る頃、僕とカナタ、それから騎士団の人達が北門に集まっていた。

 盗賊が潜んでいる森はここから北西の方向へ暫く行ったところにある。


 出発前に口頭で配置が伝えられる。

 僕とカナタは第一部隊の後方で前線の援護を担当することになった。


 他の人達に配置が伝えられていく中でカナタが話しかけてくる。



「シエラさんに修行を見てもらって、どうだ? 新しい魔法でも覚えたか?」

「え? あ、うん……まぁ」



 まだ完璧に使いこなせている訳じゃないから、返事は曖昧になってしまった。

 そう言えば、カナタも修行をしていたらしいけど、どうなんだろう。



「か、カナタもアーティルさんに何か教えてもらった?」

「ん? あぁ……まぁ大した事じゃないよ」



 なんだか歯切れの悪い答えが返ってきた。カナタならもっと自信満々な答えを返してくると思っていたのに。もしかしたら、僕と同じように色々と考える事があったのかもしれない。


 それ以降、目的地に着くまでは僕達はお互いに喋らなかった。






 北西の森林に到着した。



「目標は奥地の洞窟だ。罠があるかもしれない。ここからは慎重にいくぞ」


 アーティルさんが騎士団の面々に注意を促す。『洞窟』と聞いて少し体が強ばった。

 全員が馬を降りて、徒歩で森の中を進む。



「そういえば、この森はモンスターとかいないの?」

「さぁ? あまりこっちのことはわからないから……」

「まぁ、いないに越したことはないか」

「そうだね」



 カナタと軽く会話をしつつ、周囲に気を配りながら森の中を歩いていく。


 しばらくすると洞窟が見えてきた。

 洞窟の穴は広く、部隊が展開できそうなぐらいの幅はあった。



「洞窟の入口を取り囲む。第二部隊は左から。第三部隊は右から。第一部隊が最初に入り、その後に第二部隊が続け。第三部隊は洞窟の外で待機」



 第二と第三の部隊が洞窟を取り囲み、突撃の準備が整う。騎士団の人達、僕とカナタ、それにアーティルさんでさえ多少顔が険しくなるのを抑えられなかった。



「良し。行くぞ」



 アーティルさんの号令と共に全員が武器を構え、洞窟へと突入した。


 クリスタルで前を照らしながら、アーティルさんを先頭に隊列を組んで洞窟内を進む。

 すると、突然アーティルさんが止まった。僕とカナタがアーティルさんの横から前を覗き込むと、盗賊団と思われる人達の死体が沢山転がっていた。


 数多の死体の先、洞窟内の暗がりの中に、ギョロリとした瞳の光が浮かび上がる。



「!」

「まずい! 総員退避!」



 アーティルさんが咄嗟に叫ぶ。だが、既に戦いの火蓋は切られた。



「ここは既にモンスターの巣だ!」



 洞窟内を埋め尽くす程の化け物の群れが、波の様に押し寄せてきていた。


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