第17話
本日2話目。2話更新してます。
食堂から出たあと、カナタはシエラさんからアーティルさんの居場所を教えて貰ってすぐにアーティルさんの下へと向かっていった。
そうなると、僕とシエラさんが二人きりになるわけで、居心地の悪さが尋常ではなかった。
「あ、あの、今日はいい天気ですね」
「え、ええ。そうね」
会話が終わる。気まずい。
別に嫌いなシエラさんと無理に話す必要はないが、お互いに無言というのも精神的にくるものがある。
「そういえば、シエラさんは魔法が得意だと騎士団の人達が噂していたのを聞きました」
「あら、そんな噂があるのね。確かに私は『火魔法』に関しては国一番の腕前だと自負しているわ」
「よければ見せて貰えませんか?」
「ええ、もちろんいいわよ。でもどうしていきなりそんなことを?」
「実は、今自分の戦闘方法を確立するのに悩んでいるんです。僕は転送魔法を上手く利用して戦いたいと思っているんですけど、何だか想像がつかなくて……」
シエラさんと話して見ると、やはり悪い人ではないのがわかる。ただ、カナタを囮にしたことを僕が良く思っていないだけで、あの試験がなければもっとシエラさんとの関係は良好なものになっていたはずだ。
いや、今からでも望むなら良好な関係は作れるのか。僕が歩み寄ろうとしていないだけで、きっとシエラさんの方は僕たちとの関係を悪くしたいとは思っていないはずだ。
「転送魔法というと、あのクルジオ家の?」
「はい、と言っても出来損ないの分家の方ですが」
自虐気味にそう呟く。シエラさんは驚いたような顔をしているが、僕の転送魔法なんて他のクルジオ家の人からすれば児戯にも等しい。
もちろん僕だってそれなりに頑張ってきたから、基本的な転送魔法は大抵使える。本家だろうと分家だろうと、僕のように基本の転送魔法を大抵使える人は少ないからそこは誇ってもいい。
だけど、それ以上、僕は上に行けないままでいた。
「なぜ戦闘方法を確立させる必要があるの? クルジオ家の転送魔法といえば貿易業を営む者なら喉から手が出るほど欲しい魔法なのだから、どこの国からも引く手数多よ?」
「でも、それじゃあカナタの隣には立てない。カナタが守って貰わなければならないほど弱くないことはわかっています。だけど、僕はカナタをこの世界に転送してしまった。その責任を取らないと……カナタを守らないといけないんです!」
声を少し荒げながら気持ちを吐き出す。
シエラさんは少し驚いて、思案顔になったかと思うと、
「君は、少し自分を追い詰めすぎだな」
「え? それはどういう……」
「たびたび『責任』という言葉を持ち出して誤魔化しているようだけど、私は君と同じ気持ちを抱いたことがあるからわかるよ。他の何を犠牲にしてでもカミヤ君を助けたいんだろう?」
「そんな……僕は……」
喉に声が詰まって出てこない。僕がそんなシエラさんみたいなことをするわけが……
「セルジュ君はカミヤ君のことをどう思っているんだい? 『友達』じゃないのかい?」
「それは、そうですけど」
「なら、そんな友達を助けたいと思うのは当然のことだし、よく知らない他人よりも自分の友達を優先するのは当たり前のことだ。私だってそうした。だから、君はまず、カミヤ君のことに対して『責任』という言葉を使うのをやめなさい」
シエラさんは何が言いたいのだろう。別に僕とカナタの関係は貴方には関係ないはずだ。そう言いたいが、言葉は口から出ない。
「でも……」
「君たちの関係は責任の上に成り立っているのかい? 責任がなければカミヤ君は友達じゃないと、君はそう言いたいんだな?」
「そんなわけないでしょう!」
シエラさんの言葉に思わず怒って大声を出してしまう。
「そうだ。責任の上に成り立つ友情など友情じゃない。だから、君はカミヤ君のことを真に対等な存在として意識することから始めるといい。自分よりも遥か高みの強さにいる友人。そんな彼に追いつきたい。その気持ちが強さを得るための糧になる」
年上の威厳というものを見た。
僕は結局、自分の中で勝手に物事を決めつけて、それに振り回されていた。
シエラさんに対して嫌悪感を覚えた理由は単純、僕の中にも同じような考えがあったから。つまりは自己嫌悪からシエラさんのことを嫌っていただけだった。
シエラさんはそんな僕の中の自己嫌悪に対しての回答をくれて、尚且つ僕の弱いところを指摘してくれた。そして、ようやく気付かされた。
僕が強くなれないのはカナタを守ろうとしすぎていたから、なのだと。
カナタは守って貰わなければならないほど弱くない。それをわかっていなかったのは僕の方だ。
「この言葉をどう受け取るかは君次第だ。だけど、これだけは覚えておいてくれ。あまり、自分を追い詰めすぎてはいけないよ。追い詰めすぎて潰れてしまってはカミヤ君の助けになることすらできないからね」
「カナタのことを思うならば、まず自分のことを考えろ。そういうことですね?」
シエラさんからの返事はなかった。だけど、その顔には微笑みが浮かんでいて、とても嬉しそうだった。




