第16話
本日1話目。2話更新してます。
「……ん……ここは……?」
急速に意識が浮上する。眩い光に目を細め、起きた時特有の倦怠感に抗いながら体を起こす。
カラカラの喉を潤すために水が欲しい、と思ったところで正面から声がかかる。
「あ、起きた」
椅子にカナタが座っていた。
ところで、ここはどこで一体今はどういう状況なのだろうか。起きた途端に今の状況を察せるはずもなく、戸惑ってしまう。
だが、その答えはすぐにカナタの口から語られた。
「急にぶっ倒れたから何事かと思ったけど、死んでなくて良かったよ」
どうやら僕は倒れたそうだ。そう言われればそんなこともあったような気がする。眠気が酷かったせいか記憶が曖昧だが。
「ここは宿。と言っても、騎士団敷地内の客用の部屋らしいけど」
「昨日の記憶が……」
「そりゃそうだろうな。いきなりぶっ倒れてさ。運ぶの大変だったんだよ?」
「そっか……運んでくれてありがとう」
カナタに迷惑をかけてしまったことに申し訳なく思いながら、礼を言う。
(もっと体力つけないとこの先色々大変そうだなぁ……)
カナタを元の世界に戻す方法を探す上で、様々な事件に巻き込まれるのは必然だ。
そもそも別の世界同士をつなぐような技術など普通は秘匿されているに決まっているし、それを探そうと言うのだから何かしら障害が立ちはだからない訳がない。
なればこそ、常に隙を見せないようにするための最低限の体力をつけるのは急務だ。それに、これから先は戦うことも多くなる可能性を考えれば、早めに自分の戦闘方法を確立しなければいけない。
やらなければいけないことの大変さに頭を抱えていると、カナタが声をかけてきた。
「まぁそれより、お腹すいてないか? 俺も朝食まだなんで、一緒に行こうぜ」
「行くって、どこに?」
「騎士団本部の食堂。二人分位の食事は準備するのも大変じゃないし、遠慮せず食べてけとよ」
「本当にお客さん扱いだね」
「まぁ旅費が浮くし良いんじゃない?」
「そうだね。わかった。着替えたら行くから、カナタは先行ってて」
「了解」
昼食と聞いて、今まで意識していなかった空腹感が強烈に主張してくる。思い出せば昨日から何も口にしていない。お腹が空くのも当然だった。
手早く着替えを済ませ、ドアを開けて扉の外に出るとカナタがいた。
「あれ? 先に行ってるんじゃ」
「いや、道わかんないんじゃないかと思って」
「あ…………」
口を開けたまま固まってしまう。なぜ僕はこうも抜けているのだろうか。
しばし静寂が廊下を包み、それに耐えかねたのかカナタが口を開く。
「…………行くか」
気まずさに、ほんのすこしだけ食堂へと向かう足取りがぎこちなくなった。
◇
食堂にて──
シエラさんが私服で食事をとっていた。
「あれ? シエラさん」
「あら、貴方達もまだだったのね」
私服ゆえか、その口調は普段とは違う柔らかいものとなっており、普通の街中にいるお姉さんのようにさえ見える。
騎士としての固い雰囲気を見たあとに、このような柔らかい雰囲気を見たので、どうしても違和感が拭えない。
「騎士団の方々は結構早めに食べてましたけど」
「連日の任務で疲れが出たのかもしれないわね。ぐっすり眠ってしまったみたいよ」
「ご一緒してもいいですか?」
「えぇ、構わないわ」
会話は基本的にカナタがしてくれている。もしかしたら僕がシエラさんを嫌いだから、それを気遣ってくれているのかも。
カナタがシエラさんに教えてもらったのか厨房から食事を貰ってくる。僕もそれを真似して食事を貰った。
カナタの方を見れば、シエラさんの前の椅子に座っている。思わず顔が引きつってしまった。
「昨晩は良く眠れた?」
「まぁそれなりには」
「ここでわからない事があれば何でも聞いてね」
「ありがとうございます」
相変わらずシエラさんとカナタが話す。僕はその間シエラさんと目を合わせないように下を向いていた。
「……それで、セルジュ君」
「……はい」
シエラさんが話しかけてくる。少し戸惑ったが何とか返事を返した。
「昨日の私への要求で、残りの一つは何なのか教えてもらってもいいかな?」
「………実はですね──」
来たか、と思いながら何から話そうかと考える。シエラさんのことは嫌いだが、有用そうな人物を利用しない手はない。
僕は、シエラさんにカナタが元の世界に帰るための方法を探すのを手伝って貰おうと思っている。
シエラさんはこれでも騎士団の隊を一つ率いている人なんだ、その影響力は強いに違いない。僕たちが手に入れられない情報もシエラさんならば手に入れることができるかもしれない。
僕はシエラさんにカナタの事情について話した。異世界からは転送してしまったこと、帰るための手法を探していることをだ。
「そんなことがあったのね……」
「そこでですね、騎士団に協力をお願いしたいと思いまして」
「我々に?」
「騎士団でなら、一般に出回っていない情報もあるかもしれないと思いまして」
「そういうことなら、是非とも手伝わせていただきたい」
「お願いします」
シエラさんに頭を下げる。シエラさんのことは嫌いだけど。大嫌いだけども! それでも僕だって礼儀はわきまえている。
嫌々シエラさんに頼みごとをしているとカナタが声を上げる。
「そんじゃ、飯食ったら始めますか」
「あ、そうだ、カミヤ君。アーティルが呼んでたよ」
「え? 俺をですか?」
呆けた顔をしながらカナタは目を丸くして驚いた。




