第10話
前回は予約投稿失敗してたっぽいです。今回は前回の分も含めて2話更新します。
11話は1時に更新します
「カナタ……大丈夫?」
「うん、大丈夫。それより申し訳ないな、荷物持ってもらっちゃって」
「いや、それぐらいはいいんだけど……」
バグザムを立ってから数分、騎士団や僕が馬に乗って移動する中で、カナタだけは走って移動していた。最初に「自分で走る」と聞かされた時は正気を疑ったものだけど、予想外にカナタが頑固で譲らないのでその提案に乗らせてもらった。今もあまり息切れもなく付いてきている。一応、速度を落としてはいるけれど、それにしたって凄い体力だ。
「そういえば、どこに向かっているんですか?」
カナタが走りながら騎士団の人たちに行き先について尋ねる。
「ラルクルの中央を少し過ぎた所に小さな洞窟が発見された。捜索中の行方不明者は、そこへ探索をしに行って失踪した」
「ラルクルにまだ見つかってない洞窟があったなんて……」
ラルクルはあまり深く入りさえしなければ、危険な場所ではない。何度も探索されているし、ギルドで初心者達に向けて出されるクエストの内容もここでの薬草採取が主なものになるほどだ。一般人ですらも散歩感覚で入っていける。
だけど、深奥は数多の危険度Aクラスのモンスター達が跳梁跋扈する地獄となっている。熟練の騎士団が全滅したこともあったそうだ。
「本当はもっと多くの隊を派遣するはずだったのだが……」
「……だが?」
思わず反応してしまった。どんな理由で多くの隊が派遣されなくなったのか少し気になる。
「実はな、そいつは嵌はめられたんだ……」
「は、嵌められた!?」
「あぁ。そいつは大隊の副隊長をしていたのだが、隊長を含めた五人に無理やり連れていかれて、そこに置き去り。五人は無傷で帰還」
その五人は一体何がしたかったのだろう? 副隊長という、それなりの地位の人間がいきなり消えれば明らかに周りからおかしいと思われるだろうに。
「置き去り……」
化物が蔓延るこの森で、未だに生きているという可能性はかなり低いだろう。それでも、シエラさんはまだ諦めの色を見せていない。いなくなった人物と何か関わりがあったのかな。もしかして恋人だったり……
「なんでそんな……」
「………」
シエラさんが悲しそうな顔をする。一応僕達や部下の手前、隠そうとはしているが隠しきれていない。
彼女がここまで入れ込み、小隊を一つ動かさせてしまう程の人物。不謹慎だが、興味が湧いてきた。
ただ、それにしたって人数が少なすぎる。この森はそんな簡単に突破できるものではないし、確実に死人が出るだろう。
自分に関わりのある人を助けるために小隊を派遣する。情に動かされやすい人としては当たり前の行動かも知れないが、隊を指揮するものとしては失格としか言い様がない。シエラさんは自分の行動で人が簡単に死んでしまうということをきちんと理解しているのか?
「多分、危険を感じたのだと思う。隊長の座を奪われることを恐れて」
予想はしていたが、なんて馬鹿馬鹿しい内容だろうか。隊長の座を奪われるのを恐れて副隊長を嵌め、自分から隊長の座を捨てる。本末転倒じゃないか。
「そんな理由で?」
「詳しいことは吐かなかった」
詳しいこと……ね。本当に隊長の座を奪われるのを恐れたのならこんなにわかりやすい手口は取らないだろうし、もしかしたら裏に黒幕とかいたりするかもね。
「ここだ」
「わぁー」
約十五分後、着いた先は岩が露出した洞窟だった。
皆が揃って荷物を下ろし、探索の準備を始める。
「本物のダンジョンみたいだなぁ」
「ダンジョン?」
「いや、こっちの話」
ダンジョン。なんとなく語呂がいい。後でカナタに意味を聞いてみよう。
シエラを先頭に、騎士隊、僕とカナタの順番で洞窟へと入っていく。中は緩やかな下り坂になっていて、空気が冷えていた。
「! 魔力を感じる……」
洞窟内に魔力があるなんて、そんなの未だに開拓されていない場所しかないはず……
「魔力……ということは、この洞窟はまだ生きているのか……」
より一層警戒を深めた方が良さそうだ。
無言で僕達は一歩一歩進んでいく。一歩を踏み出す度に、心なしか足が重くなっていく。
そんな中、この空気に耐えられなかったのか騎士団員の一人がボソッと呟いた。
「やっぱり……アーティルさんは……」
「クラマス! それ以上言うとお前の首をとばすぞ」
「す、すみません……」
今更ながら目的の人物の名前を知った。
不意にシエラさんが立ち止まったので、何事かと僕達は思わず身構える。
シエラさんが立ち止まった場所には、下へと続く大きな穴と、その外周から降りれる階段があった。
「降りるしかないな」
「この下に大きな魔力の渦を感じます」
先程からこの下でかなりの量の魔力が渦巻いている。何かあると思った方がいいだろう。僕はシエラさんへの忠告の意味を込めてそう呟いた。
「セルジュと言ったか? お前は魔道士か何かか?」
「いえ、まだ見習いです……」
「ふむ……」
シエラさんは僕に興味を持ったのか眉を上げたが、すぐに階段を降り始めた。
階段自体はそれほど長くはなく、意外と早く底に着いた。
しかし、そこには予想していなかったものがあった。
「魔法陣?」
そこの中央に直径3mほどの、青白く光る魔法陣が描かれていた。
「はい……まだ動いていますね」
「……ここで行き止まりか」
この場所にあるのは魔法陣のみ。先へ続く穴などは見受けられない。となると、この魔法陣を使ってどうにかするしかないと言うことだ。
魔法陣は、これから魔法を発動するかのように淡く光り続けている。誰もが警戒する中、カナタが魔法陣に近づいて行った。
「うわー。セルジュ、これって本物の魔法陣だよね」
「え? うん。そうだよ」
「すげー」
カナタが感動したように魔法陣にどんどんと迫っていく。もう嫌な予感しかしない。僕は冷や汗をかきながら、カナタへと声を掛けた。
「あ、カナタ、あんまり近付くと危な──」
遅かった。
僕がに言い終わるより先にその魔法陣に触ってしまい、カナタの体が光に包まれる。
「カナタ!」
青白い光が一際強く光ったかと思った次の瞬間、カナタの姿が掻き消えた。辺りには魔法陣を発動した際の魔力の残滓が、青白い光となって散っていく。そんな光景を、僕は呆然と見守ることしか出来なかった。




