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異世界転送  作者: 画谷とをり
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第9話

 

「な、なんだこいつ……」


 女騎士が思わず、と言った様子で呟いた。口調も若干崩れている。


「お、俺は神谷奏多です! 騎士団の方々ですか!?」

「いかにも。私はシエラ。王家直属騎士団の一人だ」


 カナタが興奮したように自己紹介すると、女騎士はゴホンと咳払いをした後に厳格な口調でそう答えた。

 今から取り繕ってもすでに手遅れな気がするんだけど……


「わぁ! 本物の騎士だぁ……」


 カナタはそれでも幻滅していないようだった。そこまで騎士団に会いたかったのか。少しカナタの騎士団への憧れを低く見積りすぎていたようだ。


「カミヤ君と言ったか……すまんな。言いぶりからすると騎士団自体に用があるみたいだな。申し訳ないが、私は忙しい身で訪問に応えている暇がないのだ」

「いえ! 見れただけでも感激です!」


 女騎士____シエラさんが引き気味だ。カナタは凄いな。色々な意味で。

 僕は内心苦笑しながらカナタとシエラさんのやり取りを見ていた。



「君は剣士か?」

「え? まぁ剣士と言えば剣士……なのでしょうか?」


 シエラさんがカナタに突然問うた。なんだか嫌な予感がする。


「丁度いい。君、一緒に来なさい」

「へ?」

「団長!? 何を考えているんですか!?」


 横にいた男の騎士がシエラさんの突然の言動に反対を示す。いや、反対と言うよりは何を考えているのか分からなくて混乱している感じかな。


「黙れクラマス。カミヤ君。君は剣士としてなかなかの腕を持っている。そんなオーラを感じた。だから着いてきてほしい。悪いが理由の説明は後だ」


 有無を言わせない雰囲気というのは、このような状況を言うのか。店内の空気が一気に重々しくなる。



「着いていくって……どこにですか?」

「ラルクルだ」

「ラルクル……?」


 ラルクル? 今、シエラさんはラルクルと言ったのか?


「ま、待って下さい!」


 僕は慌てて二人の会話に口を挟む。他人事じゃいられなくなってきた。


「なんだ少年。君はカミヤ君の友達……じゃないか。双子か」

「いや、双子じゃないんですが……」


 そんなことは今どうでもいい。


「で、何か?」

「先ほど行方不明者がいると仰っていましたが、その捜索のためにラルクルに行くのですよね……?」

「そうだが?」


 確認の意味を込め、話を纏めて質問してみるとやはり予想通りの返事が返ってくる。


「確かに奏多は剣の腕は良いですが、ラルクルへ行くには危険過ぎます」


 あそこは魔境だ。バグザムの中でも五本の指に入るほど危険な場所だ。絶対にカナタを一人で行かせては行けない。死ぬ可能性だって高い。



「私が大丈夫と言ったんだ。きっと大丈夫だ」


 そんなの信じられるわけがない。初対面の人間にカナタの身の安全を保障されて、誰が信じられると言うのか。



「そ、それでしたら……」


 多分、この人は言っても聞いてくれない。どんな事情があるのかは分からないけど、冷静にしているように見えてシエラさんはかなり焦っているようだ。切羽詰った状況なのは間違いない。恐らく、人手が足りないとかの理由でカナタを連れていこうとしているんじゃないかと思う。だったら、方法はこれしかない。


「ん?」

「僕も着いていきます!」

「君も?」

「はい」


 しばらくの間が開く。そして、シエラさんが口を開いた。


「……わかった。君も着いてくるといい」

「はい……」


 シエラさんはそう言うとそそくさと店を出ていく。そして、店の前で休んでいた騎獣と言われている生物に乗った。赤い鎧を着けているので彼女専用の騎獣なのだろう。初めて見た生物なので名前は分からなかった。



「20分後に東門集合。遅れないように」


 シエラさんがそう言い残し、一行が去っていく。


「………」

「……セルジュ?」

「……大丈夫。何でもない……」


 カナタが僕の顔を見て少し心配気に名前を呼んでくる。どうやら心配を掛けてしまったようだ。僕はなるべく普段通りを意識して返事をしたが、顔は思うように動かなかった。多分、笑えていない気がする。







「お、来たか」


 20分後。準備をして東門に行くと、先ほどの五人がいた。


「今回の目的は、ラルクルで行方がわからなくなったアーティルの捜索と救助だ」


 馬は準備してあるようだった。最初に僕が、次にカナタが馬に乗る。


「さぁ! 出発だ!」


 シエラさんの号令で一斉に馬で走り出す。

 これから危険地帯に行くことに緊張していた僕は勢い込んで手網を握った。


「ちょ、ちょっとタイム!」


 そんな時、背後からカナタの声がかかる。焦っているような声色だった。後ろを振り返ると、そこには馬に乗りながらオロオロと戸惑っているカナタがいた。



「う、馬の操縦わかんねー……」



 そう来たか……盲点だった。

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