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七月七日のお買い物と七夕飾りに見た私と旦那の力関係

 ささのはさらさら のきばにゆれる おほしさまきらきら きんぎんすなご。


 とまあ、そんなわけで七月七日は七夕ですよ。七月七日のこの土曜日に旦那と一緒に………久々に珍しく稀なことながら旦那と一緒に買い物へとしゃれ込んでみましたら、商店街は七夕飾りで溢れておりましたというこの感じ。いいねえ子供の頃を思い出すねえと旦那を見ればそんな風景はどこ吹く風。ぜんぜん気にせず歩きながらスマートフォンなんぞを弄っておりますよこのお人。

 まあ我が家はまだ子宝に恵まれておりませんし、自身で盛り上がるような年齢でもないし、そんなものよねとさめざめしながらまずはお買い物です。トイレットペーパーがなくなってしまったのです。大惨事。他にも日用品がいろいろ足りておりませんし、せっかく旦那という名の荷物持ちがいるわけですからいろいろと買い込んでおきましょう。


「旦那はなんかほしいものありますかや?」

「や、別に」

 なんでそんな連れないお言葉。

「必要なものとか自分で買ってますしね」

 にべもないわー。ほんとぜんぜんにべもないわーこの人。

「あ」

 ほいほい?

「お昼ご飯はマルゲリータを食べたいです」

 OK、その提案に乗りましょう。駅前のピザ屋さんが美味しいのです。あそこの窯焼きナポリピッツァは私もなかなかご無沙汰です。美味しいものを食べるは人生における至高の至福。近場ながらそのピザ屋さん――ピッツェリア・ナポリターナの味を超えるピザ屋を私は知りません!

「………他のピザ屋を知らないだけですよねそれ」

「人の思考をエスパーして的確なツッコミをいれない!」

 なぜにそんなあっさり考えてること読み解くのですかとっ

 憤る私に対してしかし旦那は「いやいまの会話であなたが他に考えることないですよね」とかさらっとぬかしやがります。どういうことですかと上目づかいに睨む私。

「…ツーカーの仲というものには憧れてますが一方的なテレパシーは不本意です」

「だったらあなたも僕の考えを読んだらいいじゃないですか」

 う…っ

 いじわるだ。付き合い始めたころまで遡っても私は旦那の不可思議なモノの考え方に予想が立ったことなんてなんというのに。いやしかし待って。これは愛を試されているのかもしれない。付き合って6年、結婚して3年の私の経験がいまここで試される!

「――何を言われようとも『違う』と返せば私が悔しがると思って待ち構えている!」

「と、答えるだろうなーと思ってわくわくしてました」

「むきーっ」

 なんだこれは! 完璧にあしらわれているおかしいです! やり直しをよーきゅー…したらもっとひどい目に合いそうなので泣き寝入りましょうええいちくしょう。


 そんなこんなで買い物を終え、大量の手荷物を持ったままというのもどうかということでコインロッカーに預け、ちょろっと遅めの昼食においしくピッツァをいただいて。

 そして手元にそれなりの福引券が貯まりました。七夕に合わせて富くじだそうですがはたしてはてさて?

「福引2回分………夫婦で仲良く1回づつとかいかがでしょう」

「いやここは奥さんのリアルラックで2回一気に」

 責任重大っ?!

「あなたなら大丈夫期待してます」

「旦那ぜったいおもしろがっているだけでしょう!」

「む、ちゃんと僕の考えが判ってるじゃないですかツーカーツーカー」

 嬉しくないやいっ


 結果。

 ティッシュ×ティッシュ=ポケットティッシュなんかいまどき外れくじにいれんなーっ


「ギャグにもならない」

「………私もそう思います」

 誰の提案でしたかとじと目で睨むも旦那は気にせず。

「せっかくなので、カラオケでもしていきますか。デートっぽく」

 ちょ、ま。

 ご機嫌取りですか、それはご機嫌取りですか旦那!

「はいはい、勘繰りとかいりませんからいきますよ」

「や、あの、ちょ」

 手をひっぱられ、戸惑いながらも旦那の後をついて歩いていたら目に入ったのは商店街に飾られていた笹に結ばれた短冊たち。

「ちょっと待った旦那」

「はいはい?」

 なんとなく気になってひらひらと揺れる短冊を手にとってみれば、小学生らしいかわいい字で書かれていた願い事は


『おかあさん おとうさん おじいちゃん おばあちゃん ぼく

  みんな えがおでいられますように』なんて。


 なんですかこの仰々しくもささやかで殊勝な願い事は。

「織姫と彦星も責任重大ですねえ」

 などと和んでいたら旦那が後ろから覗き込み。

「今夜の織姫と彦星なら難しくはないでしょう。幸せのおすそ分けってやつですね」などと。

 なにやらさらっと言ってのけたと思ったらそのまますたすたカラオケボックスへと向かうじゃないですか。

 これは判る。これは私にも判りますぞ。ガラにもないこと言って恥ずかしいんでしょうそうでしょう。面白くなって追いかけて、旦那の腕を取って抱きついた。

「ねえ旦那ー。旦那は短冊になんと願いをかけますかや」

 とまあ、にんまり笑って聞いてみるも旦那は考えてんだか考えてないんだかな風で歩いてく。ええい、腕に抱きつかれたことに戸惑いくらいはみせやがれーと思っていたら空いてる手で私のおでこにちょんと触れ。


「あなたがいつまでもあなたのままでいますように。ですかね」とかなんとか。

 や、ええと、あの、うん。照れさせるつもりが見事に反撃されましたよどうしましょうやっぱ勝てないわこの人にはやー、えー、うー。

「そしたら僕は一生たいくつしないで済みますし、はい」

 て、ちょっと待ちなさい旦那その補足はいりませんってばねえ、そんな愉快なお楽しみ動物みたいな扱いてどういうことですかこらーっ

 まったく。今日も今日とて旦那は私を素直に喜ばせてくださりませんでした。まる。


                              ――どっとはらい。

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