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ふるさとについての考察・故郷の定義と基層概念

お題モノでの使用を禁止した時点で自発的に書かないとこれ書くことなくね?

と思ったのでとりあえず上げておいて、リハビリかねて時々新作を書いてみようと背水の陣を敷いてみる。

  きのう手紙が届きました ふるさとのねこの森から

  お元気ですか もう10年も 帰らないので心配してます


 オーディオから流れる音楽を聴きながら、ふと思った。

 私の故郷って、どこになるんだろう。

 実家は確かに新幹線を使わなきゃな距離だけど、それはそれで都内のアパートだからそんな感慨深いものなんかじゃない。というか、旦那の転勤でやってきたここのほうがよっぽど「故郷」って言葉が似合いそうな山と川と田畑の広がる町だったりする。

 車のクラクションと人ごみばかりで思い出の中にさえ自然のカケラもない実家は故郷という言葉が似合わないと断定。

 それじゃ例えばお母さんの実家はどうだろう。夏休みは母方の実家に帰っていた、とかそんな話はよくある。でも不思議なことに私にはその記憶がない。小学校のときクラスの子の話を聞いて「いいなー」って羨ましく思っていたくらいだから。

「うわ、ホントに知らないや。お母さんの実家って」

 そんなわけでとりあえず母にメールをどん。あなたの実家はどこですかー?


 そしてメールはすぐに返って来た。母よなに暇してるんですかとツッコめない暇人が私。

『実家って、あんたよく遊びに行ってたじゃない。隣町の在所』

 ああ、などと呟いてぽむと手を打つ。ザイショ、ザイショ。そうだよ在所。覚えがある。そっかー、あそこか。いやもう近すぎてそんな認識さえなかったね。うんうん。

 てゆーかダメじゃん。お父さんも実家は都内だったから聞くだけ無駄だし。

 旦那の実家は… これまた都内だし、それ以前に子供時代を私が共有していないから私の故郷なんかじゃない。意味なし。

 うーん、これは難しいぞ。もしかして日本人は近代化とともに大切ななにかをどこかに置き忘れてきたのでは。なんだか大問題だ。


  ねこの森には帰れない 帰る道だっておぼえてない

  ねこの森には帰れない なくした歌はうたえない


 いや、帰る道どころか帰る故郷が判らないんだってば。もうそれ以前の問題。

 しょうがないから旦那にメール。旦那にとって故郷ってどこなんだろうと。ほとんど同じ境遇のはずだからきっと悩むに違いない。

 そしてこれまたメールはすぐに返って来た。旦那よ仕事中じゃないんですかとツッコめない私はそれを知っててメールしてますごめんなさい。

『そこ』

 旦那のメールにあったのはただそれだけだった。意味判んないって。

 役に立たない旦那はほうっておいて、だから私の故郷ってどこになるんだろう。別に兎追いし彼の山ー、とか歌いだすような故郷を欲しがってるわけじゃないけどでもだからって私の実家はあまりに故郷という言葉がそぐわない。

 じゃあ、私に故郷なんてない。とか結論づけるのは寂しいしなんだか悔しい。

 よし、も一度お母さんにメールしよう。故郷ってどんなだと思うー?って、打とうとしてやっぱりやめた。

 そうこのメールがダメなんだってきっと。手紙と違って気楽すぎるから。やっぱり故郷っていうのは便りがないのはよい便り、とか言いながら「元気です」の一言だけの手紙を喜ぶようなそんな感じじゃないとってうわなんだか古いこと言ってる気がするさだまさしの世界ですか?

「きっと疲れてるんだ私」

 わざわざ口に出して呟いてみたのは日がな一日ごろごろと旦那の帰りを待つだけのお気楽主婦に自分でツッコミいれてしまいそうだったから。いや、声に出したら代わりに各方面からツッコミきそうだけど。

 とにかく難しく考えるのをやめよう。ずっと同じ曲ばかり流れてたオーディオを止めて私はひとまず買い出しに行くことにしたのでした。


 夜。

 玄関からがちゃがちゃという音がする。旦那が帰ってきたに違いない。また鍵開けるのに手間取っているんだ。ああもう余計な鍵とかまで一緒にしてるから。

 でもおかげで私は余裕をもって玄関で待ち構えることができるから感謝。お帰りはやっぱりチューよりハグだよねといつものように玄関口に立つと旦那が扉を開けるのを待つ。

 がちゃ、と扉を開けて「ただいまー」の「おかえりー」でお約束のハグを… って、この邪魔な花束はなによ?

「なにやらよく判らない思考の迷路に突入しているであろう奥さんにプレゼント」

 う、ど、どういう意味よとたじろぎながら聞いてみる。なんで私が故郷について悩み込んでたこと見透かしているわけ。

 とりあえず受け取りなさい、と押し付けられた花束に困惑しながら旦那の次の台詞を待てば。

「故郷なんてのは、ああ帰って来たなあここは変わってないなあと懐かしさに安堵の一息がこぼれる場所のことです」

 は、はい。

「奥さんの実家は、やっぱここにいると落ち着くわー家事もしなくていいし。とかのんびりできる場所で奥さんにとってまだまだ自宅なわけですよ」

 は、はい。

「が、ワタシにとって実家はもう出て行ってしまった場所、でありそんなのんびりできる場所でもなく、帰る場所はもう奥さんの待つココしかないわけです。ええもうある意味奥さんと出会ったところが今のワタシの原点になるわけですから」

 は、はい。

「というわけで、ワタシの故郷と胸張れるよう頑張りなさい。その花束あげますから」

 うわぁ、なんだか責任重大なこと言われた気がするよ。どう返答すればいいわけ私。というかあれ?故郷ってことは私はおいてけぼりですか?あれ、ええ、おお?

「とかなんとか話をずらしたり誕生日忘れてたこと誤魔化したりと多忙なワタシのために晩御飯をお願いします」

 と、うろたえてる私を置いてさっさと中へ入っていく旦那。ちょっと待って今ドサマギになに言った?

 振り返り食って掛かろうとする私に「というわけでただいまですよ」とか笑顔で言われた日にゃあーた。

 大人しくご飯の支度するしかないじゃないですか。そんなこんなで故郷もなにもあったもんじゃない。とにかく花束抱えて顔を真っ赤にする私。ああもう敗北。


 で、翌朝。

 いってらっしゃーいって旦那を送り出した後に不意に思い出したわけよ。

「誕生日にはやっぱりお花よね、お花。できれば花束だけど一輪でも植木でもいいからお花」

 とか催促したのは私だって。誕生日を忘れていた旦那も旦那だけど、でも旦那はちゃんと思い出してフォローしてくれたわけで。ええ、私さえ忘れていたにも関わらず。

 やっぱ私って間抜けだわーとか苦笑しながら居間に戻ったらこたつの上に見知らぬ封筒がちょこんと置かれてた。なんだろうと封を開ければ。

『色々忘れていたであろう奥さんへ。

いつまでもそのままのキミでいてね。ワタシの故郷であるために。

                       旦那』

 とか書いてありやがった。なにおーこのー。

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