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第六話 「天兵の手斧」

「ちょまー!」

モヒカン三人が一斉に、第一投!おおきく振りかぶって・・・!

投げたーーーーーーーーーっ!

一斉に放たれた輝ける白銀の手斧はめちゃくちゃな軌道を描いてあちこちに飛び

俺の部屋の壁に突き刺さると、嫉妬に駆られた男の壁への八つ当たりのごとく

三つのクレーターを俺の部屋の壁に作った。

「ボール!ボール!!スリーボール!!!」

キャッチャーの後ろで構える審判の如く、三回連続で首を振り

おもむろに壁に突き刺さった手斧を抜き、モヒカンへ投g

「させねえよ!?なに返してあげようとしてんの!?」

「ぇー・・・」

「なんで不満そうなんだよ!!」

「「「あの、新しいボールください」」」

「お前らも何、普通に投げ返してもらえると思ってんだよ!バカなの?モヒカンなの!?」

「「「俺たちゃモヒーカーン三兄弟!!ヒャッハー!」」」

「うぜええええええええええええ!」



「・・・やべぇな」

「そうですね・・・これはふざけてられませんね」

「あぁ・・・このままじゃ俺の部屋どころか家が倒壊しかねない」

「命より家の心配ですか?余裕ですね魔王様!」

実は余裕なんて全然ない。俺の心臓なんて張り裂けそうなほどバクバクいっている。

つい数時間前まで夏休みを家でダラダラ過ごすただの大学生だったんだ。

まっちょでむきむきの気持ち悪いモヒカン三人に手斧を投げつけられたりする人生経験は無い。

おまけに数度に渡る手斧投擲で部屋はめちゃくちゃだ。

どうすんだよこれ・・・。

「くっそ!また外した!」

「兄貴は投擲へたっすねぇゲハハハ!」

「おめぇも人のこと言えねぇだろハゲ!」

「てめぇにいわれたくねぇんだよ!あとハゲてねぇよ!」

「ほら!今度こそ破裂しやがれ!」

ビャンっ!

っと、風切り音を立ててAが投げた手斧はすっぽ抜け天井に突き刺さり新たなクレーターを作った。

俺たちは最初の投擲から、次々と湧き出るように奴らの手に現れる手斧を投げつけられ続けている。

幸いなことにこいつらがノーコンなおかげでまだあたってはいないが

それも、時間の問題だろう。

幸運は続かない。

「おい!汚ローブ!なんとかしろ!」

「汚ローブってなんですか!魔王様だって埃まみれできちゃないです!」

「いいからなんかないのか!魔術とかさ!」

「良くないです!いい加減「メティちゃん」って呼んでください!」

「なにがメティちゃんだ!早くなんとかしろ!」

「あーどうしようかなー?なんかめんどくさいなー」

「はぁ~!?」

「魔王様は~いつまでたっても~名前ぇ~呼んでくれないし~」

「ぉぃぉぃ・・・」

「やるきなくなっちゃうなぁ~」

「くそっ・・・」

糞みたいに語尾を延ばす喋り方にイラっとしたが、今の俺にはどうしようもない

そんなやりとりの間も次々と手斧は投げつけられているのだ。

俺は必死に右へ左へと転がるように回避する。

「メティちゃん・・・なんとかしろ」

「それがお願いする態度ですかぁ?」

「メティチャン・・・ナントカシテクダサイ」

「お願いしますはぁ?」

「オネガイシマス・・・」

すごい・・・屈辱だ

「ま!お願いされても私には無理なんですけどね!ドヤー!」

「はぁ!?」

「だって、私『転移系魔術』しか使えないですし。しかもココ世界から切り離されてるですから」

スパーーーン!!

俺は無言でこのピンク髪の汚ローブの頭を右手に持つ雑誌で叩いた。

「ぐべら!」

「いいから、なんか方法ねぇの?もう一発いくか?」

「・・・ぁぃご遠慮しまつ」


「一応方法はあります」

「あるのか!?どうする!?」

「はい・・・魔王様の力を開放すればいいかと・・・おもいます」

「ん!?どういうことだ!説明しろ!」

モヒカンのコントロールが上がってきている気がする。

今飛んできたのは真っ直ぐ俺が一瞬前までいた床にに突き刺さった。

「はい!天界を欺くため人の魂と区別つかなくなるほど力を制限されていた分を解き放てばどうにかなります!たぶん!」

「どういうことだ!どうすれば良い!?」

「あ、はい。元魔王様の側近だった血の」

「時間がない早くしろ!」

(やべぇ!そろそろガチで俺に当たる気がする!さっきから避けるの大変だ!)

「ぁ・・・ぇっと・・・」

「もたもたするな!いいから!はやく!」

「ぃゃ~・・・でもぉ~」

「い・い・か・ら」

「もう!わかりましたから!魔王様!その反復横跳びやめてください!術が発動できません!」

「無理!これ!止めると!あたる!」

もうすでに俺の後ろにあった部屋と廊下を隔てる壁は無くなっていた。

「もおおおおおおおお!」

そう言って顔を真っ赤にしたピンク頭がバッっと俺の顔面に頭突きをかますように接近してきて・・・。

カチンっ

前歯同士がぶち当たった。

「;lkせあfぃうぇrヶ!?」

「・・・・・・・ぃたぃ」

(は!?え!?なにこれ!?痛い!?つかキスってか歯が痛い!?)

前歯に来る痛覚と唇から伝わる柔らかで甘い感覚

俺の首から後頭部を抱きしめ固定するように回された腕

体にかかる重みと女らしさを認めさせるべく主張する柔らかさ。

(・・・あぁ、おれの初ちゅー)

そんな、緊迫した周囲の空気を無視する想いが胸に湧き上がったとき。

カチャリ

俺の中で何かが外れた様な音がした。



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