第二話 「魔界の大地へ」
「ちょまあああああああ!・・・・あれ?」
混乱の極み!みたいな奇声を上げながら吸い込まれたにも関わらず。
ほんの一瞬。もっと言えばただ一歩踏み出しただけで足には地面の感触があった。
「・・・ぇ?」
「はい!というわけで魔界です!」
「ぇ~・・・いや、さ?こういうのって渦に、こう?なんていうの?ぐるぐるぐる~っと吸い込まれて?こううわああああ!みたいなさ?」
「何言ってんですか?魔王様」
すっごい可哀想な人を見る目で見つめられた。
「いや・・・うん」
なんだこれ・・・すげぇやるせない。
「こほんっ!・・・はい!というわけで魔界です!」
仕切り直しとでも言うような咳払いの後。同じセリフを言いやがった。
「・・・いや、ただの野っ原じゃね?」
そう、そこは見渡す限り何もないただの丘。
西洋風の建築物があるわけでも、地獄や魔界と言われるようなおどろおどろしい風景でもない。
ただの丘だ。
空には少々巨大すぎる月が煌々と大地を照らし、遠くの方に月明かりに照らされた山や森の影が見えるが・・・うん、ここはただの丘だ。のどかな丘だ。
某名作劇場で使われそうな風景だ。
「・・・帰っていいかな?」
「困ります!」
「俺も困るわ!」
「私だって困ります!だいたいここ何処ですか!?」
「えええええええええええええええ!?」
なんか聞き捨てならない事が聞こえた気がする。
「此処、魔界じゃねぇのかよ!」
「魔界です!・・・たぶん!ほら!夜なのに明るいでしょ!?」
いまにも「キラッ」とかいいそうなスマイル
「でも魔界の何処かわかりません!」
すごいドヤ顔でいってのけた。
「殴っていいかな?」
「お断りします」
なんかいちいちイラッとくるなこの女
「で?魔界に来たけど、何処か分かりませんって・・・どうすんの?」
「そ、それは・・・」
「だいたい、何処を目指してたんだよ」
「それは・・・魔王城を・・・」
「じゃなんでそこに」
「魔王様が急かすから目標座標間違っだですぅ!」
「俺のせいかよ!」
「のび◯さんだってし◯かちゃんのお風呂に間違って繋がるでしょ!」
「あれは故意だろ!つか、やっぱど◯で△ドアじゃねぇのかよ!」
とか、どうでも良い酷く子供じみた言い争いを10分程続けた俺たちは、疲れてその場に座り込んだ。
空の月が呆れた様な雰囲気で大地を照らす。
(俺は何でこんなよく分からない場所で変な女と言い争いしてんだ・・・)
「とりあえず、帰らないか?」
「・・・そうですね」
俺たちは何とも微妙な空気に包まれて
ど◯で△ドア・・・もとい時空転移門(仮)を潜った。