第一話 「時空転移門」
「・・・暑くないんですか?」
「ガチで暑いです!」
音速の速さで返事されてしまった。
「デスヨネー・・・」
見ればローブから繋がったフード(顔半分が隠れている)から出ている顎から首にかけては
大粒の汗の雫が結露のごとく浮いている。
ローブも若干湿気ているきがする・・・。
「あぁ~・・・タオル使います?」
「お願いします!あと麦茶とアイスもください!」
「注文多いなお前!」
さすがに見ていられない俺は取り敢えずテーブルの上のタオルを手渡す。
「取り敢えず俺も喉渇いたし、お茶入れてくるからお前、それで顔ふいてろよ」
「ありがとうございます!」
パタンとドアを閉めて、一回の台所へ向かいながら。
(俺はなんで初対面の変な人にお茶を入れているんだ?)
と、不思議に思った時
「くっせぇえええええええ!このタオルくせええええ!」
という声が俺の部屋から聞こえてきた。
(ぁ・・・あれ雑巾だわ)
「はい、お茶・・・あとこれ、タオル(新品)な」
「・・・ありがとうございます・・・」
きんきんに冷えた麦茶とテーブルに置いてローブ女(臭い)にタオルを渡すと
若干警戒したのか、匂いをクンクンかいだあと首の汗を拭きだした。
「で・・・あんた誰?」
「はっ!そういえば自己紹介がまだでした!」
と、顔を吹いていたローブ女(雑巾の匂いがしていた)は正座して背筋を伸ばすと
ファサっとフードをとった。
「私はメティル=サータ=ナキア。新魔界次期魔王側近魔術師(予定)です!」
そう笑顔で自己紹介をした元臭い女は、桃色のセミロングで若干のくせっ毛、瞳は緑色をしていて
鼻は高くないが可愛らしい印象を受けるなかなかの美少女だった。
歳の頃は17,8だろうか?すこし自分より年下のように見える。
臭いとかバッチィとか思って申し訳ない。
ただ、頭はだいぶイカレテいるらしい・・・非常に残念だ。
「はぁ・・・で?その次期・・・側近魔法使いさんが」
「新魔界次期魔王側近魔術師(予定)です!」
「あぁ、悪い。で?なんでこんなとこに?」
「はい!ですので次期魔王様をお迎えに上がりました!」
「なるほどなぁ・・・帰れ」
「はぅあ!」
「悪いけど・・・俺中途半端に寝たせいか微妙にイライラしてるから・・・ちょっとそういうのに付き合ってられないんだわ」
「えええええ!」
「いや、ほんと。警察とかには連絡しないから・・・うちの親も寝てるしさ。はやく家に帰りな?」
「いやいや!ちょっこまります!」
「いや俺もこまるからさ・・・な?」
「なんで、私をそんな頭のゆるい子を見つめるような優しげな眼差しで諭そうとするのですか!」
「いや、だって・・・なぁ?」
俺は心底かわいそうな頭のゆるい娘を見ながら家に帰ってもらおうと交渉する。
が、彼女も負けじと自分の設定を押しながら。やれ魔界がどうとか天界の兵がどうのとか、貧困がどうのとか2000年前の戦がどうとか、転生とか言ってくる。
そんなよくわからない討論?が続くこと約30分
そろそろ疲れてきた。
「もぅ結構です!魔王様を無理やり魔界へお連れします!」
「いや、もうそれはいいか「時空転移門!」って、えええええええええええ!」
それはいきなり現れた。
さきほどまで何も変哲もなかった俺の部屋にいきなりピンク色の扉が出現した。
大きさは大体2m×70cm程だろうか?正直どこかで見たことある。
「ど○で△ドア!?」
「違いますぅ!時空転移門です!」
「いや、これ門じゃねえよ!ドアだよ!」
「いいですから!早く行きますよ!」
開け放たれたドアはぐるぐるぐるぐる黒と紫の渦が巻く良く分から壁だった。
「はぁ!?ちょっおまっ!押すな!なんかこれ怖ぇよ!」
「そーれっ!」
ドンっ!っと背中に衝撃を感じた俺は前のめりにその渦巻きに手をついてしまい
「ちょっおおおおおおおおおおおお!」
すごい力で吸い込まれたのだ。