第十六話 「また帰ってきちゃった」
「はい、というわけで帰ってきました」
「あぁ」
「で、どうしましょう?」
「いや、寝るぞ?」
「!」
「当たり前だろ、明日からかなり歩く事になるんだ。体力は大事だ」
「!!」
「じゃぁおやすみ」
俺はさっさと告げてベットにさっさと潜り込む、時刻はもうすぐ朝だ。
正直言って今日は疲れた。
流石にそろそろ癒されたい。
「おやすみなさいませ・・・あの、魔王様私はどこで」
「下の階にトイレあるからそこで寝てろ」
「わかりまs・・・嫌です!」
「あ”!?」
「ひい!」
「・・・ったく、ちょっと待ってろ」
俺は潜り込んだ至福の布団を惜しみつつ這い出る。
まぁ、夏って言っても流石に床でごろ寝させるわけにも行かんよな・・・。
俺は押入れの開いて、上の段に置いてあるダンボールをどけてスペースを作り、そこに予備〈親戚が泊まりに来たとき用〉を敷いた。
「さ、ここがお前のベットだ」
「・・・ありがとうございます」
女は無表情で押し入れの上の段に上がった
「じゃ、おやすみ。起きたら忙しくなるんだから時間はあんまないけどしっかり寝ろよ」
「はい・・・おやすみなさい」
俺はスっと押し入れを占めて電気を消し、ふたたびベットに潜り込んだ。
睡魔の微睡みの中、押入れからしくしくとすすり泣く声が聞こえたような気がするが多分気のせいだろう。
昼、目が覚めた俺はリビングのテーブルに置いてあったメモを手に冷蔵庫を開けた。
『お母さんちょっと住吉さんと出かけてくるから。ご飯はチャーハンを冷蔵庫に入れてるからそれ食べてね☆』
ふむ・・・あの女と分けるにはちょい少ないよな・・・よし
俺は冷蔵庫を漁って餃子をGETした。近所のスーパーで12個88円のやつだ。
熱したフライパンに油をひき、餃子を炒める。
ある程度焦げ目が付いたら水を入れ蓋をすれば数分で完成した。
ただこの餃子、正直味が薄い。安いししょうがないが・・・。
俺は酢+ラー油+マヨネーズでタレを作った。これなにげにうまい。
「おい、女起きろ!飯だ!」
「うにょら~」
俺は押し入れをスパーンと開け放ち、中で涎にまみれている女を押入れから引きずり出す
「ちょ!あぶな!危ないって!!」
「だったらさっさと起きて降りて来い。飯だ」
「は~い」
俺はノソノソと動く物体Aを尻目に階段を下りた。
「うわー!ご飯だ!これなんですか!?いい匂いしますよ!」
「ん?焼飯と餃子」
「焼飯と餃子ですか~うわ~豪華ですね!」
「そうか?」
今までコイツ何食ってたんだ?
「これ野菜とかも入ってますし。この白くてふわふわしたのからはお肉の匂いがします!」
「まぁ・・・そうだな・・・まぁいいや食うぞ!」
「はい!」
「いただきます」
「・・・?いただきます」
スプーンで掬って口にほおばる。うん、うまいね。
餃子も安いながらにうまい。
俺がそんなことを考えながら前に座った女に目を向けると、涙をダボダボ流しながら「おいしいおいしい」言いながら欠食児童の如く飯をかっくらっていた。
コイツどんな食生活してたんだ?いや、コイツ貴族だよな・・・。
なんだか想像以上に魔界が大変そうな気がしてきた。
俺達は朝食を済ませてコピー用紙に必要そうなものを書き出していった。
このお腹を膨らませて幸せそうな顔でほくほくしてる女の話を聞き。
一日魔王城を目指して進み、そこをドアに登録して俺の部屋へ繋げ帰り。また次の日同じように進みという。なんだかRPGのセーブを彷彿とさせるような進み方をすることにした。
正直魔王城までどの位の距離かわからない以上、野宿は勘弁願いたい。
で、その進み方を考慮すると出来るだけ荷物を少なくした方がいいと考えた。
必要物資は、おにぎり〈さっき4つ握った〉と水筒〈麦茶〉タオルを詰めたリュックサック。
のみ・・・あれ?これ遠足じゃね?
「魔王様おやつは?」
「これでいいだろ?はい、ぽたぽたやき」
「わぁ~い」
これ絶対喉渇くよな・・・。
時刻は昼の1時。
俺たちはリュックを背負ってドアを開けた。
ようやく魔界へ出発します・・・長かった。