プロローグ
「お誕生日おめでとうございます!魔王様!さぁ!魔界再生に参りましょう!」
真夏の深夜0時
熱帯夜の蒸し暑さに目が覚めた俺の目の前に現れた全身黒ローブのキ◯ガイは
いきなりハイテンションでそんなことを叫んだ。
季節は夏真っ盛り
大学も夏休みに入り、特にサークルも予定もない俺は日々だらだらと過ごしていた
7月も終わりに近づいたある日
気温は35度を超え、そのくせ湿度も高い地獄の蒸し風呂と化した炎天下の下。
俺、新開 仁は愛車の50cc原付の上でうなだれていた。
(なんで・・・「おれが買い物行ってくるよ?」なんて言っちゃったかな)
十数分前の俺をぶん殴ってやりたい
とはいえ、こんな気温の中、歩いて買い物に行こうとする母を行かせるわけにはいかなかった。
そしてこんな時に限ってすべての信号で引っかかったりする。
その結果が今の俺である。
(あぁ・・・運が悪ぃ・・・こんな仕打ちしてくる奴・・・神か?警察か?いや神だな)
若干朦朧とする意識の中、真っ赤に光る赤信号をが目に映る。
(あぁ・・・あぢぃ・・・あぁ、とりあえず俺にこんな仕打ちしてくる神とかぶっ殺してぇ)
「流石です!」
ぼーっとする意識のなかそんな声が聞こえた気がした。
「あぁ・・・」
家から十数分かけて付いたスーパーは、まさにこの世の天国だった。
文明の利器!涼やかな空間!ビバ現代の楽園!
「っと、・・・?マヨネーズと胸肉と・・・」
入口でいつまでも惚けているとただのアホである。
俺はポケットから買い物メモを取り出し売り場コーナーへと向かった。
スーパーの買い物を終えればまた地獄であった。
太陽も真上の方に上がりもはや全力で気温を上げて俺を殺しにかかってきてる。
「はやく・・・家に帰ろう」
原付のセルを回りてアクセルを軽く回すと元気よく音を奏でる原付に跨り、俺は家への帰路に着いた。
「おかえりぃー暑かったっしょ?ありがとうね?」
リビングに入った俺を迎えた母はレンタルで借りてきた連続ドラマを見ながらアイスを食べていた。
「外マジでやばいわ・・・。買ってきたやつ適当に冷蔵庫入れとけばいいかな?」
「よろしくー」
冷蔵庫に袋ごとしまった俺は自分の部屋へと飛び込んだ。
実は出かけるときに冷房をOFFにしていない!そう!部屋はてんごk・・・
「あれ?」
勢いよく扉を開けた俺を迎えたのは澱んだ熱い空気だった。
「ぇ・・・?」
混乱の極みにある俺にリビングから無慈悲な宣告が届く
「あ、ジンー?冷房きっといたからー。ちゃんと出かけるときはきらないとだめよー」
「NOOOOOOOOOOOooooooooooooooooooooo!!」
俺は、蒸し暑さのからくる疲れと絶望を胸にベッドに倒れこんだ。
「熱い・・・」
寝苦しさから目を覚ます。どうやらあれから寝てしまっていたらしい。
すっと窓に目をやれば既に外は暗く、街灯の光がキラキラと輝いている。
「いま何時だよ・・・」
もそりと体を起こした俺は電気をつけよう手を伸ばそうとしたとき。
いきなり部屋全体が明るくなり(というか電気がつき)
「お誕生日おめでとうございます!魔王様!さぁ!魔界再生に参りましょう!」
目の前に現れた、全身真っ黒なローブの女?の子?がハイテンションに叫びをあげた。
「・・・暑くないんですか?」
それが、おれとこの真夏にローブのキ◯ガイ・・・げふん
もとい、俺の運命を変えた女
メティル=サータ=ナキアとの最初の会話であった。