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右神坊・左神坊  作者: amichi
左神坊編
4/5

第四話

「…おい」

「あ?」

後ろからかけられた声に反応して、男達は振り返った。そこには、白髪の男がいた。



「…さっきの事は、どういう事だ?」

伍六は太輔をつつく。

「あ?…あいつはな、基本的に人間が嫌いなんだ」

「あいつが?」

伍六は左神坊を見る。


今まで伍六が見てきた左神坊は、単細胞で、やることはめちゃくちゃで、短気ですぐに人との喧嘩を買ったり売ったりするが、ふつうに人と話し、むしろ人との関係は良く見えた。


「普段は人と普通に接するけどよ、あいつの中では人を憎んでいるんだよ」

「なんで知っているんだ?」

「前、酒飲ませたから」


「……」

一気に興味が失せてきた。太輔は気にせずに続ける。

「天狗は鬼って言うのが定着したのは、あいつにはじめて会った頃だな。飯を調達しようと訪れた村が消えていたんだ。代わりにいたのが、あいつ。あの時は逃げなくちゃ殺されていたな」

太輔は苦笑した。伍六はその話の続きを催促するように彼の顔を見つめる。


「その後からよくあいつと会って、そのたびに命の危険にさらされたよ。人間はすべて殺すって顔していたからな。消した村も一つじゃなかったしよ。……お?」

「…どうした?」

太輔は左神坊と成怜のいる方を指さす。伍六は指さした方を見た。

そこには検非違使らしき者たちがやってきていて、二人を囲んでいた。

「昨日のやつかな?」

太輔はのんびりした口調で言う。左神坊と成怜は検非違使達の囲みを破り、それぞれに逃げていく。

「手を回すの早いな」

伍六は検非違使達を睨む。

「怪しまれるから、あまり睨むなよ。俺達は知らないふりしてのんびり歩いていようぜ」

太輔は荷車の前に行く。


「なぁ」

伍六が声をかける。

「あ?」

太輔の顔が米俵の向こう側からひょこっと飛び出す。

「あいつ…オレたちのことも嫌いなのか?」


そんな伍六の言葉に太輔は目を丸くする。そして豪快に笑った。

「あっはっはっ!!おめぇ、かっわいい事言うじゃねぇかっ!」

「べ…別にそんなわけで言ったんじゃねぇよっ」

変な風に捉えられて顔を真っ赤にする。


「オレたちのことは嫌ってはいないと思うぞ。あいつの事情は、思っているよりも複雑だからな」

「ふうん」

伍六はよくわからない、といった表情を浮かべた。


 二人は暖かい太陽の下で、ゆっくりと荷車を引いていった。







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