愛の間に燕が止まり薔薇が咲いた。
小野田美由……女 24歳、女優
柳泰司……男 22歳、フリーライター
川崎慎一……男17歳、画家志望
慎一N
「僕は川崎慎一、17歳、あるサイトでルームシェアの募集を見た、未成年だから断られると思う、とりあえず会ってくれるってなった、どんな人だろう……ヤバそうならすぐ帰ればいい、そう思ってた……あんな風になるなんてこの時は思わなかったんだ」
慎一「ここか……」
SE:ノック音
泰司「いらっしゃい」
慎一「は、初めまして、川崎慎一です」
泰司「そんな気張らなくてていいよ、とりあえず上がって」
慎一「お、お邪魔します」
泰司「ここが、トイレで向かいが風呂、んでこの扉を開けたらリビングだ、そこを挟んで部屋が2つある、どっちも使ってない、どっちがいい?」
慎一「えっと右の方?」
泰司「オーケー」
SE:ドアが開く音
泰司「ここが今日から君の部屋だ」
慎一「いいんですか?こんないい部屋」
泰司「ああ、余り部屋だしな、ここは親戚から譲り受けた家でな、俺たち、まぁパートナーの我儘だけどな?二階ぶち抜いて寝室とダイニングキッチンの二部屋に改造して住んでる、だから一階は持て余しててな、どうしようか悩んでルームシェアで貸すことにしたんだ」
慎一「そんで食いついたのが僕と」
泰司「そういうこと、間取りの割に安すぎて警戒して君しか希望なかったけどな」
慎一「はは、そうなんですか、確かに月2万なんて怪しいですよね」
泰司「だろ、普通なら怪しんで応募しないのが多い、でも唯一来たのは17歳の男の子、なんで来た?」
慎一「あ……えっと……その」
泰司「ふっ……いいよ、聞かないよ、言いたくなったら言ってくれ」
慎一N
「そう言って優しく僕の頭に手を置いて微笑んでくれた……不意な優しさに心がざわついた」
慎一「あ……」
泰司「あー悪い、ついな」
慎一「いえ、大丈夫です……嫌じゃなかったんで」
泰司「そか、あー自己紹介まだだったな、俺は柳泰司、フリーでライターやってる」
慎一「ライター?」
泰司「ああ、雑誌とかで記事書く人のことだよ」
慎一「え?すごい」
泰司「凄くないよ、まぁそれなりに食ってはいけてるけどさ、あ、そうだ、二階に行こう、君なら問題ないしな、パートナーを紹介するよ」
慎一「あ、はい」
慎一N
「泰司さんに連れられ、2階に上がる、一階と打って変わってオシャレな空間が広がっていて、とても開放的な部屋だった、でも、その驚きを打ち消す驚きがそこにあったんだ」
美由「おっそい!」
泰司「悪い悪い、一階で案内しながら少し話しててな」
美由「暇すぎてパック始めちゃったわよ」
泰司「あーそーですか、ほら、この子だよ」
美由「ほう?どれどれ?」
慎一「初めまして川崎慎一です、よろしくお願いします!」
美由「か」
慎一「か?」
美由「かわいい!」
慎一「へ?」
美由「がばっ!」
慎一「うわっ!」
美由「あ、パック取れちゃた、まぁいいか、君可愛いねー」
慎一「え?え?えぇええ!?」
美由「ん?どったの?」
泰司「美由、退いてやれ」
美由「はーい」
慎一「な、なんでここに」
美由「はて?」
慎一「小野田美由が居るんですか!?」
美由「そりゃあ私ん家だし」
慎一「で、でも泰司さんの」
泰司「まぁ一緒住むだろ、妻だし」
慎一「へ?あ?へ?人気女優の……へ?」
美由「あ、ショートした、おーい平気ー、ぽんぽーんと」
慎一「だ、だだ大丈夫です!」
美由「照れてる、かわいっ」
慎一「か、可愛くなんて……男なのに……」
泰司「こら美由、あんま揶揄ってやるな、可哀想じゃんか」
慎一N
「二回目、今度は優しく撫でてくれた、僕はなんだかとても落ち着いた、安らいだんだ」
美由「あ、奥さんほっといて他の甘やかすのか?あん?それも男を!酷い!浮気だわ!」
泰司「はいはい変な冗談はよせ、ほら、よしよしな」
美由「えへへ、それでいい」
泰司「はいはい」
慎一「あのえっとどういう?」
美由「あ、これ旦那」
泰司「これ妻」
美由「知らない?女優、小野田美由は一般男性と結婚しましたってニュース、あ、今は俳優って言わないとだっけ?面倒だよねー」
慎一「あ、そういえば、無茶苦茶ニュースで見たけど電撃結婚って言ってたけど一般相手だからってすぐ騒ぎ納まってた」
美由「でしょ?まぁ、その相手が泰司ってわけ」
慎一「はぁ?」
泰司「俺たちは幼馴染でな、なんやかんやでずっと一緒居て、今じゃ夫婦だ」
慎一「いいんですか?芸能人がルームシェアとか?」
美由「いーのいーの!それに応募一つしかなかったし、やべー奴じゃないし、だから泰司も私に合わせたんだし」
慎一「そうですか」
美由「それに君みたいな可愛い子なら大歓迎、じゅるり」
慎一「ひぃっ!」
泰司「こら脅かすな、怖がってるじゃないか」
美由「ごめんごめん、冗談だよ、慎ちゃん」
慎一「しん……ちゃん?」
美由「ん?」
泰司「あーごめんな、こいつすぐあだ名つけんの」
慎一「なるほど」
美由「まぁまぁいいじゃないかヤス君、あ、慎ちゃん、私はみゅーさんとかでいいよ?」
泰司「浸透してない呼び方を植え付けようとするな」
美由「いいじゃん別にー」
慎一「えっと……よろしくお願いします、ヤスさん、みゅー……さん?」
泰司「あ………」
美由「………」
慎一「なんですか?僕何かおかしいこと?」
美由「〜〜〜可愛い!!」
慎一「うぷっ」
美由「あーよしよし!もうずっとここいなさい、もう家族!なんなら養子として!」
泰司「こら」
美由「いたーい」
泰司「困らせるな、悪かったな」
慎一「い、いえ」
泰司「とにかく今日から此処は君の家だ、慎一君……んー遠いか、俺もあだ名で呼ぶよ、一緒の屋根の下だ、家族みたいなもんだ、よろしくなシン」
慎一「……はい!」
慎一N
「こうして僕は少し変わった?夫婦と一緒に暮らす事になった……家族みたいなもん……血の繋がりのない2人の僕に対しての接し方が恥ずかしさはあったけど心地よかった」
慎一「ふぅ……こんなもんか……下書き終わり」
泰司「入るぞ」
慎一「はーい」
泰司「シン、おはよう」
慎一「ヤスさん、おはようございます」
泰司「朝から何してたんだ?」
慎一「えっと絵の下書きを」
泰司「へー、上手いな」
慎一「画家志望なんで」
泰司「なるほど、美大とか目指すの?」
慎一「行けたらいいんですけど……」
美由「慎ちゃん、ヤスご飯だぞー!エイ!」
泰司「おわっ!」
慎一『うわっ!」
泰司「!?」
慎一「んっ……」
美由「あー!チューした!ヤスの浮気者!!」
泰司「ばか!お前が押すから!んっ!」
美由「んー!私もしたるもんねーだ!」
泰司「やめろって!離れろって」
美由「嫁のキスが嫌だと言うのかね」
泰司「嫌じゃねーけど」
慎一「あ……え……キス、初めて……」
美由「へ?」
泰司「あ……」
美由「あーごめんごめん!んっ……」
慎一「んっ……ふぁ……」
美由「男が初めてなんて嫌よね、浄化浄化」
泰司「おい俺は毒か?」
美由「さぁ?さ、ご飯にしよ慎ちゃん」
慎一「え?あ……はい」
慎一N「ファーストキス、僕の初めては男の人、セカンドキス……人気女優で人妻……僕の頭の処理速度をとうに超えてショートしそうだ」
美由「はい、ラスト一口ね、あーん、どう?」
慎一「お、おいひはっはれふ」
美由「あー可愛いわー」
泰司「おいおい、飲み込んでからにしろ」
慎一「んぐっ……すみません」
泰司「いや、いいけどさ」
美由「あーそうそう、慎ちゃんさ、絵描いてるの?」
慎一「あ、はい、昔から好きで」
美由「下書き素敵だったよ、色つくの楽しみ」
慎一「えっと……それが……」
美由「ん?」
慎一「えー」
美由「ん?」
泰司「川崎重工株式会社、重役、川崎繁」
慎一「え?なんで父さんの名前」
泰司「なんでルームシェアの応募すんなり受け入れたと思う?ちょっとな調べたんだ、しん、お前家出してきたろ」
美由「家出?」
慎一「あ……」
泰司「親父さんには伝えてる、俺の所でルームシェアする事なったと、そしたら条件に絵なんてくだらない事諦めさせ会社を継ぐ勉強をするように説得して返せってさ」
美由「何それひっどい」
慎一「……嫌だ、帰りたくない……」
泰司「……安心しろよ、お前を無理に返さないよ、それに好きな事しろ、言ったろ?家族みたいなもんって、嫌がる事させねぇよ、それにさっき見てわかった、お前の絵いけるよ」
慎一「え?それ……」
美由「あら?ヤスにしては珍しい、誰かの絵を褒めるなんて」
泰司「俺をなんだと思ってんだ」
美由「意外と堅物」
泰司「そーですか」
慎一「あはは」
泰司「ったく笑うなよ」
慎一「ごめんなさい、でもなんか元気なりました」
泰司「ならよかった」
慎一「ありがとうございます」
美由「ずっと居ていいからね、慎ちゃん」
慎一「それは迷惑じゃ」
美由「ぜーんぜん!なんならもう一つの空き部屋アトリエにしちゃっていいからね」
慎一「そんな」
泰司「遠慮するなよ、あと美由は頑固だぞ?」
慎一「……ありがとうございます!そうします!」
美由「はい、素直でよろしい」
慎一「僕の父さんは厳格だ、昔から好きで良く絵を描いてた、でもその度怒られて、いつしか隠れるように描いて、でもバレたら叱られて、だから僕は逃げるようにあそこから飛び出したんだ、それでこの人達に出逢い早くも3ヶ月が経った」
慎一「ふぅ……」
泰司「お疲れ」
慎一「あ、ヤスさん、散らかってるんで気をつけて」
泰司「了解、どうだ調子は?」
慎一「はい、色々と捗ってます、でも本当に良かったんですかね?アトリエ部屋用意してくれるだけでなく、こんなに画材貰っちゃって」
泰司「いいよいいよ、アイツの趣味みたいなもんさ」
慎一「趣味?」
泰司「ああ、そうだ、なんだかんだ誰かの世話すんの好きなんだよ、拾った犬にするみたいにな、俺もそうだった」
慎一「そうなんですね、ふふ、ヤスさん」
泰司「ん?」
慎一「ヤスさん犬は似合わないなって」
泰司「だろ?今じゃ逆転して俺が世話係みたいとこある」
慎一「確かに」
泰司「シンは犬っぽいよな、従順そう、お手」
慎一「はい」
泰司「やらんでいい」
慎一「ヤスさんだからですよ」
泰司「美由の気持ちわかったわ、お前可愛いね」
慎一「え?え?」
泰司「仕事頑張れそうだわ、ちと作業してく」
慎一「危ない」
泰司「うわっ!」
慎一「うっ!」
慎一N
「それは2度目の事故、2度目のキスだった、転びそうなヤスさんの手を取って支えれず一緒に倒れる、覆い被さるように……1度目と逆……僕から……」
泰司「んっ……」
慎一「んぁ……えっと……大丈夫ですか?」
泰司「シン……悪い……」
慎一「え?」
泰司「んっ」
慎一「んっ……んぁ……んんっ……!」
泰司「シンお前ホントずるいな、お前可愛いよ、ちょっと無理だわ、いいか?」
慎一「……うん」
泰司「もう戻れねぇぞ」
慎一N
「ヤスさんは僕を抱きしめ、1度目2度目なんて忘れる程の大人のキスを僕にした、蕩けた、全然嫌じゃなかった、男だから言っていいかわからないけど僕は純潔を失った、不思議と嫌じゃなかった、痛くもなく傷つきもせず僕は満たされていた、この人の愛に….僕もそれに応えた、気付かぬうちに愛していたのかもしれない」
泰司「……シン、良かったよ、可愛かった」
慎一「……はぁ……はぁ……ぼくも……良かったです……」
泰司「疲れたろ?寝てな」
慎一「ん……すーすー」
泰司「俺もまだ若いな、それに男に惚れるなんてな……まぁ女みたいに可愛いコイツがずるいな……ふぁあ眠っ……俺も寝るか」
慎一N
「2人でベッドで眠る、僕はヤスさんの腕の中で、幸せだ、いい絵描けるかもしれない、そんなこと思ってたかもしれない、でも忘れてた、此処にはもう一人いるってこと……美由さん、僕らの関係はきっとダメで壮絶な修羅場になるに違いない、でもこの時はそんな事気にもせず寝る2人だった、ほんと幸せそうに」
美由「ただいまー……え?何これ?ヤスと慎ちゃんが寝てる、何これ可愛いー、え?これ服着てる?そーっとそーっと……」
美由「は?何これ?え?裸やん、え?キスマーク?至る所に……もしかしてこれは……」
泰司「んん……」
美由「おい、起きろヤス」
泰司「あ、美由……あ、いやコレは」
美由「いやいや無理がある、浮気よ!浮気、しかも男と!わかるけど慎ちゃん可愛いし!」
泰司「すまん、気の迷いだったんだ」
美由「迷いすぎでしょ!もうー何なのよ!先越されたー!」
泰司「は?先?」
慎一「ん……何騒いで……」
美由「あら、おはよう慎ちゃん」
慎一「ひっ!」
美由「よくも私のに手出したわね」
慎一「はい!ごめんなさい!」
泰司「おいシンを責めなく」
美由「お黙り!何手出してんのよ!私が先でしょ!んっ!」
慎一「んっ!んっ…んー!!」
美由「んっ……んぁっ!ふぅ……」
慎一「ぷはっ!はぁ……はぁ……」
美由「トロトロなっちゃって……可愛い」
泰司「おい、やめとけって」
美由「ヤス、アンタ旦那、ワタシ妻!慎ちゃんは?アンタの彼女?ならワタシは慎ちゃんの彼女です」
泰司「んなメチャクチャな」
美由「アンタのものはワタシのモノ、ワタシのモノ、ワタシの」
泰司「どこのガキ大将だよ」
美由「はぁーい慎ちゃん、先に処女失うなんて思わなかったよね、ごめんねぇ、じゃあ筆もおろしちゃおっか?」
慎一「え?え?え?」
美由「あーん」
慎一「ぁっ……」
慎一N
「こうして僕は2人に美味しく召し上がられた、夫婦の中に咲いた薔薇に若い燕、奇妙な関係の奇妙な生活の鐘が鳴り響いた、それから一年が経ち美由さんが企画した絵画コンクールで入賞し父親に認められたのはまた別の話。」
慎一N
「愛の間に燕が止まって、薔薇を咲かせた。
おかしな光景だ、でもいいと思う、そこに愛があって幸せなら」




