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日ノ本元号男子  作者: 安達夷三郎
第一章、初めまして、元号のみなさん
2/22

2話

その時、少し高めの声が聞こえてきた。

「初めましてだねー」

「そうだね」

振り返ると、双子のような二人の男の子が、いつの間にか背後に立っていた。

「僕は南朝」

「俺は北朝」

仲の良さそうな二人で、ニコニコしながら手を繋いでいる。

南朝くんは垂れ目で柔らかい印象、北朝くんはつり目で少し強気って感じ。

「お二人は南北朝時代です。こっちが南くん、こっちが北くんです」

明治さんが説明してくれる。

「僕達の時代はねー」

朝廷(ちょうてい)が南北に分裂されんだ」

「そうそう。一時は僕が北朝の天皇を連れ去ったり......」

「最終的には俺が勝ったけど」

腕を組んでドヤる北朝くん。

「「でも今は統一されて一緒にいるよ」」

あ、息ぴったり。双子だからかな?

なんて思っていると、

ガラガラドッシャン!!

二階の方から物音が聞こえてきた。

何かあったのかと思い、奈良さんを先頭に二階に上がると、段ボールの山が崩れて赤絨毯(じゅうたん)が敷き詰められた廊下が詰まっていた。

「……なにこれ」

「また縄文くんの土偶ですかね」

「多すぎだろ!」

「お片付けしよーよー縄文くん」

「早く出てこい、通れねぇだろ」

段ボールを掻き分け、埋もれている人を発掘した南朝くんと北朝くんは段ボールの片付けをすすめているが、北朝くんの言い方は完全に脅しにしか見えない。

「う、そんな怒らなくても良いじゃんか……」

オレンジ色の髪の男の子(多分、縄文くん)は三十センチ程の土偶のぬいぐるみを抱きしめ、涙目で訴えている。

左耳で揺れているのは翡翠色に輝く勾玉のピアス。

「こりゃ大仕事になりそうばい!」

「そうだな」

せっせと段ボールを積み上げる作業をしていく弥生くんと奈良さん。

「はぁ、俺達も手伝ってやるよ」

「うん!これってどこに置けば良い?」

南北ツインズも、ぶつぶつ言いながら床に散らばった土偶グッズを拾い集めていく。

一緒に拾っていると、土偶以外に古墳グッズも転がっていた。

「あ、これ可愛い」

私が拾ったのは土偶の形のキーホルダー。

「可愛いでしょ……僕が作ったんだ」

縄文くんが、少し照れたように言う。

「そうなの!?上手!」

「本当?じゃあ、あげる。君は少し……小鳥に似ているね」

(小鳥?)

手渡されたのは土偶型のジンジャークッキーと私が拾ったキーホルダー。

「古墳グッズは無視しておいて良いから、土偶について話そ」

コテンと首を傾げる縄文くん。

柔らかい笑みを浮かべながらそっと手を握ってくる。

「古墳の方がええやん。土偶なんて所詮(しょせん)まじないに使うもんやろ?」

両手いっぱいに古墳グッズを抱えた緑色の髪の男の子が言った。

首元で揺れているネックレスは、鍵穴みたいな前方後円墳。

「古墳はな、王の墓やねんで。ロマン詰まっとんねん。しかもな、嬢ちゃん。大阪府にある『百舌鳥(もず)古市古墳群(ふるいちこふんぐん)』は世界遺産に認定されてるんやで!」

古墳に対する愛を語る男の子。

「あ、嬢ちゃん。名前は?俺は古墳。よろしくな」

「初野美空です。えっと……古墳くん?」

古墳時代って、あったっけ?

指を曲げて数えてみる。

「縄文、弥生、古墳、飛鳥……あっ、あった」

「俺、忘れられてたん!?」

ツッコむ古墳くんにプププと笑う縄文くん。

古墳()の時はな、ヤマト政権が強かったんやからな、忘れんといてぇや!」

「何言いよるばい?白米ん方が素敵ばい!」

弥生くんはそう言うと、段ボールに詰めたはずの大量の古墳グッズと土偶グッズを二人に投げつけた。

「ちょ、いった!」

「わ、やめ!」

数分後。

「ケンカしない」

「「「はい......」」」

仁王立ちをしながら静かに怒るのは奈良さん。

明治さんは巻き込まれないように新聞を読んでいるし、南北ツインズはいつの間にか姿を消していた。

どんよりと気まずい雰囲気のなか、明治さんは口を開いた。

「……やかましいのが来ますよ」

「え?」

やかましいのって一体?

そんな疑問を口に出すまでもなく、部屋の扉が思いっきり開かれた。

「お腹すいたー!!」

扉を破壊するような勢いで来たのは、ふわふわした薄いピンク髪の男の子だった。身長は私と同じくらいか少し高いくらいで、白色の書生服に灰色の袴を穿いている。中のスタンドカラーシャツは黒色だ。

数秒、その子と目を合わせる。

「新人だー!」

満面の笑みで、その子は無理やり私の手を握り、握手した。手を大袈裟に振る。

「俺は大正。好きな物はラジオだよ!よろしくね!」

「え、あ、うん。美空です」

戸惑いながらも答えた。

「敬語はなしなし!俺のこと、大正でも大正くんでも何でも呼んで良いよ!俺は美空っちって呼ぶから」

可愛らしい大正くんは子犬みたい。

……んっ!?

「み、美空っち?」

「うん。美空だから美空っち!」

「そ、そうなんだ……」

「俺の誇れるものはやっぱり洋風化が進んだことと、男子普通選挙かな?」

「普通選挙……」

「そう!今の子は成人済みの男女に参政権があるでしょ?でも、明治さんの時までは国に十(えん)……約二十万円以上を納税している二十五歳以上の男子が選挙権を持ってたんだ」

「納税」

「でもねぇ〜、大正十四年に納税金額関係なく二十五歳以上の全ての男子が選挙権を持てるようになったんだ〜!」

嬉しそうに話す大正くん。でも、話す内容は難しい……。

「若人、歴史に興味あるか?」

奈良さんが尋ねてきた。

「あ、はい!日本史好きです!テストは嫌いです」

「そうかそうか、それは良かった」

「あ、良いこと思いついた!」

大正くんが手を真っ直ぐ上げ、きゅるんとした瞳で何故か私に笑顔をサービスしてくれた。

「俺達が美空っちに歴史とか色々教えてあげようよ!」

「良いなそれ!」

「ん?」

「え?」

私と明治さんは立て続けに声を上げ、隣同士で目を丸くする。

「良いんですか?」

「ああ!」

「それじゃあ、ご指導ゴベンタツのほど、よろしくお願いします!」

バッと奈良さんと大正くんに向かって頭を下げた。

「任せとけ!次からビシバシ指導するからな!」

その時、ボーンボーンと柱時計が鳴った。時計の針は六時を示している。

「あ!やばい、帰らないと!」

そして、明治さんに車で家まで送ってもらった。

めっちゃ座り心地良かった!


「……さて、どう思った?」

美空達を見送った後、奈良が振り返り、明治を除く十五人の顔を見渡す。

「バカだな。純粋さは(あだ)になる」

「鎌倉さんは会ってへんやろ」

小生(しょうせい)は好きであります。これぞ後輩!って感じがして」

「うんうん!」

「真っ直ぐで純粋そうだね」

「しかし……あの子がその……例の……なんですよ」

()か女児そうやったばい。可哀想に」

「そうですねぇ」

「そうだな。(きた)る日まで若人の準備を済ませる。そして未来を変える」

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