教会の水晶
いよいよ、儀式当日。
朝から何やら慌ただしく着替えさせられ、普段よりもずっとお洒落な格好にされている。
レースやら刺繍やらがふんだんに使われた衣装は、どう考えても日常着ではない。
まあ、伯爵家の跡取り娘が教会の儀式に臨むのだから、それなりの格好をしろという事なのだろう。
それよりも――
初めて、敷地の外に出られる。
正しく箱入り娘状態だった私にとって、これは一大イベントだ。
どんな所なのかな?
話でしか聞いた事は無いから、楽しみだ。
出来れば、市場とかお店とかも回りたい所だけど……許しが出るかしら?
そんな期待を胸に、私は馬車へと乗せられた。
屋敷の門を抜けて、しばらく進むと――
おー。一面の、小麦……?
黄金色に揺れる穂が、風に合わせて波打っている。
見渡す限りの畑だ。農地ってやつだろう。
やがて、更に進むと景色が変わった。
ここは、領都……になるのかしら?
石を積み重ねた家々が立ち並び、道を行き交う人々の数も一気に増える。
ザッ!ファンタジー。
思わずそう言いたくなる光景だ。
そして――
獣族らしき人々も、大勢歩いている!
耳があったり、尻尾があったり。
明らかに人間とは違う特徴を持った人々が、普通に生活している。
もふりてー!
……いや、落ち着け私。
今はそれどころじゃない。
と思いながらも、馬車はそのまま進んで行く。
この辺りは、中心部かしら?
出来れば地図とか欲しい位だ。
自由に出歩ける様になったら、のんびりと探索したいわ。
やがて、馬車は大きな建物の前で止まった。
ここが、教会ね。
そう言えば、前世でも教会は入った事ないわね。
中は、こんな感じなのか。高い天井に、色鮮やかな装飾。
静謐な空気が満ちている。
シスターと思われる女性達が何人も立っており、儀式の準備を進めている様だった。
それ以上に――私と同じ位の年齢の子供達も、沢山居るわね。
どうやら今日、儀式を受けるのは私だけではないらしい。
あの中央に置かれている、水晶。
あれに触れて、スキルを授かるのね。
順番に、子供達が前へと呼ばれていく。
あの男の子は、何が出るのかしら?
水晶に手を触れた瞬間、淡く光が灯った。
「スキル――建築」
「おー!良かったな!」
周囲からも、小さな歓声が上がっている。
ふむふむ。あんな感じなのね。
さてさて。私は、如何なるかしら?
「――次」
名前を呼ばれた。
んー。気のせいか……周りの目が、私に向いている気がする。
まあ無理もないか。
神童と呼ばれ、しかも伯爵家の跡取り娘。
みんなの目を引く訳だよな。ゆっくりと、水晶へ近づき手を、伸ばす。
触れた瞬間――水晶が、強く輝いた。
「……ッ!?」
ざわめきが、広がる。
お?これは――?
「スキル、二つ……?」
「えんじにあ?と分析」
ヒソヒソと、周囲から声が聞こえて来る。
「聞いた事ない……」
「何だ、それは……?」
当然だろう。この世界に無い言葉!
けれど――
私は、心の中で思いっきりガッツポーズをした。
前世の経験の、まんまだ!




