五歳の儀式
私もこの世界に来てから、五歳になりました。
肉体年齢としては、だ。
精神年齢は……まあ、今更言うまでもないだろう。
二回目の人生という事もあって、喋り始めるのはかなり早かったらしい。
周囲の言葉を理解できる様になってからは、意識的に発声の練習もしていたし、読み書きについても同様だ。
この世界の文字体系は、日本語とは全く違っていたが、言語としての構造自体はそこまで複雑ではなかった。
文法を理解して、単語を覚えて、反復する。
やっている事は、結局のところ語学学習と同じだ。
前世で英語の資料を読み漁っていた経験が、こんな形で役立つとは思わなかったけど。
その結果――
周囲からは、神童と呼ばれる程度にはなってしまった。
まあ、この世界の歴史以外は、日本の義務教育に勝てるものですか!
算術も、地理も、一般常識も。
前世の知識があるだけで、同年代の子供達より一歩どころか、三歩も四歩も先に進める。
チート能力なんて無くても、人間の積み上げてきた教育ってのは、十分に反則だ。
……とはいえ。
日本にも無かった、というか。
地球そのものに存在しなかった概念も、この世界にはある。
魔法関連と――魔物の存在だ。
まず、魔法について。
どうやらこの世界では、五歳になると教会で“スキル”というものを授かるらしい。
授かる、という表現が正しいのかは分からないが、儀式を受ける事で個人に適性のある能力が明らかになるとの事だ。
普通は、一つ。
ごくごく稀に、二つ。
それ以上となると、歴史に名を残す様な英雄譚の中でしか語られないらしい。
そして、そのスキルに応じた魔法を使う事が可能になるのだとか。
火を生み出す者。
風を操る者。
治癒を得意とする者。
適性によって、出来る事は様々らしい。
つまり――
五歳の時点で、その人間の“戦い方”が、ある程度決まってしまうという事だ。
随分と、合理的な制度だと思う。
生まれ持った資質を早期に把握し、それに合わせた教育を施す。
人的資源の最適化という意味では、理に適っている。
そして、もう一つ。
魔物の存在。発生の原因は不明。
いつ、どこから現れるのかも、完全には解明されていないらしい。
ただ確実に言えるのは――存在している、という事実だけだ。
それらを排除するのは、冒険者だったり。
領地軍だったり。
王都軍だったり。
まあ、規模や危険度によって、対応が違うという感じらしい。
小規模な魔物の群れなら、冒険者。
街道を脅かす程度なら、領地の常備軍。
大規模な発生や、災害級の個体となれば、王都からの正規軍が出動する。
つまり、この世界において“戦う”という行為は、極めて日常的な仕事の一つだ。
そして、私はその戦力の一端を担う可能性がある、伯爵家の跡取り娘。
五歳の誕生日を迎えた今。
教会での儀式を受ける日が、近づいていた。




