魔石という電池
素材市場で、私は小さな魔石を数個買って来た。
護衛は渋い顔をしていたが、金額は大した事はない。
私にとっては――未知の石。
机の上に並べる。
半透明。内部に、淡い光が揺らいでいる様にも見える。
分析。
魔石(小):魔力内包。
残存量:中。
属性傾向:無。
魔力が、込められている。
しかし魔力とは?
それが分からなければ、応用は出来ない。
私は、更に分析を掛けた。
対象:魔石。
分析、深度上昇。
視界の情報が、より具体化する。
魔石:
魔物体内で生成された魔力蓄積結晶。
外部刺激により魔力放出可能。
地球概念換算:乾電池・蓄電池類似。
……は?私は、目を瞬かせた。
乾電池?バッテリー?
つまり。エネルギー源?
胸が、高鳴る。魔物を動かす原動力。
それは裏を返せば、エネルギーを取り出せる、という事ではないか。
私は石を手に取り、じっと見つめた。
充電も、出来るって事よね?
分析。
魔石:外部魔力供給により再充填可能。
おぉ。これは完全に、電池だ。
電源。ならば何かしらに使えるわね。
私は紙を引き寄せた。頭の中に、前世の記憶を呼び起こす。
単純な回路。光源。導線。
「懐中電灯」
呟いた瞬間。紙の上に、線が走った。
円筒型筐体。
内部に魔石収納部。
前方に光放出レンズ。
制御用スイッチ。
簡易魔力導線。
おー!
設計図が出来た!
分析とエンジニアの併用。
必要材料が表示される。
木製筐体。
透明石(レンズ代替)。
魔力導線用銀線。
固定金具。
思ったより簡単。
問題は――
充電。
魔石を使い切ったら終わりでは、普及しない。
ならば。
「魔力充電機」
私は、思わず笑った。
うひひ。これも、いけるのでは?
頭の中で構造を組み立てる。
魔力を外部から魔石へ流し込む装置。
必要なのは――魔力を供給する側。
つまり魔法を使える人間。
もしくは別の魔石を媒介にする仕組み。
紙に触れる。
設計。単純な魔力誘導枠。
魔石固定部。流量制御構造。
うひひ!これも設計図が出来た!
意外と簡単な仕組みだ。
理屈は、電気の充放電に近い。
魔力を流し込み、蓄積。
過充填を防ぐ為の制御弁的構造も追加。
分析が補助してくれる。
材料。工程。加工難易度。
これは作れる。私は椅子から立ち上がった。
早速、材料を集めるとしますか。
まずは試作。成功すれば。
夜間作業。警備。地下倉庫。用途は無限大。
そして魔石を大量に扱う仕組みが出来れば。
素材市場の価値は跳ね上がる。
魔物は脅威。
その中核である魔石は、資源。
エネルギー。私は魔石をもう一度見つめた。
小さな光が、内側で揺れている。
これがこの世界の“電気”なら。
革命は、そう遠くない。




