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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

『消えた恋人と泣き濡れる王女』

作者: 小さな道
掲載日:2026/02/16

王女は、愛する男が姿を消したことを嘆き悲しんでいました。彼は北の洞窟に住む「怪物」を退治するために旅立ったきり、戻らなかったのです。


王女はどうしてもその現実を受け入れられませんでした。

父である国王は、彼女を慰めようとしました。

「愛しい娘よ、心配するな。彼はきっと帰ってくる。」

「お父様、彼が帰らなくなってからもう5年が経ちました。私の人生は悲しみに染まっています。」

王は娘をそっと抱き寄せ、その痛みを和らげようとしました。


彼女は5年間、絶え間なく泣き続けました。王位を継ぐ唯一の跡継ぎでありながら、5年前に消息を絶った勇敢な騎士への愛を捨て去ることができなかったのです。


「お父様、お願いです。北の洞窟へ遠征隊を送ってください。」

「分かった、お前のためにそうしよう。私にとってお前はかけがえのない宝物だ。お前が世界で一番幸せな娘であることを願っているよ。お前の涙を見るのは、身が切れるほど辛いのだ。」


遠征隊が出発しましたが、またしても誰も戻りませんでした。

別の隊を送りましたが、結果は同じでした。


「よし、今度は私自身が行こう。」

「お父様、いけません……。」

「約束する、必ず戻るよ。」

「……彼は、そう言って旅立ちました。」

「私を一人にするのですか? もしお父様が戻らなければ、王国はどうなるのですか?」

「もし私が戻らなかったら、すべての子供たちが笑顔でいられるようにしてくれ。」


王は白馬にまたがり、騎士たちと共に旅立ちました。

しかし、彼らも二度と戻ることはありませんでした。


王女は、愛する人の失踪だけでなく、父の死をも嘆き悲しみました。

彼女は子供たち全員に笑顔を与えることには成功しましたが、彼女自身の顔に笑顔が戻ることはありませんでした。


「私が行きます……。お二人を救いに行きます。」


ある夜、彼女は塔を降り、北の洞窟へと向かいました。

洞窟の入り口には、多くの亡骸が横たわっていました。

しかし、その遺体には争った形跡が全くありません。それどころか、皆安らかに、その表情には微笑みさえ浮かべていたのです。


「安らぎ。」

そう、「安らぎ」という言葉がふさわしい。彼らは平和のうちに亡くなっていたのです。


王女が洞窟の奥へ進むと、そこは青く光るキノコのおかげで明るく照らされていました。

洞窟の突き当たりに辿り着くと、そこには木々が茂る緑豊かな空間が広がっていました。

まるで洞窟の中に森があるかのようでした。

鳥がさえずり、水の流れる音は心地よく響いていました。

そこにあるすべてが「平和」そのものでした。


王女は愛する人と父を探して、その森の中へと足を踏み入れました。

すると、「安らか」に亡くなっている父の姿を見つけました。

彼女は涙を流し、父の額に最後の口づけをしました。

「さようなら、お父様……。愛していました。」


あとは、愛する人の体を見つけるだけです。

彼女は隅々まで探し回りましたが、何も見つかりませんでした。

「どこにいるの?」


突然、王女は目の前の岩の上に座っている一匹の白い尾の狐に気づきました。

狐は口に「青白い花」をくわえていました。

それは、彼が旅立つ前に彼女に贈ってくれたのと同じ花でした。


「やっと見つけたわ。」


狐はついてくるようにと王女に合図しました。

幸せな気持ちになった王女は、王国の古い歌を口ずさみながら、狐の後を追いました。


「古い堀端の霜は消え、

サンザシの花が森を白く染める。

騎士は目覚め、心は晴れやか、

冬の影も凍てつく秘密も消え去った。

戦いの鋼の音ではなく、

果樹園の上で歌うヒバリの声を聞く。

鉄の鎧の下の細かな鎖帷子さえ、

今朝は絹のように軽く感じられる。

いざ! 太陽は城壁を黄金に彩り、

馬の足音の下で大地が歌い出す。

槍も血塗られた功績もいらない、

世界の幸せが家の中に溢れているのだから。

彼は急ぐことなく、一番の晴れ着で馬を走らせる、

盾には青と朱の彩り。

出会う婦人たちに感謝を捧げ、

勇者にとって、生きることは最も甘美な目覚め。

彼は王の宮殿の祝祭へと向かう、

争いや苦しみの証ではなく、

野の花の束、素朴な信仰の贈り物を手に。

ただ、幸せであるという誓いを持って。」


狐は王女の美しい調べを知っているようでした。

二人は一本の木の下に辿り着きました。

狐が座ると、王女もそれを理解して、木の根元に腰を下ろしました。

彼女は、なすがままにさせてくれる狐の頭を撫でました。


「5年間も離れていたのね……。」


王女は、その狐が愛する人の成れの果てであることに気づいていました。

「私も安らかに旅立ちます……ここで。子供たちに笑顔を届けました……。王国は平和です。そして、私も。」


彼女は狐の頭に口づけし、心にある最後の言葉を口にしました。

「愛してる。」

「僕もだよ。」


王女は唇に微笑みを浮かべたまま、息を引き取りました。

愛する人は彼女に寄り添いました。

やがて、彼女も一匹の狐として生まれ変わりました。


二匹の狐は、北の洞窟で幸せに暮らしました。

王はシジュウカラに、騎士たちはカエルに生まれ変わりました。

王国は1000年の間、幸せに包まれました。

そして二匹の狐は、多くの子狐たちに囲まれて家族を築いたのです。


こうして、愛し合う娘の物語は幕を閉じました。

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