06
迷宮を見つけてから、三日目。
正確には、
貴族令嬢と食事をした翌日だ。
朝、ギルドに呼ばれた。
理由は分かっている。
分かっているが、納得はしていない。
「迷宮が……」
「師範が近くにいると、静かになるのです」
受付の女性が、
困ったように言った。
「ですので、一応……」
「状況確認を……」
俺を見るな。
原因不明だ。
森まで同行を求められたが、
俺は入口の前で止まった。
「……ここでいい」
一歩も入らない。
それでも、
迷宮は低く鳴って、
落ち着いたらしい。
周囲が、ざわつく。
「やはり……」
「存在そのものが……」
違う。
ただ近づきたくないだけだ。
【ダンジョン反応:安定】
【要因:不明】
こっちも知りたい。
ギルドに戻ると、
なぜか空気が重かった。
人が多い。
机が散らかっている。
床が汚れている。
……落ち着かない。
「少し、掃除していいか?」
そう言っただけだった。
誰も反対しない。
むしろ、道が開く。
俺は、
近くにあった布を取り、
机を拭いた。
床も拭いた。
ついでに、入口も。
それだけだ。
【チュートリアル】
【理解不能な行動を確認】
俺もそう思う。
昼過ぎ、
用事は終わった。
迷宮は落ち着き、
報告書は整い、
俺は帰った。
それで――終わりのはずだった。
夜、
宿の窓から外を見る。
街が、妙に明るい。
人が動いている。
掃除している。
しかも、あちこちで。
翌朝。
道が、綺麗だった。
排水溝が整備され、
井戸の周りが片付いている。
「……?」
宿の主人に聞くと、
当然のように答えた。
「昨日からですよ」
「“師範が掃除を始めた”って」
知らない。
「ギルドだけだぞ?」
【街全体での環境改善を確認】
やめろ。
迷宮の方を見ると、
今日も静かだった。
まるで――
「余計なことをするな」
そう言いたげに。




