02
翌日、俺は市庁舎に呼び出されていた。
理由は、よくわからない。
「ドラゴン討伐の功績により――」
とにかく、そういうことらしい。
広い部屋。
偉そうな人たち。
胸に勲章をつけた中年男性。
どうやら、この街の代表らしい。
「あなたは、あの戦争から生き延びた指揮官だと聞いています」
……戦争?
知らない。
何の話だ。
だが、俺の顔を見るなり、全員が黙った。
「……あの傷」
「前線でも、相当な修羅場だったはず」
違う。
生まれつきだ。
誤解を解こうとしたが、もう遅かった。
話は勝手に進む。
「よって、ここに“名誉市民”の称号を授与します」
拍手。
ざわめき。
俺、立ち尽くす。
「え、あ、はい……?」
称号と、少額だが報奨金を受け取った。
金はありがたい。
意味はわからない。
【チュートリアル:想定外の評価上昇です】
知らない。
市庁舎を出ると、何人かの冒険者に囲まれた。
「あなたが……」
「伝説の指揮官……!」
いや、違う。
「ぜひ、ご指導を!」
……え?
俺は剣も振れない。
魔法も使えない。
ただの元社畜だ。
「無理だ。俺は戦わない」
そう言ったつもりだった。
だが、相手の解釈は違った。
「前に出ない戦い方……!」
「高みにいる人の考えだ……!」
勝手に感動されている。
仕方なく、街の外を散歩することにした。
運動不足だ。
このままでは太る。
「歩くのは大事だぞ」
「体を動かさないと、いざという時に困る」
なぜか、後ろに人が増えていく。
冒険者。
傭兵。
見覚えのある顔。
全員、真剣だ。
「今の言葉、深い……」
「修行とは、日常にある……!」
いや、ただの健康アドバイスだ。
【チュートリアル:物語が進行していません】
知るか。
森を歩いていると、空気が変わった。
地面が、わずかに震えている。
魔力が、集まっている。
「……ん?」
前方で、地面が歪んでいた。
黒い裂け目のようなものが、ゆっくり広がっている。
冒険者たちが、息を呑む。
「ダンジョン……?」
「しかも、自然発生……!」
俺は首を傾げた。
「近づかない方がいいな」
「危ないし」
その一言で、全員が後退した。
「さすが……」
「もう先を読んでいる……」
違う。
ただ怖いだけだ。
その時、視界に赤い文字が浮かんだ。
【警告】
【重要イベントの発生を確認】
【ダンジョンの誕生は、本来あなたが関与する予定ではありません】
「知らないって」
地面の裂け目から、低い音が響く。
何かが、目覚めようとしている。
冒険者たちは、武器を構えた。
俺を守るように、前に出る。
……あれ?
俺、守られてないか?
【ヒント】
【周囲は、あなたを“導く存在”として認識しています】
やめてくれ。
俺はただ、
健康のために散歩していただけだ。
だが、どうやら――
また、面倒なことに巻き込まれたらしい。




