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朝。


目が覚めた瞬間、嫌な予感がした。


理由は簡単だ。


――静かすぎる。


いつもなら、

廊下で冒険者が走る音、

誰かが剣を落とす音、

酔っ払いの叫び声。


それが、ない。


【警告】

【周囲の騒音レベル:異常に低下】


ほらな。


宿を出ると、街が妙だった。


人が、道の端を歩いている。

荷車が、整列して進んでいる。

ゴミが……落ちていない。


怖い。


「……何があった?」


近くのパン屋の親父に聞くと、

当然のように言われた。


「昨日の夜、話し合いがあってな」


「師範方式でいこう、って」


聞きたくない単語が聞こえた。


ギルドに着いた瞬間、確信した。


――やらかした。


会議室が、満員だ。


冒険者。

ギルド職員。

見たことない役人。

なぜか、貴族っぽい人までいる。


全員、俺を見る。


「来た……」


「やはり中心人物だ」


違う。


俺は、ただ棚を直しただけだ。


「では始めましょう」


誰かが言った。


「師範式・都市運営会議を」


帰りたい。


内容は、こうだ。


・清掃は朝夕二回

・装備の手入れを義務化

・迷宮周辺の動線整理

・無駄な戦闘は禁止


誰が決めた。


俺じゃない。


「師範の考えを、街全体に」


やめろ。


【チュートリアル】

【あなたの行動が“文明レベル”に影響しています】


知らん。


【説明用グラフを表示します】


画面に、

意味不明な円グラフが出た。


全部、赤い。


【失敗】


おい。


会議が終わる頃には、

なぜか拍手が起きていた。


「さすが師範」


「無為にして統制するとは……」


してない。


何も。


外に出ると、

弟子(自称)が増えていた。


武器を磨く者。

姿勢を正す者。

無言で立つ者。


「……何してる?」


「待機です」


待つな。


その時、

遠くで、低い音がした。


迷宮だ。


今までとは違う。


――少し、苛立っている。


【ダンジョン反応】

【状態:観測中】

【対象:あなた】


やめろ。


「俺は、静かに暮らしたいだけだ」


誰に向けた言葉か分からないまま、

俺は歩き出した。


背後で、

皆が一斉に動き出す。


……やめてくれ。


迷宮の奥で、

何かが、目を覚ました。


そんな気がした。

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