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正直に言う。


今日は、何もする気がなかった。


本当に。


体が重いし、外はうるさいし、

昨日は掃除しすぎた。


「今日は休む」


そう決めて、

俺はギルドの隅の椅子に座り、

目を閉じた。


それだけだ。


「……師範、瞑想ですか?」


誰かが小声で言った。


違う。


寝てるだけだ。


「やはり……」


「無為の構え……」


「高度すぎて、我々には理解できない……」


理解しなくていい。


【チュートリアル】


【行動:待機】


【評価:異常に高い】


何でだ。


目を開けると、

周囲の空気がピリッとしていた。


人が多い。


静かだ。


異様に整列している。


「……何があった?」


受付の女性が、

真剣な顔で言った。


「師範の“昨日の教え”を元に、

ギルド内の行動規範をまとめました」


聞いてない。


掲示板を見る。


【新ギルド規則(暫定)】


・無駄な移動をしない

・装備は常に整える

・汚れたらすぐ拭く

・焦らない

・騒がない


……俺の生活習慣じゃないか。


「誰が決めた?」


「弟子の皆さんが……」


やめてくれ。


【チュートリアル】


【警告】


【“流派”が制度化されています】


【これは想定外です】


知るか。


その日、

ギルドの仕事は異様に早く終わった。


揉め事なし。


叫び声なし。


書類が揃っている。


床が光っている。


「……気持ち悪いな」


俺はそう呟いた。


「師範のおかげです!」


元気な声。


知らない冒険者。


「昨日までDランクだったんですが、

清掃流を意識したら

集中力が上がって……!」


昇格していた。


意味が分からない。


【結果】


【周囲の行動効率が上昇】


【理由:不明】


俺も不明だ。


夕方。


ギルドを出ようとすると、

見慣れない男に呼び止められた。


貴族服。


でも、偉そうじゃない。


「あなたが……師範」


またか。


「城から、正式な確認が来ています」


嫌な予感しかしない。


「“街の安定化に関与している人物”として」


知らん。


俺は逃げた。


理由は簡単。


面倒だからだ。


森の方へ向かうと、

後ろに人の気配が増える。


振り返る。


十人以上いる。


「なぜついてくる」


「師範が歩く場所は安全だと……」


根拠がない。


【チュートリアル】


【“影響圏”が拡大しています】


【制御不能】


最初から制御してない。


しばらく歩いて、

木の根元に座る。


「ここで休憩だ」


それだけ言った。


冒険者たちは、

一斉に座り、

静かに水を飲み始めた。


整列して。


同じ姿勢で。


怖い。


「……なあ」


「はい、師範!」


「自由にしていいんだぞ」


「……深い」


深くない。


その時、

遠くで、低い音がした。


迷宮の方角だ。


でも――


今日は、少し違う。


音が、

迷っている。


【ダンジョン反応】


【指示待ち状態】


……やめろ。


俺は立ち上がった。


「今日は、帰る」


それだけだ。


背後から、

誰かが呟いた。


「……やはり」


「動かない時ほど、

世界が動く……」


違う。


ただ、疲れただけだ。


宿に戻ると、

ベッドに倒れ込んだ。


天井を見る。


「……俺、何やってるんだろうな」


【チュートリアル】


【それは、こちらの台詞です】


遠くで、

迷宮が、また一つ、

静かに鳴った。


まるで――


様子を伺うように。

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