帰還
あれから気が付くと自分の部屋のベットで寝ていた。
俺の体にあった傷は無くなり体に走る痛みもなかった。
「此処は?」
時刻は十時を回った辺りで、前まで置いてあったハンガーラックに制服が掛かっていたところを見るとそこに制服はなかった。
リビングに向かうと桐生がキッチンで紅茶を淹れていた。
「おはようございます」
「ああ」
「紅茶飲みますか?」
「うん、よろしく」
俺は元の世界に戻って来たのだろうか?
「桐生?」
「はい?」
「俺は今何歳か分かるか?」
「二十三歳ですね、あ、でも」
でも?
本当のことなら俺は元の世界に戻って来たと言うことだろうが言うことだろう、でもと言うのはなにか分からいが。
「もう少しでお誕生日ですし、二十四歳ですね」
「あ、そう言うことか」
「はい、それよりお体は大丈夫ですか?」
「体?」
「ええ、御影様があの不思議な石に触れた瞬間に気を失ったんです」
そう言えば、あの石に触れた直後にあの世界に飛ばされたと言うことなので、現実ではそう言うことになるのだろう。
「特になんともないな」
「そうですか、あの後病院に運ばれたんですが、それでも異常はなく家で様子見となったんです」
「そうか、それで俺はどのくらい寝ていた?」
「一日くらいでしょうか」
「そう言えばあのモンスターは?」
「分かりません、反応はあったんですが現場には痕跡しかなかったんです」
「じゃあ収穫はなかったと」
「いえ、あのおかげで最新のデータが取れたので捜索はできるそうです」
「分かった、それからあの石は?」
「御影様が触れた瞬間に消えました、それで何があったんですか?」
「色々あったが、多分夢だ」
「そうですか」
俺は一服しようとベランダに出た。
箱から一本取り出して、火を付けた。
煙を吐いて考え事をする、あれは夢だったのだろうか?
まだ疑念は消えない、試しに力を解放してみるとエーテルの感触はあのままだった、光牙との繋がりも感じる。
本当は光牙と会話したいがあいつは自分から用がないと出てこないので分からない。
『また考え事をしているのか?』
隣を見るとそこには最近見たモンスターがいた。
「九尾」
『やあ、さっきぶりだね』
「なんでこっちの世界にこれるんだ?」
『君の中には清明のエーテルも流れてるからね、それを辿ったんだ』
よく分からない理屈だがまあそれは良しとして、今は聞きたいことがある。
「天黎とのことは現実なのか?」
『元々の世界が違うんだ、夢とも言えるかもしれないがそれでも君自信が自分の力で分ってると思うよ』
「そうか」
『因みに天黎はあのまま消えたよ』
「分かった」
結局共存なんてものを掲げていても、殺したのには違いはない。
『まあそう落ち込まないで、君はやるべきことをやったんだ』
「そうだな」
『君は自分の運命を全うしたんだから』
その言葉に俺はどう返答するべきか迷ったが、でも今は聞きたいことがあった。
「教えてくれないか、天黎について」
『まあ構わないよでも手短にだけど』
「頼む」
『天黎は清明が自分の未来視の能力を元に作ったんだ』
「未来視の力を?」
『うん、多分自分だけ未来が視えるのが辛かったんだろうね、まあ仲間が欲しかったんだだろう』
「それで天黎が作られたのか」
『うん、最初は未来について色々と語ったみたいだけどとある日を境に天黎は清明の元を去った』
「とある日?」
『うん、理由は分からないし聞ける雰囲気じゃなかったから聞けなかったけどね』
「そうか、あいつは本当に絶望したんだな」
『多分ね、相当頭がおかしい奴じゃないとそんなの耐えられないし』
「そうだな、最後は希望を見いだせたのだろうか?」
『それは分からないけど、まあ良い最後だったと思うよ』
「そうだと良いな」
『じゃあ私はそろそろ行くよ』
「またどっかに行くのか?」
『うん、また色んな国に行って楽しんでくる』
「分かった」
『うん、でも君の中にはさっきも言ったけど清明のエーテルがあるから来てほしい時に呼んでくれたら行けるから』
「ああ、じゃあな」
そうして九尾は消えた。
俺の最大のピンチは終わりを迎えた。




