襲撃
周囲の闇が、蠢いた。
暗闇の奥から、次々とモンスターが姿を現す。
一体、二体――いや、数え切れない。
「どこから湧いてきやがる……!」
神阪が歯噛みする。
「落ち着け。こいつらを操ってる奴がいるはずだ」
俺がそう告げた、その時だった。
――パチ、パチ、パチ。
乾いた拍手の音が、影の中から響く。
「お見事。現代最強のハンター、御影さん」
ゆっくりと姿を現したのは、奇妙な男だった。
片方だけ白いレンズの眼鏡をかけ、中世の貴族のような装い。
口元には、余裕たっぷりの笑み。
「そして――さようなら」
「名乗りな」
「私は黒鵜。Giftは、モンスターを無限に生み出し、操る力」
黒鵜は両手を広げる。
「さて。これで終わりです」
「数だけ揃えても意味ないんだよ」
神阪がエーテルを溜め、Giftを発動しようとした――その瞬間。
「……使えない?」
「え、私も!」
桐原も同様だった。
黒鵜が愉快そうに笑う。
「今、私の仲間が特殊な結界を張っています。エーテルは発生せず、Giftも使用不能」
「……ただの人間、ってわけか」
「そういうことです」
神阪が舌打ちし、モンスターへ突っ込む。
だが、生身の拳は通じない。
「御影さん。Giftが使えなければ、あなたもただの餓鬼ですよ」
黒鵜がナイフを投げる。
――だが。
俺は、その場で結界を張った。
「なにっ!?」
「悪いな。俺は使えるみたいだ」
「馬鹿な! 何をした!」
「俺は常にエーテルを噴き出してる」
結界はエーテル濃度を抑える仕組み。
だが、俺の濃度は――抑えきれない。
「ふざけるな……何者だ貴様は!!」
「さあな。そう言う体質なもんで」
黒鵜が叫ぶ。
「行け! こいつを殺せ!!」
操られたモンスターが、一斉に俺へ殺到する。
「この数では、いくら貴方でも――」
俺はマイクロポータルを開き、刀を取り出した。
「悪いが、絶対的な強さの前では数は意味をなさない」
刀にエーテルを込める。
「――次元斬り」
一振り。
空間が裂け、モンスターは次々と消滅していく。
「……馬鹿な」
黒鵜はその場に崩れ落ちた。
「少し、話を聞かせてもらう」
「来るな……!」
俺は無言で蹴りを入れる。
「ぐっ……!」
倒れ込みながら、黒鵜は嗤った。
「だが……任務は達成された……必ず後悔するぞ、御影……!」
そのまま、意識を失った。
「……なんだったんだ、あいつ」
「さあ?」
無線が繋がる。
『御影さん!!』
「姫野さん。主犯は確保した。応援を頼む」
『了解です』
その後、京都のハンターが到着し、黒鵜は拘束された。
「八咫烏が関わってる可能性が高い」
俺はそう告げる。
「意識が戻り次第、すぐ尋問を」
「分かりました」
儀式は無事終了。
朝霧は厳重な護衛のもと、安全な場所へ。
俺たちは翌朝、東京へ戻り、解散した。
「ただいま」
「お疲れ様です」
風呂に浸かり、今回の件を思い返す。
だが――もう関係ない。
明日には、元の世界へ戻っているはずだ。
そう思い、眠りについた。
――翌日。
目を覚ますと、見慣れた天井。
「……戻った?」
だが、部屋を見ると。
ハンガーラックに――制服。
「え?」
俺はリビングへ駆け下りる。
「おはようございます」
「なあ、桐生」
「はい?」
「俺、今何歳だ?」
「十八ですが……?」
「あー……」
ベランダに出て、空に向かって叫ぶ。
「戻ってねー!! なんでだぁぁ!!」




