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護衛前夜

そうして翌日。

俺たちは朝から京都へ向かう新幹線に乗っていた。


指定席の車内は比較的静かだったが、俺たちの後方だけは例外だった。

神阪と如月が、修学旅行か何かと勘違いしているのか、無駄にテンションが高い。


「京都って言ったら八つ橋だよな!」

「いや抹茶だろ抹茶!」


――うるさい。


まあ、緊張を紛らわせるためなのだろう。

そう思って多めに見てやろうとした、その時だった。


急に、後ろが静かになった。


「……?」


不審に思って少しだけ振り返ると、神阪は口を半開きにしたまま熟睡していた。

隣では桐原が、何事もなかったかのように微笑んでいる。


「……ああ、そういうことか」


俺は見て見ぬふりをした。

女性を敵に回すと怖い。これは人生の真理だ。


京都まであと一駅、というアナウンスが流れた頃だった。


「御影さん、もうすぐ着きます。準備してくださいね」


桐生の声に頷こうとした瞬間――

体の奥を、細い電流が走った。


「……っ」


ほんの一瞬。

だが確実に、エーテルの流れが乱れた感覚があった。


「どうかされました?」

「いや……気のせいだと思う」


そう答えながらも、胸の奥のざわつきは消えなかった。

この感覚は知っている。

虹ゲートの前、マモンと対峙した時、そして――取り返しのつかない何かが起きる前だ。


理由は分からない。

だが、嫌な予感だけははっきりしていた。


京都駅に到着すると、俺たちはそのままタクシーでホテルへ向かった。


「まずは荷物を置いて、十分後にロビーで会議です」


姫野さんの指示で、それぞれ部屋に分かれる。

俺は桐生と同室だった。


「今日の流れは、丑三つ時前に神社へ移動して護衛。

 それまでは自由時間、でしたよね?」


「ええ。ただし“何も起きなければ”ですが」


桐生はそう言って、意味深に視線を逸らした。

俺も同じことを考えていた。


――ここに来るまでに、違和感が多すぎる。


ロビーで行われた会議では、神社での配置と役割分担が話し合われた。


「御影さん、桐原さん、神阪君は、朝霧 澪の至近距離で待機してください」


「ちょっと待て」


如月が手を挙げる。


「御影は分かる。だが、なぜその二人だ?」


姫野さんが即座に答えた。


「御影君と日常的に行動を共にしている。

 連携面で最も信頼できると判断しました」


「それに――」

桐生が続ける。


「桐原さんのGiftは、御影さんの戦闘を補助できる可能性があります」


如月は少し考え、やがて頷いた。


「……了解だ」


昼過ぎ、会議は解散となり、俺たちは近くの定食屋で昼食を取った。

神阪と桐原の希望で、いくつか観光地を回り、気づけば夕方になっていた。


「そろそろホテルに戻りましょう」


桐生がそう言った時、俺は立ち止まった。


「最後に、一か所だけ寄りたい」


「どこですか?」

「……行けば分かる」


違和感の正体を、確かめる必要があった。


人通りの少ない裏路地。

そこで、俺は足を止めた。


「……やっぱりな」


そこにいたのは、年齢も服装もバラバラな若者の集団。

全員マスクを着け、視線が定まっていない。


「え、誰?」

「なんでハンターが……?」


彼ら自身も、自分たちが同じ場所に集められている理由を理解していなかった。


【出てこい】


低く呟いた瞬間、ネクロポートが開き、モンスターが姿を現す。

若者たちは悲鳴を上げて後ずさった。


「御影さん……これは?」


「雇われただけだろう。

 闇バイト――使い捨ての囮だ」


桐生が即座に状況を理解した。


「つまり、我々の動向を探るための――」


「ああ。だが本命じゃない」


それが分かった瞬間、胸の奥の嫌な感覚が強まった。


「桐生、姫野さんに連絡を」


「了解しました」


俺は一歩下がり、周囲を見渡す。

敵は、俺たちの“戦力”を測りに来ただけだ。


――本番は、別にある。


「俺は少し散歩してくる」


「一人で?」

「ああ。違和感の正体を確かめたい」


桐生は一瞬迷ったが、頷いた。


「……十分以内に戻ってください」


俺はその場を離れ、京都の夕暮れの中へ歩き出した。


胸の奥で、何かが静かに警鐘を鳴らしていた。


――本当に危ないのは、今夜だ。

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