テスト
数十分後、家の前に一台の車が止まった。
「御影様」
運転席から降りてきたのは桐生だった。
「おう」
「こちらが先輩のお二人ですか?」
「はい。桐生と申します。――一応、現役のS級ハンターです」
その一言で、空気が変わった。
「そうですか……桐生さんが助っ人?」
「ああ。テストが終わるまで、泊まり込みだ」
「げっ!!」
「本当ですか!?」
神阪が絶望の声を上げる横で、桐原は目を輝かせている。
「分からないところは、すべて私が見ますよ」
逃げ場はなかった。
その日から三日間、俺たちは家に缶詰になった。
俺はGiftを使い、五教科分の範囲を分身に割り振る。
分身が戻れば、知識もまとめて頭に入る。
――効率だけなら、反則級だ。
「高校時代にこれがあればな……」
そんなことを思っても、今さらどうにもならない。
問題は神阪だった。
三日後、テスト当日。
俺は早々に答案を提出し、隣の教室で待機していた。
「頼むぞ……」
口では軽く言いながらも、内心は落ち着かない。
やがて桐原が出てきて、その数十分後。
時間いっぱい使い切って、神阪が戻ってきた。
「……やばい」
「それはどっちの意味だ」
「分かんない。両方」
しばらくして、先生が答案を手に教室へ入ってきた。
「採点、終わったぞ」
神阪は両手を握り、必死に祈っている。
「最後だ。――数学」
「神阪」
呼ばれた名前に、神阪の背筋がピンと伸びる。
先生は一瞬、怖い顔をしたあと――ふっと表情を緩めた。
「よく頑張ったな」
渡された答案。
三十一点。
「やったーー!!」
「正直、お前がここまでやるとは思わなかった。先生、感動してる」
その言葉に、神阪は泣きそうな顔で笑った。
京都では、初日か最終日に少し観光しよう。
そんな話をしながら教室を出ようとしたとき、俺だけ呼び止められた。
「御影、少し」
担任と二人きりになる。
「今度の仕事、危ないんだろ?」
「……まあ」
「なら、尚更だ。気を付けろ」
「はい」
「それから――」
「分かってます。二人のことも」
先生は、何とも言えない顔で頷いた。
その表情を見て、胸の奥が静かに引き締まる。
――どんな形になっても、守る。
そう心に決めて、俺は校舎を後にした。




