違う世界
「——おい、御影。起きろ」
頭を軽く叩かれて、意識が浮上した。
「……え?」
「え、じゃねえ。授業中だぞ」
見上げた先に、黒板と教師。
そして、懐かしすぎる教室。
俺は、息を呑んだ。
ここは——
高校の教室だった。
窓から差し込む昼前の光。
机に刻まれた落書き。
ざわめきの中で、ノートを取るクラスメイトたち。
見覚えがある。
確かに、ある。
けれど——
(……なんで、俺がここにいる?)
さっきまで、俺は四日市で、
Z級のエーテル反応に触れて——
「はい、今日はここまで。昼休みだ」
チャイムが鳴り、教室が一気に崩れる。
立ち上がる生徒、弁当を広げる音。
俺は、席に座ったまま動けなかった。
夢?
幻覚?
それとも——
「御影、先生呼んでるぞ」
「……あ、ああ」
反射的に立ち上がる。
体は、ちゃんと“高校生のまま”だった。
廊下を歩き、空き教室に入る。
「そこ座れ」
担任の教師は、俺を見て言った。
「進路の話だ。飯、食いながらでいい」
机に腰を下ろし、バッグを開く。
中には、おにぎりと菓子パン。
——懐かしい。
けど、それ以上におかしい。
「御影」
「はい」
「お前、卒業後もハンター続ける気か?」
——その一言で、背中が冷えた。
(……ハンター?)
教師は当然のように言う。
まるで、それがこの世界の“常識”みたいに。
俺は何も答えず、黙ってスマホを取り出した。
検索欄に、自分の名前を打つ。
表示された記事を見て、確信する。
——ここは、俺の知っている過去じゃない。
Z級ハンター。
Gift。
世界大会、日本優勝。
全部、事実だ。
けれど、細部が違う。
発現時期。
経歴。
選択の分岐。
(……パラレル、か)
考えをまとめる前に、教師が言った。
「無理はするな。考えとけ」
それだけ告げて、部屋を出ていく。
教室に戻る途中——
聞き覚えのある声がした。
「御影先輩」
振り返る。
そこに立っていたのは、
制服姿の男女二人。
「放課後、少し時間もらえますか?」
——この二人が、
この世界で何者なのかは、まだ分からない。
だが、直感だけははっきりしていた。
この世界は、
俺に何かを“選ばせるつもり”だ。




