家族の時間
少女は風呂から出て、俺の服を着ていた。
「あら、ちょっとでかかったかな?」
「いえ、これだけで十分です」
「そう?」
「はい」
「桐生さん、スープある?」
「はい」
「じゃあそれ飲んでね」
「飲んで良いんですか?」
「うん」
それから少女は立ちながら桐生さんが持って来たスープを飲もうとした。
「ちょっと、ちょっと」
「はい?」
「折角ソファーも椅子もあるんだから座りなよ」
「座っていいんですか?」
「うん」
先ずここからかと思いながら先が思いやられる。
「じゃあ、君があそにいたのはなんで?」
桐生さんが優しく問いかける。
「さっき言った通りで、家に帰ったら家が更地になっていて」
「それは聞きました、私が聞きたいのはその前です」
「えっと…」
「まあまあ、良いじゃん」
「ですが」
「話したくないこともあるでしょ、取り敢えず今日はベットに入ってゆっくり眠りな」
「ベットですか?」
「うん、それから俺の知り合いに警察がいるんだけどその人だけに君の話を話すね」
「え、それだけは」
「でも、両親がいないのにそれで済ませるわけにはいかないでしょ?」
「でも…」
「安心してただ話すだけだし、それ以降直ぐに何かあるわけではないから」
「そうですか」
「うん、俺の話もちゃんと聞いてくれる人だからさ」
「じゃあ、桐生さんご飯作って」
「はい」
それから炒飯が出てきてそれを食べてるといつまでも、手をつけないのでこれも言わないといけないのかと思った。
そうしてご飯を食べ終わって桐生さんが部屋に案内しようとした時。
「ねえ?」
「はい?」
「君の名前聞いてなかった」
「私は、雪村真白です」
「そうか、分かったお休み」
「はい」
それから数分経って、桐生さんが帰った来た。
「どうでした?」
「色々困惑している様子でした」
「そっか、まあそうだよね」
いきなり連れて来られて不安だっただろう、何をされるか分からないし居場所がないと言うことは相当辛いのだろう。
「電話してくる」
「はい」
ベランダに出て、携帯を出す。
ただでさえ久しぶりだし覚えていてくれるだろうか?
番号を入力して電話を掛ける。
『はい、青嶋です』
『あ、御影です。覚えてますか?』
『御影君?』
『はい、七年くらい前にお台場の海の前でピーポー君の格好をして話しかけてくれた』
『あー、あの子か。元気だった?』
『はい、なんとか』
『そっか、連絡くらいしてくれても良かったのに』
『すいません』
『まあ良いけどさ』
『青嶋さんってまだ湾岸署ですか?』
『今は警視庁で働いてるんだ』
『そうだったんですね』
『うん、それで何かあった?』
『実は…』
俺は事の顛末を話した。
『そんなことがあったのか』
『はい、それでどうすべきかを聞きたくて』
『まあ普通は警察に任せてほしいけど今厄介なことになってな』
『厄介?』
『ああ、雪村真白と言ったか?』
『はい』
『調べるからちょっと待ってて』
それから数分経って結果が出た。
『雪村真白は以前施設に預られてたことがある』
『施設ですか?』
『ああ、虐待やネグレクトだったりな、でも数年で親の元に戻ってる』
『なんで?』
『親がそれなりの誠一を見せれば元に戻るらしい、それで数週間前に兄が結構な大手企業に就職したんだけどな会社の金を横領してそのまま逃げてるらしい』
『なるほど、それで両親は?』
『一緒に逃げてるみたい、だけどこんなに血眼になってこっちが探しても見つからないとなると相当逃げ慣れてるな』
『そうですか』
『うん、多分その子が警察を嫌がったのは警察に関して、言ったら殺すとかそう言うことを刷り込まれてるのかもしれない』
これは相当まずい状況になってきた。
『なるほど』
『ああ、今御影は何してるんだ?』
『仕事ですか?』
『うん』
『ハンターやってます』
『もしかして、最近テレビに出てる御影って』
『僕です』
『そうか、なら一層心強いかもしれないな』
『と言うと?』
『今、警察から施設にいることがばれたらその子に危険が及ぶかもしれない、だから兄と両親が逮捕されるまで面倒見てやってくれ』
『分かりました』
『じゃ、何か進捗あれば連絡するわ』
『はい、よろしくお願いします』
そうして電話を切った。
「どうでした?」
「なんか、雪村って子の兄が会社の金を持って親と一緒に逃亡してるらしい」
「それはまた…」
「それで前から親に虐待を受けてたらしくて、施設に居たらしいけど数か月経てば家に戻っていたらしい」
「そんなことが」
「うん、それで保護施設に居ることがばれると雪村さんに危害が及ぶ可能性があるから俺の所で一度保護してほしいって」
「なるほど」
「うん、まあ俺がハンターってこともあるし、此処には何かあれば警察だけじゃなくてハンターと協会の職員も来るから安心だと思う?」
「そうですか、警察にもちゃんと話を聞いてくれる人がいるとは」
「言ったでしょ、良い人だって」
「分かりました」
「じゃあそう言うことで」
「はい、でも学校にはなんと説明すれば」
「そうですね、まあそこら辺は上手くお願いします」
「私ですか」
「うん、歳上だし」
「それは関係ないでしょ」
「まあ良いじゃないですか」
「分かりました」
なんだか嫌そうな顔をしているが、俺はそう言うのは向かなので任せることにした。
「明日って日曜日だし休みだよね?」
「そうですね、バイトも無ければ休みだと思います」
「そっか、じゃあ明日色々買わないとね」
「そうですね」
「うん、じゃあ俺寝るわ」
「はい、おやすみなさい」
「はーい」
翌日、朝起きると既に桐生さんが起きていた。
「おはようございます」
「おはようございます、丁度紅茶が出来たのでいかがですか?」
「いただきます」
そうして椅子に座って紅茶を飲む。
「雪村さんは?」
「まだお休みになられてます」
「そっか」
それから一時間くらい経って、十時になった時だった。
「すいません!!」
そう言って雪村さんは階段を下りて来た。
「おはよう、良く眠れた?」
「はい、すいません」
「一回一回謝らなくていいよ。何も悪いことしたないんだから」
「すいません、口癖でして」
「まあこれから直して行けば良いよ」
「はい」
「今日はバイトは?」
「バイトやってないです」
「そうなの?」
「はい、事情がありまして」
「もしかしてお兄さんのこと?」
「知ってるんですか?」
「ちょっと聞いただけだよ」
「そうでしたか、それでくびになりまして」
「そっか、じゃあこれからゆっくり探していけばいいよ」
「はい」
「じゃあ出かけようか」
「何処か行かれるんですか?」
「君を警察から任されてるからね、先ずは髪切り行こうか」
「私そんなお金持ってないです」
「お金の心配はしないで、よし行こうか」
それから車で移動して、行きつけの渋谷にある美容院に向かい話をして髪を切ってもらってる間に俺と桐生さんで、生活用品を買い揃えてそれからカフェで少し時間を潰して美容院に行くと。
「おお、髪切ると随分と別嬪さんになったね」
「あ、ありがとうございます」
恥ずかしそうにしているが正直普通に可愛いし、見間違える程だった。
そうして美容院を出た。
「じゃあ次は服を買いに行こう」
「いや、もう十分ですから」
「良いから良いから、さあ行こう」
そうして服屋を巡るが後ろで桐生さんが、雪村さんに小声で「あの人一度決めたら、曲げないから慣れて」と言ったのが聞こえたがまあ良いかと思い、買い物は終わり、夕方になって家に帰った来た。
「色々ありがとうございます」
「いーえ、取り敢えず暫くはこれで良いでしょう」
「そうですね」
「うん、じゃあ明日学校頑張って」
「はい」
それから翌日になって学校が終わり家に帰って来た、雪村さんは嬉しそうに友達が出来たと言った。
まるで娘が初めて友達が出来たと言われたかのような感覚だった。




