二度の戦闘
翌日。 昼間からゴロゴロしてポテチを食べて、ソファーに寝っ転がってると桐生さんが紅茶を出してもらった。 「出無精ですよ」 「良いじゃないですか、こうして俺が仕事をしないでいられるのが平和なんですから」 「それはそうですけど」 「まあ昨日と違ってマスコミも下にはいないようだし、大分落ち着いたし」 「そうですね、このままの状況が続けば良いんですけど」 「はい、まあ話題が移り変わるのがマスコミですから、興味も薄れて行くでしょう」 「そうですね、まあこれで終われば良いんですけど」 ポテチを食いながら、テレビを見て見ると変わらず俺の話題で話が進んでいる。 コメンテーターは俺がどうして、今まで名前を出さなかったのかを話している。 そんな中、俺が過去に何か犯罪を犯してそれを隠蔽したり他にも名前を出さない理由が好き放題言われていた。 「なんか俺色々な悪い過去があるみたいですね」 「そうですね、全く困った人達ですね」 「はい、まあその内静かになるでしょう」 その夜。 「お風呂沸いたのでお入りください」 「ありがとう」 シャワーを浴びてお風呂に入る。 外に狭いが露天風呂がある、そこに入って夜街を見ながら暖かいお風呂に入る。 今は十月なので少し夜になると寒い。 お風呂に入りながら煙草を吸う。 俺が人殺しなのは間違いないし、それにゲートに問わられている間にモンスターを食い散らかせた、そうして得たエーテルなどもある。 桐原に言われた俺は人間なのかそれともモンスターになってしまったのではないか? そんな疑問がなくなるわけもなく、常に考えている。 もし、モンスターになって外見も変わって人を襲いだした時その時はどうすれば良いのか? 朝、洗面所で鏡で顔を見る時に人間だと思う瞬間が一番落ち着くしドキドキするタイミングになってしまった。 そんな恐怖の一面が誰かに伝わるのが怖い。 誰しも言えない秘密はあるだろう、俺はそれが誰にも言えなくて不安で怖い。そんな恐怖を持ちながら朝を迎える。 そうしてお風呂を出て、リビングでゆっくりする。 「露天風呂いかがでしたか?」 「うん、いつも通り気持ち良かった」 「そうですか」 「うん」 べランダで一服でもしようかと思っていたら電話が鳴った。 相手は昨日俺を心霊スポットに誘った同級生だった。 『はい?』 『あ、繋がった!!』 相手は酷く動揺していて息遣いも荒く恐怖に襲われていた。 『どうした?』 『モンスターが出てそれで…』 『今何処だ?』 『青山霊園の…』 場所を聞いた。 『助けてく…』 『今行く、外の写真を送ってくれ』 「どうかされました?」 「高校の同級生が青山霊園の心霊スポットでモンスターに襲われているらしいんです」 「それは大変ですね」 「はい」 「では今から向かいましょう」 「桐生さんは車で青山霊園まで来てください」 「分かりました、御影さんは?」 「最近写真を見てそれでその場所に行けるのが分かったので、それで行きます」 「分かりました」 俺はマイクロポータルで写真を見ながらその場所をイメージしてゲートの先に向かう。 マイクロポータルから出ると青山霊園に出た。 「え?」 後ろを見ると同級生数人が座り込んでいた。 「お前何処から」 「そんなこと良いからとりあえず離れてろ」 「分かった」 目の前にはモンスターが数三体居た。 でも低級で殆どがC級だった。 一撃で終わらせられるが斬撃を出すと霊園に影響しかねない。 「厄介な状態で呼んでくれたな」 三体いるモンスターは列をなして攻撃を仕掛けてくる。 こいつらは人間を襲う経験がある、それに刀なんて武装してゲートブレイクしてから時間が経っているのだろう。 モンスターが刀を振る瞬間にそれを避けてエーテルを込めてモンスターを殴る、先ずは一匹と思った瞬間その背後から拳が飛んできた。 「お、やっぱり場数踏んでるな。でも物理だと俺には通用しないぞ」 もう一匹も一発で殴った、そして最後の一匹は俺に恐れをなして逃げていく。 【出てこい】 【マスター、お呼びですか?】 【ああ、あいつを倒してくれ】 【かしこまりました】 最後の一匹はあいつに任せて俺は振り返って、腰が抜けてる同級生に手を出した。 「久しぶりだな」 「ああ、お前見違えたな」 「まあな、でも昨日気を付けろって言ったよな」 「モンスターが出てくるなんて知らなかったし」 「心霊スポットにはモンスターが出やすいんだよ」 「どう言うこと?」 「ゲートから出てそれで隠れ蓑にする場合が多いんだよ。まあ廃墟とかそう言う場所が殆どだ」 「なんでそんなことに?」 「外に出てそれで人が殆ど寄り付かなくて、人をかっさらって住処にして最後には人を食うんだ」 「まじか」 「ああ、だから気お付けろて言ったのに」 「それを言えよ」 「まあこれを機に学ぶんだな、あと日本では数は少ないが協会とかに入らないで悪さするハンターとかも廃墟とかを集合場所にしてる可能性もあるから気を付けろ」 「なんでそんなことに?」 「まあ盗聴器とかもないし、警察も中まで入ってこないから使い勝手が良いんだろうな。まあ世の中幽霊とかモンスターより人間が一番怖いって言うし人間じゃないくて良かったな」 「はー、もう終わったかと思ったよ」 そう言って今度こそ座り込んで一息ついている。 「ほっとしている所悪いがまだ終わってないぞ」 「え?」 「これから協会の職員がくるから事情聴取されるからな」 「え、帰れないのか?」 「当たり前だ」 「まじかよ、俺明日仕事なのに」 そうこうしていると、車が止まってハンター協会の職員がこちらに来る。 「大丈夫ですか?」 「はい、被害にあったのはこいつらです」 「もしかして御影ハンターですか?」 「はい」 「ありがとうございます」 「はい、では俺はこれで」 「あ、ちょっと待って御影」 「なに?」 「今度同窓会あるから来いよ」 「暇だったらな」 そう言って霊園を出ると桐生さんから連絡があった。 現状を聞いてきたから解決したと帰ると、近くまで来てるから近くのマックで落ち合おうとなった。 マックに入ってブラック珈琲とポテトを頼んだ。 深夜に食うポテトも背徳感があってなんだか、楽しくなってきた。 まさにゲートを出たらやりたかったことだった。 今ではこんなに簡単に幸せも感じられるがゲートの中では夢のようだった、ことだった。 数分して桐生さんが近くに来ているとのことだったのでポテトを急いで食って、外に出た。 車の窓をノックして後ろのドアを開けてもらう。 「お疲れ様です」 「本当困ったよ」 そうして車が発進して数分して違和感を感じた。 【マスター】 【分かってる】 「桐生さん、止めてくれ」 「此処でですか?」 「ああ、この橋の下にモンスターがいる」 「分かりました」 「取り合えず桐生さんは適当に止められる所に止めて直ぐに来てください」 「はい」 俺は車を出て橋の上から下を見ると今にも襲われそうになってる少女が居た。 俺は上からモンスターと少女の中間に飛び降りた。 「何だお前」 「お前らの天敵だよ」 「ハンターか」 「ああ、一日に二回も戦わせないでくれ」 「今からご馳走だったのに邪魔をするな」 モンスターは目にも留まらないスピードで俺に突進してくる。 だがモンスターの拳は俺には届かない。 「どう言うことだ?」 「こう言うことだ」 俺はエーテルを解放してモンスターを吹き飛ばした。 「うっ…」 「花梨ちゃん!!」 大声が背後から聞こえる。 「大丈夫?!」 「はい」 大人の女性が少女に近づいてきた。 保護者かと思ったがどうやら違うようだった。 「とりあえずそいつ連れて離れて」 「はい、行くよ花蓮ちゃん!!」 「腰抜けて動けない」 「もらった!!」 背後から俺を避けて少女に拳を振るう瞬間にもう一人の男がガードした。 「大丈夫ですか?」 「桐生さんナイス」 そうしてモンスターを投げ飛ばした。 「桐生さん、取り合えずそつらを」 「はい、行きましょう」 強引に少女を抱きかかえてその場を離れる。 「邪魔をするな!!」 「邪魔はお前だ」 モンスターは再び瞬発力でスピードを掛けようとしたが俺は新たなGiftを使った。 「寂滅領域」 御影の周りから地面が真っ黒に覆われる。 「なんだ、動けない」 「これは相手のGiftを強制的に止めるものだ。どうだもうスピードは出せないだろ」 「くそ!!」 モンスターは先ほどのスピードはなく、それでも殴る掛かってくる。 「無駄だよ、神喰」 マイクロポータルを手から小さく凝縮したゲートが現れる、それは相手のGiftでの攻撃やモンスターを強制的に吸収する。 そうしてモンスターは吸収されて行く。 「御影さん!!」 「桐生さん、終わりました」 「そうですか」 「はい、さっきの少女は?」 「近くのベンチに座ってます。もうそろそろハンター協会の職員が来ると」 「そうですか、じゃあ俺らはこの辺で」 「そうですね」 「あ…」 「なんですか?」 俺は少女の近くに行った。 「あの?」 「はい?」 「怪我は?」 「足をくじいたくらいで怪我はないです、助けていただきありがとうございます」 「いえ、それなら良いです」 そうして離れるふりをして俺は呪符を取り出して、息を吹きかけて少女の背中に呪符がくっ付いて消えた。 「では」 「はい」 そうして桐生さんと階段を上って車に戻った。 「さっき何したんですか?」 「呪符を作ったんです」 「呪符?」 「はい、それは一度付けると呪符自体は消えて見えなくなりますが効果は消えないままです」 「どんな効果が?」 「前に作った石のストラップと同じで襲われたりしたら俺に信号が来て直ぐに、吸収したモンスターが出てきて守ってくれます」 「そんなもの開発してたんですね」 「ええ、直接あの石を渡せないこともあるかと思って」 「なるほど、でもなんであの少女に?」 「あの子、さっきのモンスターにエーテルを付けられてました」 「もし、離れていても付けたモンスターがどこまでも追い続けたするやつですか?」 「はい、それにエーテルに反応した別のモンスターに襲われる可能性もあるので」 「なるほど」 「まあ保険ですね」 「でも通常それってつけたモンスターが消滅したら、それも消えるのでは?」 「それが謎で消えてなかったんです」 「どうしてでしょう?」 「分かりません、でもこれまでも今までの無い事例が多く発生してます。なので何かが俺達の知らない裏で動いてる可能性があるのかもしれまん」 「なるほど」 それから、暫くどんな勢力が動いているのか? はたまた個人で動いているのか、どっちにしろ強敵なのは変わりはないと考えながら帰路に立つ。 その道中、雨が降ってきて次第に強くなり大雨になった。 そして家の前の公園のベンチに傘もささずに座っている、人がいた。 「桐生さん、ちょっと止めて」 「はい?」 「傘ある?」 「ありますけど」 助手席の下から傘を渡されて、俺は車を出た。 そうして公園のベンチに向かった。 「君、大丈夫?」 高校の制服を着た少女が俯いたまま、ベンチに座っている。 傘をさして雨が当たらなくなったことでこちらに気づいた。 「こんな時間に一人でなにしてんの?」 時刻はもう二十二時になる所だった。 「家は?」 「な…い」 「え?」 声が小さくて聞こえなかった。 「家無くなっちゃった」 「どう言うこと?」 「帰ったら家が更地になっててそれで、此処なら雨もしのげるかなって」 少女は無理に笑って足をぶらぶらとした。 家がないと言うことは、家ででもしたのか? でも、更地になるとは一体どう言うことなのか。 「御影さん、この子は?」 「なんか帰ったら家が更地なってたらしい」 「そんなことあります?」 「さあ、でもこのままほっとくと状況は酷くなるだけでしょ」 「そうですね、取り合えず警察に」 「警察はやめて!!」 少女は大声で俺の腕を握った。 「お願いします、警察だけは。なんでもします!!」 良く見ると腕に痣があった、警察はNGとなると家出の可能性があるがこのままほっとくわけにもいかないしな。 「取り合えず家来るか?」 「え?」 「このまま此処に居るよりも良いだろ」 そう言って俺は手を伸ばす。 「約束する、俺は君に手をあげることはしなから安心して」 そうして少女は俺の手を取った。 犯罪にならなければいいがと思ったが、この状況は言い訳出来ないなと思いながらマンションに入った。




