一筋の光
「出られるって、どうやって?」
「お前、俺を斬った時――“次元ごと”斬っただろ?」
「次元ごと?」
「気づいてなかったのか?」
「うん、全然」
「……あの瞬間、一瞬だけ空間が歪んでな。向こう側に“人間の気配”を感じた」
「どういうこと?」
「さあな。俺にできる芸当じゃない」
「じゃあ、どうやったらできるんだ?」
「知らん。だが――希望は持ってもいいだろう?」
「えー、そんな曖昧な……」
思わず笑ったけど、胸の奥で何かが小さく灯った。
此処に来てどれだけの時間が経ったのか分からない。
けれど“出口”の存在を信じられるだけで、少しだけ息が楽になる。
その時だった。
――『やり方、教えてやろうか?』
「え?」
「どうした、カゲ?」
「いや、ちょっと一人で考えてくる」
「そうか、あまり遠くへ行くなよ」
俺は静かな場所へ移動して、声の主――光牙と向き合った。
「いきなり話しかけるなよ、びっくりした」
『悪かったな』
「まあいい。それより……方法があるなら教えてくれ」
『刀にエーテルを込め、空間の波長を感じて“斬る”だけだ』
「簡単に言うなよ」
『それと、“空間を斬る”というイメージを明確に持て。お前のGiftは、想像を現実にする力だろう?』
「なるほど……じゃあ、使い方次第では最強じゃん」
『その分、エーテルの消費も尋常じゃないがな。使い過ぎれば自分が消し飛ぶ』
「そりゃ命懸けだな」
『奥の手として覚えろ。それがお前の道を切り開く鍵だ』
「……ありがとう、光牙」
光のように、その声はすっと消えた。
俺は深呼吸してレインのもとに戻る。
「腹でも壊したのか?」
「いや、どうやって出るか考えてた」
「で、答えは出たのか?」
「うん。刀にエーテルを込めて、空間の波長を感じて斬る……そんな感じ」
「ふむ。それで――お前のGiftは?」
「《イマジン》。イメージしたものを現実にする能力」
「そうか。なら合点がいく」
「どういうこと?」
「カゲ、お前のエーテル……人間の領域じゃない。俺が会ったどんなモンスターよりも濃い」
「そんなに?」
「ああ。もし外に出れば、そのエーテルの放出だけで町一つ吹き飛ぶ」
「……え?」
「だからこそだ。お前には“コントロール”が必要になる」
「修行、ってことか?」
「そうだ。エーテルの制御と、次元を斬る技。両方を学べ」
「いいのか? 俺なんかに」
「俺は人間との共存を望んでいる。お前が外でその証明をしてくれれば、それでいい」
「……分かった。やってみる」
「明日から地獄を見るぞ」
「聞こえたけど、優しくしてくれよ?」
「ふっ、加減は考えておこう」
そして夜。
モンスターたちの宴が静かに終わり、
俺の“帰るための修行”が幕を開けようとしていた。




