第83話SP 信じてるー花の想い
ちとせは感じたーー。ふっと浮かんだなつかしさと少しの警戒さ。
それからほんの少し戦士としての鋭さが混じっているーー。
商品棚で品出しして整理していた蒼色よりの白髪の少女がふと振り向いたーー。
ちとせ「やぁ......君、もしかして.....RVカップに出てた.....?」
言葉は静かに、しかし、その瞳はどこか鋭く観察するように細められていたーー。
その問いかけにーーーーー
その男は、ふっと笑って手を振った。
サテラ「そう!サテラだよ~♪そうそう、君ってさ、白いRZ34のちとせだよねー?」
「毎回、うちのエボと戦ってくれたじゃん~☆改めて......よろしくね?」
ちとせは口元に笑みを浮かべた。
その笑みにはなつかしさと、少しの警戒、ほんの少し戦士としての鋭さが混じっていた。
ちとせ「......君の走り覚えているよ。RVの時はヘルメットで出ないといけなかったからね~。まるで水の流れみたいだったね~」
サテラ「うわぁ~君がちとせか~褒められているのかすこしわからないな~」
2人に流れるのはかつて首都高で争った仲。
白いS30Zとエボ7MRで競い合ったトップ争いの二人......。
サテラが先ほどのチラシをちとせに見せた。
サテラ「見なよ~...このチラシ。
黒川くんもいるし~......」
「ほら、あの有名な腹切カナタも出るんだってさ~?」
チラシには大々的に書かれた「APEX杯第4戦シーサイドPK」の文字が。
そしてその中央には紅い戦闘機ーー腹切カナタのTOYOTA86の姿が写っていた。
サテラ「ちとせちゃんも次回から出るんだろ~?」
「君って演出どころか天候すら変えるんだからさ~......」
ちとせ「ふぅーん....ほぉ~ん......なるほど~?」
「......ていうかこの写真、古くない?
もう少しカッコよく写っててもよかったのに~......んもぅ...」
ちとせが肩をぐるぐる回すと冷気が舞う__!
その冷気があたりの床を薄く凍り付かせていく。
サテラ「けど、うちら出るってことはさーー今の中団グループ相当焦ってほしいんだけどね~.....だってこの前RVに移籍したGT3の菜園だっけー?」
「本当に紅い戦闘機を終盤で抜き去ったの~?すっごい雑魚だったよ~??」
ちとせ「菜園君、車の性能はいいんだけど......なんかね。パッとしないよね~。
…勢いだけの炎の塊みたい~......。」
「あの子、本当にカナタ君抜いたのかなーー?
本当に勝ってるようなオーラじゃなかったんだけどな~?」
二人はチラシを見ながらソファーに座り込んでしゃべっている。
思っていたよりも話が面白く進展しそう。
二人はそう思いながらつぶやいてく。
ちとせ「東條くんって......ちょっと頑張ってますアピールなんだよね~...。
でも、生き残れる速さはもっと格上だよ~?」
サテラ「ホントそれな!......なんかよくわかんねーやつだよね?
名前だけで速そうなフリ......なやつ~?」
「......アイツよりうちらの方がはるかに速いし~☆」
ちとせ「あ!でも......伊藤くんは別だよ~?
スイスポでクラス優勝2連覇してるらしいからね〜。
あれこそ本物だよ~♡」
---そして、少しだけ戦いの舞台に戻っていく。
黒川に一つの電話通信が入るーーー。
それは、サテラからだった。
サテラ「あっれ〜黒川くんじゃない~?
ガソリン切れ見てたよー?超ダサい~!」
「......あ!そんなきみには近くにハイオクのボトル満タン分置いといたから使ってね~
…こんなところでポサッとしてたり~
リタイヤしてたら次回のレースうちら出るから容赦しないからね~?
じゃ~ね~☆愛しの黒川くん~☆」
そこで電話が途絶えてしまった---。
いきなりの因縁の相手からの挑発......。
黒川海斗に火が付いた_____!!!!
黒川「誰かと思ったらお前かァァァァァ!!!!!!!!!
サテラァァァァァァ!!!!!次のレース覚悟しとけおらァァァァ!!!!!」
サテラの前にはちとせがいた。二人でチラシの裏を見る。
第5戦大晦日開催の文字が出てきた。
参加者13名のガチンコバトル___!!
福島県双葉町、大熊町、都路村、常葉町、滝根町、船引町、三春町、郡山市の国道が舞台のレースが行われるようだ____!
サテラ「おっ...いいね~......ここで黒川をつぶすぞ~☆もふもふ。」
ちとせ「13人なのもいいじゃ~ん」
そこに一人の少女がスタートラインから帰還した。
山吹花。彼女がドアを開けるとどこか甘く暖かい風が入ってきた。
花「.....ただいまー。あれ?サテラさん?」
ドアを開けた瞬間、空気が微妙に張り詰めているのを感じる。
サテラ「あー...!ども~君はレース、出てないのかい?」
花「私...一回、試合出るの剥奪されちゃったの__。
……前のバトルでレギュレーション違反しちゃって......。」
「でもね、スタートの時は見れたよーー。」
ちとせが静かに花の背中を見つめて伝えた。
ちとせ「花ちゃん__。スタートを見たってことは......まだ夢野中にいるってことだよ~。
降りてない。君、まだ走るチャンスあるんだよ。」
もふッと
ブランケットを差し出すように優しい言葉で花の背中を押した。
サテラが目を細めてニヤリとしながらすこし落ち込んでいるような
虚無感に取り囲まれた花に話しかける。
サテラ「じゃあさ......”次”はちゃんと出るってことでいいんだよね~?」
「あちら側にふさわしい花ちゃんの本気をこの大会でぶちまけちゃおうよ~」
花「もちろん__でも、その前に......」
その瞬間、山吹花に青い電撃が全身纏わりついていく。
バチィ!バチバチバチバチ.....!!
髪が風に舞い、服の裾が静電気でふわっと浮かぶ。
花「ーーーあの二人にばれたからには...そのまま次の試合にはいかせない__!」
目が鋭く細められて指先に青い火花が走る___。
そして、カウンターを両手でドンと突きながら叫ぶように話す。
花「わたしはやりたい!やってみたいの!!!!」
「私ならーーカナタ君と伊藤君...この二人の輪に入れるのは私!!!
あの輪に次には入れるのは私しかいないのッ!!!!!!」
風が吹くーー。
黄と赤の影が遠くに...頭の中にうっすらとでも希望の光のように見えた。
花「ーーそう......信じているからァァァ!!!!!」
「だから__私は道がどれだけ長くても...走りたいの!!!!!」
ちとせが優しく目を一瞬細めてしまうも、すぐに表情を戻して頷きながら声をかけた。
ちとせ「信じてるか......それならもうきっと気持ちや感情は確かに届いてるよ~。
君のその思いが一番の武器だとおじさんは思うんだよね~......。」
花「... 私なら......強くなれる気がした...からさ......。」
どこか遠くを見つめながら、でも目の奥は明らかに静かに内なる青い電撃の情熱で燃えていた。......かすかにでも静かに燃えている......。
ちとせ「うん......きっとなれるよ.....。
その気持ち......ちゃんと伝わっているよーーー。
”私がなる”そう信じるのが本当に強くなる一番の方法なんだよ~」
ちとせのラムネの香りのような吐息が混じりながらも残っていくーーーー。
……そして、ついに腹切カナタ達は3週目に突入した。
中団では攻防戦が繰り広げられていた。
な......なんだと!???
NV100クリッパーの石井が......!!!
Z4古田をオーバーテイクゥゥゥゥ!!!!!!!!!!
2週目終盤でオーバーテイク!
こちらのグループも3週目突入!!!!!!
濱さんのタイヤがパンクしてしまった!????
濱さんリタイヤ!!!!!
濱「まじか......!!!タイヤなんてバーストするんじゃねぇよ......!
さっきまで物凄いやつらと争ってたってのに___!!」




