第52話 お前はお前だ。
柳津はユナの気持ちに寄り添うように話しかけた。
柳津「ユナ。確かにお前は強い。
だが、自分らしさを見つけていかないと続かないんだ。お前のやりたいことなんだ?」
ユナ「......。」
ユナの涙が止まりそっぽを向くように何かを考えていくーー。
頭の中が真っ白というよりグレーになりそうだ。
ユナ「わたしらしくていいの?」
柳津「あたりまえだよ。みんなそのために走っているんだーー。ユナ、自分を信じろ。お前はお前だ.....。」
ユナが涙を拭いていくーー。
自分の記憶になにか上書きされていくーー。
「私がやりたかったこと......?」
「そうだ、ユナ。信じろ。....ユナちゃん?信じて!!!!!」
まるで誰かの意識を取られるかのようにユナの意識に強い風が吹き荒れるーー。
しかし、その風は優しい風だったーー。
「ユナちゃんー...怖くないよ?...私たちがそばにいるから......。」
「誰なの?お姉ちゃん.....?」
「君は昔の私そっくりだね。
大丈夫、信じてーー。私たちとユナちゃんの心は決して揺るがない。諦めない力を持っているから。気を抜いて。自然に動く力に委ねてーー。」
「自然?」
その女の子はだんだん意識から消えていくもうひとつの意識から生まれた風の中へとーー。
そして、ユナが意識を取り戻した。再び、柳津にはもう並べないーー。
むしろ、後退しているわけではない。
さらには希望も感じるーー。
車のボディもレスポンスも自分自身も軽くなったようだーー!!!
ユナ「いける...!!まだスキはある....!!!」
東條「ユナの様子が変わった.....?」
ゾフィア「あの子...やっぱり走るセンスあるわね!」
完全に意識を取り戻したユナは、グングンと風のようにアクセルを踏みつけていくーー。
まるで自分が覚醒したかのように......?
ーー夢野ユナが最下位から這い上がってきましたァァァァァ!!!!
この終盤は激しく心ぶつかり合うドッグファイトになりそうです!!!!!
まさにエーペックスカップッッ!!!!!
ファイター全員に終われば盛大な拍手を全世界のライブの視聴者もお送りくださいィィ!!!!
その前方では、GTR35相川とスイスポ伊藤がドッグファイトを繰り広げていますー!!!
そして、一番人気の選手!!腹切カナタがいよいよ絶対王者NSX吉田に迫って並んできましたアアァァァ!!!!!
カナタ「吉田さん....俺は....俺は......」
吉田「アァ.....わかってるよ。おまえだけの気持ちじゃない」
次回第53話 最終セクションのボクサーエンジンの交響曲
「この試合が最終戦であることをーー」




