第35話 まだ見ぬ景色
田中瑛二の背後から黒い影が接近していた。それは、黒川海斗の黒いエボ9MRだった。
黒川はあっけないかのように田中のFCを抜け去って加速していったーー。
ドギュウウウン
ゴギャアアアン!!
黒川「お先にいいい!!!」
田中「.......速い!今の俺では叶わない、、、!」
黒川海斗速い!!!!さすがクロカラスの帝王ー!!!
低速セクションのヒルクライム!!
やはり有利なのは前方4位を走行している腹切カナタと現在11位ですが、怒涛の追い上げをしている黒川海斗ではないでしょうか!!???
黒川「甘かったな田中。お前のそのテクニックじゃお菓子より甘ったるいぜ....!!」
「......ハラキリカナタアアァァァァ!!!」
ボイスチャットが野蛮な声で飲み込まれていく。
カナタの神経もビクリとしてしまう。
カナタ「アイツ......!!」
黒川「逃げ切れると思うなよオオォォ!
ハラキリカナタアアァァァァァァァ!!!!!!」
その瞬間だった。低速コーナーで大外から黒いマシンが紅いGRカローラを抜き去っていった。そして、柳津の白いM4に近づく......。
柳津「黒川_お前みたいなやつにはここ、どけるわけにはいかねぇんだよ!!!」
ギュアアアアア!!!
M4とエボのミッドシップエンジンが安達太良山周辺地域で鳴り響く。
まるでやまびこのように鳴り響いていく。
さらに前方で伊藤翔太が腹切カナタに追いつき始めてロックオンしてきた__。
伊藤「カナタァ!にがさねぇぞ!」
カナタ「伊藤じゃさすがに吉田さんは難しすぎる。あの絶対王者に勝つのは俺だー!!!」
そこでヘアピンに入り伊藤がずるずると交代していく。
そして、腹切カナタが東條輝の80スープラと並びかける。
東條「まじかよッ!この連続ヘアピンのタイミングで仕掛けるんじゃねぇよ!」
「......それにしてもお前のその攻撃ってワンチャンすぎないか?なんで一発で仕掛けようとするんだ?というかそんなことするやつはじめて見たぞ?」
そして、ヘアピンの加速立ち上がりで猛烈なボクサーエンジンが80スープラを圧倒する!!!
きたあああああああああ!!!
紅い戦闘機が東條の80スープラを捉えているう!!!
1 吉田ノリアキ HONDA NSX NA1
2 相川律 GTR R35
3 腹切カナタ TOYOTA86GT ZENKI (紅いルーキー)
4 東條 輝 80SUPRA
歯を食いしばりながら前方を軽快に走り出す紅い戦闘機を東條は見つめていた。
東條「なんでそんな200馬力のマシンでそこまでいけるんだ!?...しかし、前回はエンジントラブルで終盤だけ肝心なところでミスったが今度はそうはいくかッ!!!」
たとえ紅い戦闘機に抜かれても食いついてくる。
それが東條の赤いスープラだ。
東條「絶対に追いついてやる!腹切カナタァ!スープラ舐めんなよ!お前がそいつを魅せるなら見せてやる!スープラ魂!」
カナタ「それならこっちは86魂だぁぁあ!いくぞ!86魂!!!」
ブオオォォォォン!!!!!
続く低速コーナー。ボクサーエンジンがやまびこになり鳴り響く。
イン側のガードレールの下がいつのまにかだんだんと深くなっていく。
下はもはや緑色のブラックホールのようだった。
辺りも山で森と木々に包まれていた。
この道路もとてつもなく狭いためか追い抜くのが困難だ。
膨らんだらアウト側では土と木の壁に衝突して強くクラッシュしてしまうだろう_。
しかも、カナタが黒い影の気配を感じ取った。
後方では柳津と黒川のバトルが起こっていた。
この狭いヘアピン続きのコースでどのように抜き去っていくのか。
疑問も残るがそれでもカナタはアクセルを緩めることなくアクセルをなにか大切なものを握りしめるかのようにぐぐっと踏みつけていく__。
あれ?そういえば...すこしだけ前より優しく踏めるようになってきたな。
よく振り返ってみれば最初の頃は荒っぽく運転していたな。
あの頃の自分がウソのようだぜ......。
東條をオーバーテイクして山の森の木々に囲まれたトンネルを駆け抜けていく腹切カナタ。
伊藤もすぐ後ろからそれを見届けていた......。
伊藤「カナタ......お前はもっと強くなる__。そのまま東條もバックミラーに映らないくらい飛んでけ。そして、必ずそのうちオレは、お前に追いつく。」
伊藤もそう言うと直噴のターボエンジンの音を奏でながらアクセルペダルを踏みつけた.....。
伊藤「まだ見ぬ景色...お前にはそいつが待っているからさ。オレもさらにそこにいけるようになるよ。東條、お前には負けない。」
伊藤は目の前の東條の80スープラを攻略するため。まだ見ぬ景色を見るためにもっと強く、優しくアクセルを踏み込んだ。
次回 第36話




