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86伝説エーペックス[POWER!!!]  作者: SAI
POWER!!!松島編
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松島編第65話 クソニート

内藤セリナ「クソニートオオオオオオオオ!!!!! お前ェェェェェェ!!!!!

そこのZ33、クソニートだろォォォ!!!!!! 私のR8の前に、そんなZ、安月給(?)のくせにィィィィィィ!!!!!!!!!!」


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若林「あああーーーっと!! 内藤セリナ、制御不能ォォッ!! 膨らんだラインを戻せず、この4台グループの先頭から一気に最後尾へと入れ替わってしまうのかァァァァ!!!! プロの佐藤大河に続き、スーパーカー勢が次々と順位を落としていく信じられない展開だァァッ!!」


内藤セリナ「クソニートオオオオオオオオ!!!!! お前ェェェェェェ!!!!!

そこのZ33、クソニートだろォォォ!!!!!! 私のR8の前に、そんなZ、安月給(?)のくせにィィィィィィ!!!!!!!!!!」


フェルリア「……セリナちゃん、プライドがズタズタですねw でも高村くんがニートかどうかは分かりませんよ! むしろあの落ち着き払ったシフトワークは、酸いも甘いも噛み分けた熟練の……」


若林「実況席まで届くセリナの咆哮!! オレンジ色の空を突き破らんばかりの怒りですが、高村のZ33は全く動じないッ!! バックミラーに映るR8の殺気を受け流し、前を行くミルキークイーンのLC500、そして伊藤翔太のスイスポを虎視眈々と見据えています!!」


ミルキークイーン「あらあら〜……セリナちゃん、あんなに叫んだら喉を痛めてしまうわよ? でも、あのおじ様のZ……本当に無駄のない動きですわね。まるで、このオレンジ色の影の中に溶け込んでいるみたいですわ~……」


高村「(……ニートか。フッ、そう見えても構わんさ。だが、このステージにいる間だけは、俺はただの『ドライバー』だ。……さあ、次はそっち(レクサス)だぞ)」


若林「内藤セリナ、最後尾から再びアクセル全開フミッパ!! 怒りのあまりV10エンジンが悲鳴を上げているッ!! 14位から17位のバトル、オレンジ色の闇が降りるその瞬間まで、一瞬たりとも目が離せないィィッ!!」


石巻の美しい海岸線。

燃え盛るようなオレンジ色の空の下、V10エンジンの咆哮が悲鳴へと変わる。


内藤セリナ「逃がさない……ッ!! あのクソニート、絶対にブチ抜いて……ッ!!」


怒りに視界を曇らせ、限界を超えた「フミッパ」の代償は残酷だった。

次の瞬間、R8のミッドシップが限界を超えてブレイクする。

コントロールを失ったレモン色の巨体は、オレンジ色の光を浴びた岩壁へと吸い込まれていった。


ドガアアアア!!!


耳を突き破るような金属の破壊音。

美しいレモンイエローのボディが岩壁に激突し、無残にひしゃげる。

飛び散るカーボンの破片とフロントライトのガラスが、夕陽を反射して宝石のように美しく、そして悲しく舞った。


若林「アアアア!!! 信じられない光景だァァァッ!! 内藤セリナのR8が、沿岸の岩の壁に正面から激突ゥゥッ!! レモン色の機体が……動かない、、、ッ!! 煙が上がっているゥゥッ!! ゲームオーバー!!! 内藤セリナ、リタイヤーッ!!!!」


フェルリア「……なんてこと。パワーに心が負けてしまいましたね。あの狭い沿岸セクションで、感情に任せたアクセルワークは自害行為です……。幸い、マシンの剛性が彼女を守ったようですが、レースはここまでです……ッ!!」


高村「(……フッ、言わんこっちゃない。峠の神様は、傲慢な走りには手厳しいぞ)」


伊藤翔太「(……うわぁ、凄い音……。セリナちゃん、大丈夫かな……。でも、これで後ろの『脅威』が一つ消えた……ッ!!)」


若林「オレンジ色の闇が深まる中、一人のヒーローが脱落!! 19台となった戦士たちが、沈みゆく太陽を背にさらなる死闘へと突き進むぅぅッ!!」


オレンジ色の空の下、舞い散る火花とフロントガラスの破片が、ゆっくりとアスファルトに降り積もる。

先ほどまで響き渡っていたV10の咆哮は消え、代わりに聞こえるのは、潰れたラジエーターから噴き出す「シュー……」という虚しい蒸気の音だけだった。


内藤セリナ「……あ……、あ……っ……」


エアバッグの白い粉が舞う車内で、セリナは呆然とハンドルを握っていた。

命に別状はない。しかし、あんなに自信満々だった「フミッパ」の誇りは、目の前の岩壁に無惨にひしゃげている。

レモン色のボンネットは無惨に折れ曲がり、左のヘッドライトは虚空を睨んだまま、二度と光を灯すことはない。


若林「……静かです。あまりにも、静かだ。オレンジ色の光に包まれた海岸線に、動かなくなったR8が横たわっています。内藤セリナ、マシンの外へ……今、ふらつきながらも出てきました。怪我はなさそうですが、その瞳からは先程の威勢は消え失せ、ただ自分の愛車の残骸を震えながら見つめています……」


フェルリア「……これが峠の現実。そして、感情に支配されたドライバーの末路です。彼女がバカにしたZ33の高村くんは、一瞬の視線もくれずにコーナーの先へと消えていきました。峠では、止まった者は置いていかれる……ただそれだけなんです……ッ!!」


セリナ「(……私の、私のR8が……。あんな、あんなニートの車に……っ……う、うあぁぁぁぁぁぁぁん!!)」


オレンジ色の空に、一人の少女の悔し涙と号泣が響き渡る。

だが、生き残った19台のマシンたちは、その泣き声を置き去りにして、さらに深く、石巻の闇へと吸い込まれていった。


ドガアアアア!!! ……という凄まじい衝撃音の後、静寂が訪れるはずだった。

だが、その沈黙を破ったのは、およそリタイヤした直後のドライバーとは思えない明るい声だった。


内藤セリナ「冗談だよ? えへへ☆ ちゃんとR8も生きてる☆」


若林「ええぇぇぇーーーッ!? い、生きてる!? 今、岩壁に思い切りガンッ! っていきましたよね!? フロント大破して煙吹いてますよセリナさん!!」


内藤セリナ「さーて、松島観光でもしよーかな? リタイヤもしたし♪ 美味しい牡蠣でも食べて帰ろーっと! ライブ配信のみんなー、セリナは元気だよぉ☆」


フェルリア「……あ、あのメンタルの切り替え速度、もはや恐怖を感じますね。あんなにボロボロになったR8を『生きてる』と言い張り、リタイヤした瞬間に観光モードに突入する……。彼女、ある意味でこのレースで一番の怪物かもしれません……ッ!!」


若林「見てください! 配信画面のコメント欄が、あまりの展開に爆速で流れていくぅぅッ!!」


【86伝説・第6戦 リッジ松島戦 ライブ配信コメント欄】

:は!?!?!?!?

:メンタル強すぎて草

:R8が泣いてるぞwwww

:松島w 今からかよwww

:レモン色の残骸がシュールすぎる

:クソニート連呼してたのは誰だよw

:でも無事でよかったわw

:お嬢様、切り替え早すぎw

:牡蠣食うなwwww

:観光ついでにR8直してこいww


若林「オレンジ色の夕陽をバックに、自撮り棒を取り出してR8の前でピースするセリナ!! 19台の戦士たちは、そのカオスな光景を置き去りにして、いよいよ最終決戦の闇へと突入していくぅぅッ!!」


若林「実況の若林です!! オレンジ色の世界が闇に飲まれる直前、また一人、若き才能が牙を剥いたァァッ!! 17位を走行していた柊蒼真のシビック・タイプR FL5が、猛烈な追い上げで14位グループ三台を射程圏内に捉えたァァァァ!!!!」


フェルリア「……来ましたね、蒼真くん。最新のFL5……その圧倒的な直進安定性と、熟成されたK20Cターボのパワー。オレンジ色の光の中、大きなリアウイングがダウンフォースを稼ぎ出し、まるで路面に吸い付くような速度で距離を詰めています……ッ!!」


伊藤翔太「(……っ! 柊が来たのか、、、。セリナちゃんのR8が消えて一息つけると思ったのに、スイスポの天敵とも言えるアイツが来るなんて……ッ!!)」


高村圭吾「(……シビックか。今のFF(前輪駆動)は、昔のそれとは別物だな。……オレンジ色の影が消える前に、一気に仕掛けてくる気か)」


若林「先頭を走る伊藤翔太、背後に迫る高村、ミルキー、そして柊!! チャンピオンイエロー、シルバー、ブラック、そしてホワイト!! 四色の光が、石巻の沿岸道を数ミリの車間距離で駆け抜けていくぅぅッ!!」


柊蒼真「(……この俺のタイプRは、ただのFFじゃない。このオレンジ色の空の下で、最高のリズムを刻んでみせる。……まずは、レクサスからだッ!!)」


フェルリア「見てください!! 柊くん、コーナーの進入で一切の躊躇がない!! 巨大なブレンボのブレーキが真っ赤に焼けるような熱を帯び、ミルキークイーンのLC500のイン側、わずかな隙間にフロントをねじ込んだァァッ!!」


石巻の沿岸道。空はオレンジから濃い紫へと移ろい、マシンのシルエットは夜の闇に飲み込まれようとしていた。

その境界線で、柊蒼真の白いシビック・タイプRが、前方を走る巨大な「壁」に翻弄されていた。


ミルキークイーン「あらあら〜……。このワイドなボディに勝るものはありませんわ〜……。ボクシングだって、階級が違えば勝負になりませんでしょう? このままゴールまで、淑女の嗜みとして抑えておきますの〜……」


蒼真「(……っ! 何て横幅だ、レクサスッ!! インに鼻先を入れようとしても、あの美しいサイドラインが完璧にボクの視界を塞いでくる。やっぱり強いな、、、、レクサスッ!!)」


若林「信じられない光景だッ!! 最新最強のFFと謳われるタイプR FL5が、ミルキークイーンのLC500を崩せないッ!! フェルリアさん、LCってこんなに峠で速い車でしたっけ!?」


フェルリア「若林さん、実はLC500って、純粋な『スポーツカー』じゃないんですよね、、、実は、、、」


若林「といいますと?」


フェルリア「ラグジュアリーカー……いわゆる高級GTグランドツアラーなんですよ。サーキットのコンマ一秒を削るために生まれたシビックとは、設計思想が根本から違います。LCにあるのは、圧倒的な『余裕』と『安定感』。そのワイドなトレッドと重厚な車体は、こうした狭い峠道では、後続車にとって絶対に崩せない城壁になるんです……ッ!!」


若林「城壁ッ!! ラグジュアリーが牙を剥くということかァァッ!!」


ミルキークイーン「ふふ……、おじ様(高村)も、可愛いスイスポくん(翔太)も。この大きな背中を見ながら、終点までお供してくださるかしら〜?」


若林「ええぇぇぇーーーッ!? 今、実況席に驚愕の通信が入りましたッ!! 15位を走るZ33のドライバー、高村圭吾!! あのいぶし銀の走りと落ち着きから、てっきり熟練のベテランかと思っていましたが……なんと現役の高校生だということが判明しましたァァァァッ!!!」


フェルリア「……嘘でしょ!? あの無駄のないライン取り、タイヤの温存の仕方……。高校生であのレベルに到達しているなんて。道理で、さっきのセリナちゃんの罵倒もどこか聞き流しているように見えたわけです……ッ!!」


高村「おい待て、今おじさんとか言ったよなボクのこと、、、、ボクまだ高校生だし、、、、」


ミルキークイーン「あら〜……。そうなの? でもその落ち着き、到底十代には見えませんわ〜。それなら……『わかおじ(若おじ)』でどうかしら〜……?」


高村「もういい! ボクの走りのどこがおじさん臭いのか、今ここで分からせてやるよッ!!」


若林「高村のZ33がキレたァァッ!! 怒りのシフトダウンと共に、VQエンジンの咆哮が一段と高く、鋭く紫の空に突き刺さる!! ミルキークイーンのLC500、その鉄壁のワイドボディのわずかな『影』に、銀色のノーズが猛烈な勢いで潜り込んでいくぅぅッ!!」


蒼真「(……すごい。高村の動きが急に鋭くなった!? おじさんって言われてそんなに怒るなんて、やっぱりアイツ、ボクと同い年なんだな……ッ!!)」


※柊蒼真は19歳で岡田と同期で

高村の3つ上です。


伊藤翔太「(ひえぇぇ……っ! 後ろがもっと怖くなったよぉ!! おじさんパワーじゃなくて、高校生のキレた走りだァァッ!!)」


若林「高村圭吾、高校生のプライドを懸けた猛追!! ミルキークイーンのラグジュアリー・ブロックを、若き情熱でこじ開けにかかるぅぅッ!!」


若林「ところでフェルリアさん、、、先程、11位を走る岡田くんのGRカローラに対して『4駆のロスが少ない』と言ってましたが、、、あれはどういうことですか? 4駆といえば、むしろ抵抗が大きくてロスが多いイメージがありますが……」


フェルリア「いいところに気づきましたね、若林さん。確かに、伝統的な機械式4WD……例えば黒川くんのエボや花さんのWRXは、強靭なセンターデフや重厚なドライブシャフトを介してパワーを伝えます。それは『最強のトラクション』を生みますが、同時に多くの回転パーツを回すための『機械的損失フリクションロス』と『重量』という代償を払っているんです」


若林「なるほど、力強い分、動かすための無駄なエネルギーも多いと……。では、岡田くんのGRカローラは?」


フェルリア「GRカローラの『GR-FOUR』システムは、電子制御多板クラッチを採用することで、必要な時に、必要な分だけ後輪にパワーを送ります。駆動系全体が非常に軽量で、最新の低摩擦設計が施されている……。つまり、エンジンが発したパワーがタイヤに伝わるまでの『目減り』が、旧世代の4駆に比べて圧倒的に少ないんですッ!!」


若林「パワーを一切無駄にしない、究極のエコならぬ『究極の効率』!! だからこそ岡田くんは、格上の大排気量車相手でも、立ち上がりで一歩も引かない鋭い加速を見せているわけですねッ!!」


岡田大成「(……そうさ。この車は、ただのハッチバックじゃない。世界を転戦するラリーカーの血を引く、効率のバケモノだ。……前の三つ巴(8〜10位争い)、まとめてこの『ロスなき加速』で飲み込んでやるッ!!)」


フェルリア「紫の闇の中、無駄な熱を排さないGRカローラのインタークーラーが、冷たい石巻の風を吸い込んでさらにパワーを増しています……。岡田くんの『戦国時代』、いよいよ本番ですよ……ッ!!」


石巻の沿岸セクション。紫色の闇が路面を覆い、ヘッドライトの光がアスファルトの凹凸を不気味に浮かび上がらせる。

14位の伊藤翔太が駆るチャンピオンイエローのスイスポが、前方のテールランプに必死に食らいつく。


伊藤「クッ……!! 追い抜けないのか、、、ッ!?? コーナーの進入、ブレーキングでは確実に俺の方が速い……。なのにッ!!」


コーナーの出口、イン側を完璧に捉えたと思った瞬間、前方のマシンが再び「紫色の閃光」となって遠ざかる。


伊藤「食いついたと思ったら、、、また離れていく、、、ッ!! 俺の1.4Lターボじゃ、あの『伸び』には勝てないっていうのか……ッ!!? いや、ふざけんな……ここで離されたら、俺は一生あの背中を拝むだけになっちまうッ!!」


若林「実況の若林です!! 14位の伊藤翔太、もどかしい展開だァァッ!! コーナーで鼻先を並べるまで肉薄しながら、ストレートに出た瞬間に13位・佐藤ジュンのFD3Sに突き放される!! まさに『猫と鼠』の追いかけっこだァァッ!!」


フェルリア「……これが『パワーウェイトレシオ』と『空力』の残酷な現実ですね。翔太くんのスイスポは1トンを切る軽さでコーナーは無敵ですが、高速域に入ると絶対的な馬力が足りない。対する佐藤ジュンちゃんのFD3Sは伝説の13Bロータリー。翔太くん、ギアを一段下げて、エンジンの悲鳴を無視して踏み込み続けています……ッ!!」


伊藤「(……俺は、ここで終わるわけにはいかないんだ。カナタたちが前を走ってる……アイツらの隣に並ぶには、こんなところで足踏みしてる暇はねぇんだよッ!!)」


若林「スイスポが唸るッ!! 限界を超えたブースト圧!! 伊藤翔太、1.4Lの限界を超えて、ロータリーの咆哮に食らいつくぅぅッ!!」

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