松島編第64話 動き出したレース
若林「おっと!! 8位グループ3台がコーナーの連続する石巻鮎川で入り乱れてきたぞォォ!!!! オレンジ色に染まった路面の上、ポルシェ、M3、M4が、まるで一列の鎖のように繋がってヘアピンを駆け抜けるぅぅッ!!」
フェルリア「……ここからは一瞬の判断ミスが命取りです。8位の芽衣さんはPDKの変速を武器に最短ラインを。9位の加奈子さんはセダンの『幅』を活かした鉄壁の守り。そして10位の柳津くんは、DTM譲りの空力で二台の背後にピタリと張り付いています……ッ!!」
加奈子「(……しつこいわねッ! ポルシェの加速も、最新Mのトルクも……このセダンの懐に入らせるもんですかッ!!)」
加奈子のE46 M3が、タイヤスモークをオレンジ色の光の中にぶち撒けながら、コーナーの入り口を完全に塞ぐ。
芽衣「(加奈子さん……その壁、私のPDKでブチ抜かせてもらうよッ!! ステップ……じゃなくて、ストップ&ゴーの真髄、見せてあげる……ッ!!)」
キュウゥゥッ!! とブレーキが鳴き、ポルシェのノーズが加奈子のリアフェンダー数ミリの位置まで沈み込む。
柳津「(……二人とも、そこだッ!! 争ってラインが膨らんだ瞬間、このM4がまとめて串刺しにしてやるッ!!)」
若林「そして! 動き出したレースのど真ん中にいるのは、やはりこの車ァァァァッ!!!! 5位へと後退していた赤い戦闘機・トヨタ86が、佐藤大河のC8に対しサイドバイサイドォォォ!!!!!」
フェルリア「……カナタくん! 先程の失速で終わったかと思いましたが、下りに入った瞬間に息を吹き返しましたね。タイヤの限界を見極め、路面の僅かな傾斜を利用してコーナリングスピードを稼いでいます……ッ!!」
佐藤大河「(……またこの狭い区間で、あえて外から並んでくるのか、、、ッ!! 黒川のような暴力的な幅寄せじゃない……だが、逃げ場を完璧に奪う精密なライン。頭おかしいんじゃねェのか、、、、、!????)」
コルベットの右側面には、黒川にぶつけられた生々しい傷跡が刻まれている。
その傷跡をなぞるように、カナタの86がミリ単位の距離まで接近し、オレンジ色の夕陽を二台で切り裂いていく。
カナタ「(……佐藤。お前の走りは尊敬している。……でも、悪ィがここは遠ざけて貰うしかないな、、、、ッ!! これ以上、あの狂犬を美保に近づけさせるわけにはいかないんだ……ッ!!)」
若林「カナタ、アウト側のガードレールスレスレを滑走!! タイヤから放たれるスキール音が、オレンジ色の背景に溶け込んでいくッ!! 立ち上がり、NAのレスポンスを最大限に活かし、大排気量のC8を外から封じ込めにかかるぅぅッ!!」
フェルリア「……侍の抜刀ですね。一瞬の隙、そこだけを突く鋭い加速。大河くんのコルベットは、ダメージによる空力変化で踏ん張りが効かない……。カナタくんはそこを確実に見抜いています……ッ!!」
若林「いったァァァァーーーーッ!! 信じられないッ!! 外側はもはや道ではない、崖の縁だッ!! そこに赤い戦闘機が翼をねじ込んだァァァァ!!!!!」
フェルリア「……凄まじい。カナタくん、あえてアウト側のバンク(傾斜)を利用して、遠心力を加速に変えましたね。NAの86が、排気量で勝るコルベットを外側から捲り上げるなんて……理論を超越した『執念』の走りです……ッ!!」
佐藤大河「(……外側から被せて、俺の逃げ道をミリ単位で削り取っていきやがる……。クソッ、これが腹切カナタ……『赤い戦闘機』の真実かよッ!!)」
バキィッ!! と、86のリアフェンダーがガードレールを掠め、オレンジ色の火花が飛び散る。
だがカナタは眉一つ動かさず、アクセルをさらに踏み抜いた。
カナタ「(悪いな、佐藤。……俺には、立ち止まっている時間は一秒もないんだ。あの狂犬(黒川)が美保に触れる前に……俺がその牙を叩き折るッ!!)」
若林「抜いたァァッ!! 5位・腹切カナタ、佐藤大河をアウトから鮮やかにパス!! だが彼の進撃は止まらないッ!! 前方、3位の山吹花、4位のサテラをまとめて射程圏内に捉えたァァッ!!」
フェルリア「見てください、あの86の挙動を。オレンジ色の夕陽を背負って走る姿は、まるで戦場を翔ける本物の戦闘機です。中速コーナーでの屈辱を燃料に変えて、今、この峠で一番熱く燃え上がっています……ッ!!」
山吹花「(……来たね、カナタくん。その殺気……人をを守りたいっていう、君の『騎士道』だね……ッ!!)」
若林「おっとォォォ!! カナタの快進撃を止めるのは、プロの佐藤大河ではなく身内のライバルかァァッ!? 腹切カナタのトヨタ86に、、、、サテラのシルバーに輝くエボVII MRが、死神のような速度で迫るゥゥゥゥゥ!!!!」
フェルリア「……サテラさん、 彼、ずっと黒川くんの背後で機を伺っていましたね。三菱が誇るMRの称号……軽量化され、レスポンスを極限まで高めたエボVIIが、このオレンジ色の闇の中で本領を発揮し始めました……ッ!!」
サテラ「(……カナタくん、凄いよ。さっきのオーバーテイク、ボクも見惚れちゃった。……でも、ボクのエボはもっと速いよ。悪いけど、ここからはボクのラインだッ!!)」
若林「オレンジ色の背景の中、86とエボVIIの排気音が重なり合う!! カナタがインを閉めれば、サテラは即座にラインをアウトに振り、エボ特有のACDを駆使して、強引に鼻先をねじ込みにかかるぅぅッ!!」
カナタ「(……っ! サテラのプレッシャー……黒川のような『凶器』じゃない。だが、剃刀のような鋭さで俺のラインを正確に削り取ってくる……ッ!! エボVII MR……なんてレスポンスだ……ッ!!)」
フェルリア「……危険な接近戦です。86が軽快なハンドリングでいなそうとすれば、エボは四輪のトラクションでそれを力ずくで抑え込む。オレンジ色の残光の中で、二台の影が一つに重なり合うほどの間隔だァァッ!!」
若林「サテラ、ヘアピンの進入で86のサイドに並んだァァッ!! カナタ、この猛追を凌ぎきれるかァァッ!?」
石巻・鮎川のワインディング。
燃えるようなオレンジ色の夕陽がフロントガラスに反射し、一瞬、ドライバーたちの視界を奪う。
その光の隙間、影が最も長く伸びる瞬間を、カナタは見逃さなかった。
サテラ「(……もらったッ! コーナー進入、ボクのエボのラインが完璧にハチロクを封じ……)」
カナタ「ク、、、ッ!! いける、、、ッ!!」
サテラ「、、、、!? 86がいない、、、!? どこに行ったんだよッ!!?」
サテラのバックミラーから、赤い機体が忽然と消える。
オレンジ色の残光の中に溶け込んだかのような錯覚。
だが次の瞬間、エボVIIのサイドミラーに、鋭い眼光を放つ赤い戦闘機が「真横」に並んでいた。
若林「きたきたきたァァァァ!!!! 信じられないッ!! 赤い戦闘機がブレーキを一瞬早く解放、ラインを外から内へ急激に切り替えて、そのままサテラのインを刺したァァァァ!!!!」
フェルリア「……消える魔球ならぬ、消える86(ハチロク)ですね……! サテラくんの死角に潜り込み、相手がラインを絞る瞬間に、その逆を突く。オレンジ色の光を逆手に取った、カナタくんの『戦術』勝ちです……ッ!!」
サテラ「ちょ……っ! カナタ、お前……ッ!! ふん、ちょっと良いラインを見つけたからって、調子に乗るんじゃないよッ!! まだ終わってないんだからねッ!!」
若林「サテラ、ツンデレ気味な叫びを上げながらも必死の立て直し!! だが赤い戦闘機はすでにコーナーの出口を捉え、1位・美保を襲う『狂犬』の背中へと全開加速を開始したァァッ!!」
若林「実況の若林です!! トップ集団、いよいよ狂気が加速しています!! 2位の黒川に対し、5位へ後退したサテラが無線、あるいは並走時の怒声で挑発を開始したァァァッ!!」
サテラ「ね? 黒川くんもー☆」
黒川「んだとォォォ!!? おめぇ、ハチロクに抜かれた分際で俺に指図すんじゃねぇぞォッ!!」
サテラ「あれあれまだ怒ってるの〜? 黒川くんもう少しで1位になれそうじゃーん☆ ほらほら、美保ちゃんのR33が目の前だよ? 頑張って捕まえないと『狂犬』の名が泣いちゃうよぉ〜?」
黒川「上等だァサテラァァァァ!!!! 1位(美保)も、おめぇもだ!! ゴールまでじっくり料理してやるからなァァァァ!!!!! 跡形も残らねぇくらいにブチ砕いてやるッ!!」
フェルリア「……ひえぇ、黒川くんの血圧が心配になるレベルのブチギレ方ですね……。ですが、サテラくんの挑発で黒川くんのアクセルがさらに踏み込まれました!! オレンジ色の夕闇の中、黒いエボIXが猛烈なバックタービン音を響かせて、1位・美保のR33を飲み込もうとしています……ッ!!」
若林「サテラ、おどけた態度とは裏腹に、黒川の背後にピタリと張り付いている!! これも彼の戦術かッ!? 狂犬を焚き付け、自分もそのスリップストリームを利用して一気に上位を狙う……オレンジ色の空の下、三菱の二台が共食い寸前のデッドヒートだァァッ!!」
美保「(……っ、後ろから黒川くんの怒号が聞こえてくる……怖い。でも、お兄ちゃんのR33が、負けるなって言ってる気がする……ッ!!)」
【石巻・鮎川セクション・全20台ランキング】
1位:相川 美保(R33 GT-R V-spec)
→ 1位。オレンジ色の残光の中、黒川の殺気を背中に感じて必死の逃走。
2位:黒川 海斗(EVO IX MR)
→ 2位。サテラへの怒りを燃料に変え、美保を撃墜すべくフルブースト。
3位:山吹 花(WRX STI VAB)
4位:腹切 カナタ(TOYOTA 86 NA)
5位:サテラ(EVO VII MR)
→ 5位。黒川をからかいながら、ちゃっかり上位陣に食らいつく。
6位:佐藤 大河(Corvette C8)
7位:小岩 イオリ(Ferrari 812 Superfast)
8位:山吹 芽衣(Porsche 911 Carrera GTS)
9位:古賀 加奈子(BMW M3 E46)
10位:柳津 雄介(BMW M4 DTM)
11位:岡田 大成(GR Corolla)
12位:霧山 トオル(Veneno)
13位:佐藤 ジュン(RX-7 FD3S)
14位:伊藤 翔太 (Swift Sport ZC33S)
15位:内藤 セリナ(Audi R8 V10)
16位:ミルキークイーン (Lexus LC500)
17位:高村 圭吾 (Z33)
18位:柊 蒼真(Civic Type R FL5)
19位:川村 修一 (K-Works)
20位:湯川 サトル (S2000)
若林「さあ、後方も熱いッ!! 14位から17位、このオレンジ色の背景の中で四台のマシンが火花を散らすゥゥッ!! 先行する伊藤翔太のスイスポを追い、内藤セリナ、ミルキークイーン、そして背後から音もなく忍び寄っていた高村圭吾のZ33が、ついに二台のスーパーカーに張り付いたァァァァ!!!!」
フェルリア「……高村くん、渋い走りですね。最新の電子制御に頼らず、熟成されたVQエンジンのトルクとFR(後輪駆動)の旋回性能だけで、格上のR8やLC500を追い詰めている……。このオレンジ色の光の中、銀色のZ33のボディがまるで鋼鉄の刃のように見えます……ッ!!」
ミルキークイーン「あらあら〜……。私のLC、少しおっとりしすぎていたかしら。Z33なのにやりますわね〜……。その古い車に宿った『魂』、嫌いじゃないわよ?」
内藤セリナ「えへへ☆ 何が来たのか知らないけど、私のフミッパには誰にも負けないわよッ!! このままV10エンジン全開で、オレンジ色の地平線まで突っ走っちゃうんだからッ!!」
若林「内藤セリナ、アクセル全開でR8を加速させるッ!! だが高村のZ33は離れない!! コーナーの進入、重たいLCとR8がブレーキで苦しむ一瞬の隙、高村がその『重厚な走り』で二台の間に割って入ろうとしているぅぅッ!!」
伊藤翔太「(……っ、後ろが騒がしくなってきたな……。セリナちゃんのR8だけじゃない、あのZ33……ただ者じゃないぞ。ボクのスイスポ、このまま逃げ切れるか……ッ!?)」
若林「さあ、低速コーナー進入!! ブレーキング勝負だァァァッ!!!! ああっとォォォ!! 先行する内藤セリナのR8、姿勢を崩してラインが大きく膨らんでいくゥゥゥッ!!!」
フェルリア「……やはりコーナーの多いこの区間だと、R8は大排気量V10のパワーを持て余しますね。セリナちゃんの『フミッパ』が、逆にフロントタイヤのキャパシティを奪ってしまったようです……。対して、背後の高村くん。彼はこの区間まで、牙を隠してパワーやタイヤを温存していたのでしょう……ッ!!」
内藤セリナ「えへへ……☆ ちょっと欲張りすぎちゃったかな!? R8、止まってぇぇぇッ!!」
オレンジ色の背景の中、白煙を上げながらアウト側に孕んでいくR8。
その空いたイン側に、吸い込まれるように銀色の閃光が飛び込む。
高村圭吾のZ33だ。
高村「(……焦るな。若さは武器だが、この峠の闇は経験を味方にする。……ここだッ!!)」
VQ35エンジンの野太い咆哮と共に、Z33がイン側の縁石をミリ単位で掠めていく。
パワーを無駄なく路面に伝え、滑らかな放物線を描いてR8を鮮やかに抜き去った。
ミルキークイーン「あらあら〜……。セリナちゃん、あんなに隙を見せたら、あのおじ様は見逃してくれないわよ……?」
若林「いったァァァァ!!!! 高村圭吾、絶妙なブレーキングから内藤セリナをパス!! 15位浮上ッ!! オレンジ色の残光の中、老兵Z33がスーパーカーたちを次々と背後に沈めていくぅぅッ!!」
若林「あああーーーっと!! 内藤セリナ、制御不能ォォッ!! 膨らんだラインを戻せず、この4台グループの先頭から一気に最後尾へと入れ替わってしまうのかァァァァ!!!! プロの佐藤大河に続き、スーパーカー勢が次々と順位を落としていく信じられない展開だァァッ!!」
内藤セリナ「クソニートがァァァァァア!!!!! クソニートオオオオオ!!!!!!
お前ェェ! そこのZ33、クソニートだろォォォ!!!!!! 私のR8の前に、そんな安月給(?)の車で入り込まないでよォォォッ!!」
フェルリア「……セリナちゃん、プライドがズタズタですねw でも高村くんがニートかどうかは分かりませんよ! むしろあの落ち着き払ったシフトワークは、酸いも甘いも噛み分けた熟練の……」
若林「実況席まで届くセリナの咆哮!! オレンジ色の空を突き破らんばかりの怒りですが、高村のZ33は全く動じないッ!! バックミラーに映るR8の殺気を受け流し、前を行くミルキークイーンのLC500、そして伊藤翔太のスイスポを虎視眈々と見据えています!!」
ミルキークイーン「あらあら〜……セリナちゃん、あんなに叫んだら喉を痛めてしまうわよ? でも、あのおじ様のZ……本当に無駄のない動きですわね。まるで、このオレンジ色の影の中に溶け込んでいるみたい……」
高村「(……ニートか。フッ、そう見えても構わんさ。だが、この峠にいる間だけは、俺はただの『ドライバー』だ。……さあ、次はそっち(レクサス)だぞ)」
若林「内藤セリナ、最後尾から再びアクセル全開!! 怒りのあまりV10エンジンが悲鳴を上げているッ!! 14位から17位のバトル、オレンジ色の闇が降りるその瞬間まで、一瞬たりとも目が離せないィィッ!!」




