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86伝説エーペックス[POWER!!!]  作者: SAI
POWER!!!松島編
352/364

松島編第60話 深海の槍と氷岩の盾

イオリ「……美保ちゃんも食らってみる? 私の氷岩..........」


相川美保「......ッ!!」


total320

松島編完結まであと28話!

その瞬間、石巻の市街地に立ち込めていた熱気が、一瞬にして凍りついた。

イオリのフェラーリ812から放たれる、亜麻色の冷徹なプレッシャー。

それは美保のR33を包み込み、タイヤの摩擦熱さえも奪い去る。


若林「あぁっとォォ!! またしても出たァァッ!! 小岩イオリの『氷岩』ッ!! 今度はターゲットを2位の相川美保にロックオン!! 蒼い閃光を放っていた美保のGT-Rが、まるで極寒の海に放り込まれたかのように急激に速度を落としていくぅぅッ!!」


美保「(……っ! これが、黒川のおじさんを止めた力……。ハンドルが、アクセルが……石みたいに重い……ッ!! まるで車全体が凍りついたみたいに動かないよ……ッ!!)」


イオリ「……ごめんね、美保ちゃん。でも、1位の景色は誰にも渡さない。このまま静かに、私の後ろで眠っていて…….。....美保ちゃんも食らってみる? 私の氷岩を..........ッ」


相川美保「......ッ!!」


フェルリア「……イオリさん、容赦ありませんね。美保ちゃんのRB26が上げる咆哮さえも、氷の壁に跳ね返されて消えていく。美保ちゃんの『青い熱』が、イオリさんの『亜麻色の氷』に飲み込まれようとしています!!」


若林「美保、失速!! 1位・イオリとの距離が、一気に開いていく!! だが、美保の瞳はまだ死んでいない!! 氷の檻の中で、蒼き鳥が必死に翼を羽ばたかせようとしているぅぅッ!!」


イオリ「……元から33は失速してたもの。美保ちゃん、このテクニカルセクターで、私のフェラーリを超えられるとでも思っているの……?」


冷たく、透き通るようなイオリの声が夜の風に乗って美保の耳に届く。

フェラーリ812スーパーファストの放つ圧倒的なダウンフォースと、緻密に計算された旋回性能。対するR33は、その「重さ」と「旧世代の電子制御」に苦しめられていた。


若林「イオリの指摘は冷酷だァァッ!! 確かにこの市街地第2セクター、R33の巨体はコーナリングの度にわずかな遅れを生んでいる!! そこへ追い打ちをかけるような『氷岩』のプレッシャー!! 美保、万事休すかァァッ!!」


フェルリア「……残酷な事実ですね。イオリさんのフェラーリは最新の空力デバイスで路面に吸い付いている。美保ちゃんのR33が『深海のジャベリン』で一瞬の隙を突こうとしても、その隙間ラインさえもイオリさんの氷によって凍結され、塞がれてしまっています……」


美保「(……っ! 私の33が重いなんて、そんなの分かってる……。イオリちゃんのフェラーリが、私より何十年も先の技術で作られてることも……ッ!!)」


美保の細い指が、ステアリングを白くなるほど強く握りしめる。

目の前には、亜麻色の霧を纏いながら、微塵の揺らぎもなくコーナーを抜けていくイオリの背中。


イオリ「……さようなら、美保ちゃん。貴方の情熱あつさだけでは、この氷の壁は溶かせないわ」


若林「イオリ、アクセル全開!! 氷岩の結界をさらに強固にし、美保を完全に引き離しにかかる!! 蒼いR33が、凍てつく闇の中に置き去りにされていくぅぅッ!!!」


石巻の市街地から放たれる熱狂は、衛星を通じて全世界へとリアルタイムで配信されていた。

数百万人が見守る画面の向こう側――。

暗い部屋で、アイスシルバーのトヨタ86のキーを握りしめ、食い入るように画面を見つめる少女がいた。


夢野ユナ。腹切カナタの同級生であり、かつて同じアスファルトの上で火花を散らした戦友。


ユナ「……カナタくん、走っている……」


画面の中では、小岩イオリの「氷岩」が、相川美保の「深海のジャベリン」を飲み込もうとしていた。

そして、その絶望的な頂上決戦の遥か後方で、ボロボロになりながらも、一歩も引かずに牙を研ぎ続ける一台の赤い86。


ユナ「(あの頃より……ずっと、重いものを背負ってる。でも、その瞳は……あの時と同じだね)」


かつて隣の席で笑っていた少年の、あまりに過酷で、あまりに美しい戦い。

ユナの指が、スマホの画面に映る小さな86をなぞる。


若林「さあ、全セクターを網羅するドローンカメラが、トップ3の『静寂の戦い』を捉え続ける!! だが、視聴者たちが最も注目しているのは、8位から虎視眈々と『奇跡』を狙う男、腹切カナタだァァッ!!」


フェルリア「……配信のチャット欄も、カナタくんへの声援で埋め尽くされていますね。夢野ユナさんも、きっとその中の一人なのでしょう。彼が走る理由は、もう自分一人のためではない……!!」


カナタ「(……誰かが見てる。そんな気がする……。だったら、無様な走りは見せられねぇよなッ!!)」


ユナ「……私も、変わるために、、、走ろう、、、ッ。カナタくん達が走っている、、、、ッ!!」


暗い部屋に、ユナの震える、けれど力強い決意が響いた。

彼女は机の上に置かれたアイスシルバーの86のキーを強く握りしめる。

画面の中では、カナタが強大なライバルたちの背中を追い、限界を超えたコーナリングを見せていた。

その熱が、ネットワークを越えてユナの心に火を点ける。


ユナ「(待ってて、カナタくん。私も、自分の弱さを振り切って……もう一度、風になるから)」


ライブ配信のコメント欄には、世界中から届く無数のエールが流れていく。

その中に一つ、誰にも気づかれないほど小さな、けれど確かな祈りが混ざった。


若林「おぉっと、見てください!! 8位の腹切カナタ、ここに来てさらに集中力が研ぎ澄まされているぅぅッ!! まるで遠く離れた戦友から力を分け与えられたかのような、迷いのないライン取り!! 柳津のM4を抜き去り、ついに7位へ浮上だぁぁッ!!」


フェルリア「……不思議ですね。カナタくんの走りに、一点の曇りもなくなりました。誰かの『想い』が、彼の86を押し上げている……そんな気がしてなりません」


イオリ「(……何かしら、この感覚。私の『氷岩』を溶かそうとする、新しい熱が……遠くから届いている……?)」


美保「(イオリちゃん、私も負けない……!

誰かが応援してくれてる。私には分かるんだからッ!!)」


石巻の市街地。亜麻色の氷と、蒼い深海、そして赤い闘志が、交差点の影で激しく火花を散らす。


若林「さあ! レースに戻ります!! うおっと! 7位の腹切カナタが、6位・古賀加奈子のM3にピタリと張り付いているゥゥゥゥ!!!! 86のフロントノーズが、赤いM3のリアを突っつかんばかりの超接近戦だァァッ!!」


フェルリア「……驚きました。E46型のM3、設計は二世代前のはずですが、加奈子さんのスキルがあの車を最新マシンと同等の領域に吸い付かせている……ッ!! 赤いM3のボディが、傾き始めた夕焼けを反射して美しく輝いていますね……ッ!!!」


若林「スタート時の13時には高く昇っていた太陽も、今は15時半……!! 街全体がオレンジ色に染まる中、影を長く引き連れた二台のマシンが、石巻の路地を猛スピードで駆け抜けていくぅぅッ!!」


古賀加奈子「(……いい走りね、腹切カナタ。私のM3をここまで追い詰めるなんて。でも、この『赤い残光』を捕まえるのは、そう簡単じゃないわよ……ッ!!)」


カナタ「(西日が眩しい……! でも、あのM3の挙動はハッキリ見える。加奈子さんのライン取り……隙がないけど、コーナーの立ち上がりなら……!!)」


若林「カナタ、夕闇が迫る街中で勝機を狙う!! M3の直列6気筒が咆哮し、86のボクサーエンジンがそれを追走する!! 石巻市街地、黄昏のデュエルが加速するぅぅッ!!」


若林「2台のBMWに挟まれるトヨタ86GT!! 前には赤い残光・古賀加奈子のE46 M3! 後ろには虎視眈々と順位を狙い返す柳津雄介のM4 DTM!! 86対Mシリーズ2台の対決から目を離すなァァァ!!!」


フェルリア「……これは厳しい。BMWのMシリーズは、サーキットで培われた『走る、曲がる、止まる』の究極体です。特にこの石巻の市街地、加速と減速が繰り返される区間では、大排気量のトルクを持つM軍団が圧倒的に有利……ッ!!」


柳津「……ハラキリ、いい走りだがそこまでだ。最新のDTM直系テクノロジーを積んだ俺のM4が、再びお前を飲み込ませてもらうッ!!」


カナタ「(クッ……! バックミラーがM4のキドニーグリルで埋まってる……。前には加奈子さんの完璧なブロックライン。左右はコンクリートの壁。逃げ場がない……ッ!!)」


若林「西日が石巻のビル影を作り出し、路面は明暗が激しく入れ替わる! 加奈子のM3が放つ赤い輝きが、逆光の中でカナタの視界を眩ませる!! 柳津のM4が、わずかな隙を突いてカナタのサイドに鼻先をねじ込もうとするぅぅッ!!」


古賀加奈子「(来なさい、腹切カナタ。私たちのMエムが、ただのブランドじゃないことを、その86に刻み込んであげる……ッ!!)」


若林「挟撃の86!! 1.4キロのストレートを生き残った男に、今度はドイツの猛獣たちが牙を剥くッ!! カナタ、このサンドイッチをどう食い破るつもりだァァッ!!」


若林「おおっとォォォ!??? 信じられないことが起きましたァァァ!!!!! 鉄壁のガードを誇っていた古賀加奈子の赤いM3に対し、腹切カナタの『赤い戦闘機』がコーナー出口の立ち上がりで強引に鼻先をねじ込み、今まさに横へと並びましたァァァ!!!!!」


フェルリア「……速いッ!! 今の第4コーナー、カナタくんはブレーキを一切残さず、86のフロント荷重だけで車体を無理やり曲げ切りました……! まるで慣性を味方につけたような、重力を無視した旋回加速です!!」


加奈子「ウソでしょ、、、ッ!? カナタくん速すぎない、、、、、、ッ!!?? 私のM3が、立ち上がりで引き離されるなんて……ッ!!」


加奈子の視界、すぐ左側に並ぶ赤い86の影。

夕焼けを反射して赤黒く輝くその機体は、まさに低空を這う「戦闘機」そのもの。

カナタの瞳は、逆光の中でも一点の曇りもなく、M3のわずかなラインの乱れを射抜いていた。


若林「柳津のM4を置き去りにし、加奈子のM3とサイドバイサイド!! 排気量の差を、軽量ボディの旋回スピードだけで完全に補填してみせたぁぁッ!! 夕闇迫る石巻のストレートエンド、制するのはドイツの魂か、日本の若き翼かァァッ!!」


カナタ「(……届く。ユナ……見ててくれ。この86は、まだ速くなれるんだッ!!)」


イオリ「……ッ!!! しまった……! タイヤのグリップが途切れて……。嘘よ、私の計算ではまだ保つはずなのに、磨耗が想像以上に進んでいる……ッ!!!」


若林「あぁっとォォォ!! 何が起きたんだぁぁッ!! 独走を続けていた小岩イオリの812スーパーファスト、直角コーナーの立ち上がりでリヤが激しく流れたァァ!! 氷岩こおりいわに、ついに決定的な亀裂が入ったぁぁッ!!」


フェルリア「あー、、、ミッドシップ(的な高出力車)ですから、、、やっちゃいましたね、、、。この手のスーパーカーはスピードが伸びやすい反面、限界を超えるとスピンしやすいのがね……。特にフェラーリのV12パワーをこの狭い市街地で使いすぎたツケが、一気にリアタイヤに来ましたね……ッ!!」


若林「女王の失速を見逃す猛獣たちではないッ!! 相川美保! 佐藤大河! そして黒川海斗!! この3台が、一瞬でイオリを飲み込みにかかるぅぅッ!!」


美保「イオリちゃん、ごめんッ!! 私のR33は……重い分、タイヤの使い方は分かってるんだからッ!!」


佐藤大河「ふん……。精密すぎる機械は、一度狂えば脆いものだな。公道の主役は、俺のコルベットだッ!!」


黒川「ヒャッハァァァ!! 氷が溶けちまったなぁ、お嬢ちゃんよォォ!! どけぇッ!!」


若林「小岩イオリの812スーパーファスト、なんと後方3台に一気に抜かれるゥゥゥゥ!!!! 1位から4位へ、一気に転落だぁぁッ!!!」


1位:相川 美保(R33 GT-R V-spec) ↑

  → 1位奪取! 「深海のジャベリン」が女王を貫き、ついにトップへ。

2位:佐藤 大河(Corvette C8) ↑

  → 2位浮上。V8の圧倒的トルクで美保の背中を捉える。

3位:黒川 海斗(EVO IX MR) ↑

  → 3位浮上。暴走族の執念で、イオリの失速を嘲笑いながらパス。

4位:小岩 イオリ(Ferrari 812 Superfast) ↓↓↓

  → 4位後退。タイヤの磨耗により「氷岩」が崩壊。屈辱の転落。

5位:サテラ(EVO VII MR)

6位:腹切 カナタ(TOYOTA 86 NA)

  → 6位。前方の異変を察知。「チャンスが来た……ッ!!」

7位:古賀 加奈子(BMW M3 E46)

8位:柳津 雄介(BMW M4 DTM)

9位:山吹 芽衣(Porsche 911 Carrera GTS)

10位:霧山 トオル(Veneno)

11位:山吹 花(WRX STI VAB)

12位:内藤(Audi R8 V10)

13位:佐藤 ジュン(RX-7 FD3S)

14位:ミルキークイーン (Lexus LC500)

15位:伊藤 翔太 (Swift Sport ZC33S)

16位:高村 圭吾 (Z33)

17位:柊 蒼真(Civic Type R FL5)

18位:岡田 大成(GR Corolla)

19位:川村 修一 (K-Works)

20位:湯川 サトル (S2000)

次回 侍の危険な匂い

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