松島編第58話 石巻ストレート
黒川「バブーおかあちゃ〜...☆
そこにスバルあるじゃんおかあちゃの車〜☆☆ 仲間がいっぱいいて心強いねぇ、おかあちゃ〜♫」
花「......またそれかァァァァァァ!!!!!
そんなことでいちいち走行中にちょっかい出すなやァァァ!!!!!!」
黒川「はいはい、おかあちゃはどうせスバルなんだよね〜。永遠の宿敵、インプの山とランエボの里、どっちがいいの? おかあちゃ。僕は断然、エボの里派なんだけどさぁ〜☆」
花「黙れやァァァァァァッッ!!!! 誰がおかあちゃんだアア!!
そのふざけたエボのリアウィング、今すぐ叩き折ってやるからそこを動くなァァァッ!!」
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若林「コースは東松島バイパスを終えて東へ、レーサー達が一斉にターン!!!! レースは半分を既に終えて、東松島市と...石巻市の産業道路を結ぶ1.4キロの超ロングストレート!
その名は『石巻ストレート』!!! 別名『産業ストレート』とも言われているこの場所では、ハイパワーカー達が圧倒的な暴力で前に出ていくことでしょう、、、、ッ!!!」
フェルリア「……1.4キロ。この距離は、小細工が通用しません。純粋なエンジンパワー、空力、そして最高速性能だけが物を言う『処刑台』です。カナタくんにとっては、このレース最大の試練となるでしょう」
佐藤大河「聞いたかハラキリ...ここは俺のコルベットのためのステージだッ!! 700馬力のV8が、水を得た魚のように吠えてやがるな......ッ!!!」
カナタ「……クッ! 1.4キロも……!? さっきまでの倍以上の長さかよ……ッ!!」
若林「さあ、馬力の宴が始まるぞォォ!! 佐藤大河のC8が、カナタの86を一瞬で置き去りにする加速を見せる!! そして遥か後方からは、今まで沈黙していた『7億円の怪物』も、その真の姿を現そうとしているぅぅッ!!」
若林「1.4キロの地獄、産業ストレートもいよいよハイスピードエンドッ!! ここで信じられない光景が繰り広げられているぅぅ!! 後方に沈んでいたはずの山吹芽衣、ポルシェ911カレラGTSが……なんと5台ごぼう抜きィィィ!!!!! 凄まじいオーバーテイクッ!!!!!」
フェルリア「……ポルシェの真髄ですね。RRレイアウトが生む圧倒的なトラクションと、高速域での吸い付くような空力特性。芽衣ちゃん、この長い直線でじっと耐え、空気の壁を切り裂くタイミングを完璧に計算していました」
高村のZ、伊藤のスイスポ、ミルキークイーンのLC、内藤のR8……そして佐藤ジュンのRX-7までもが、銀色の閃光に一瞬で置き去りにされる。
佐藤ジュン「(ふぇぇ……っ、すごい速い……。ボク、邪魔になってないかな……、ご、ごめんなさい……ッ!!)」
内気なジュンがRX-7のステアリングを震える手で握る傍らを、芽衣のポルシェが時速300kmの風圧で通り過ぎる。
佐藤大河「(……ふん、山吹の妹か。冷静なライン取りだ。だが、このストレートの主役はあくまで俺のC8だということを、その身に刻ませてやる。プライドにかけてな……)」
若林「芽衣、一気に15位から10位へジャンプアップ!! 山吹姉妹がトップ10に名を連ねたぁぁッ!! だがその前方では、冷静に牙を研ぐ佐藤大河が、カナタの背中を虎視眈々と狙っているッ!!」
若林「おっと! さらに来たのは、、、、来たァァァ!!! サイコパスヴェネーノ! 霧山トオルゥゥゥゥ!!!! 18位から一気に6台ごぼう抜きィィィ!!!!! 時速360kmオーバーの暴力が、今まさに11位のFDに迫るゥゥゥゥ!!!!!!」
フェルリア「はい、、、ヴェネーノなら絶対ここで狙うと思ってましたよ、、、。あの車にとって、この1.4キロの直線は公道ではなく、ただの『独走路』でしかありませんから。霧山選手、一切の容赦がありませんね」
「どけッ!! 貧乏人が公道を塞いでんじゃねぇ……ッ!!」
霧山トオルのヴェネーノから放たれる、雷鳴のようなV12サウンド。
抜き去られた岡田のGRカローラや柊のシビックは、その風圧だけで車体が激しく揺さぶられ、恐怖にハンドルを固める。
佐藤ジュン「(……ふぇっ!? な、なにか……凄く怖い音が後ろから……。あ、あの、ごめんなさい……すぐ、すぐ避けますから……ッ!!)」
バックミラーを埋め尽くす、ヴェネーノの戦闘機のようなフロントマスク。
内気なジュンは、その殺気にあてられ、FD3Sのアクセルを緩めそうになる。だが、そのさらに前方では、佐藤大河とカナタが火花を散らすトップ集団の背中を捉えていた。
若林「霧山、狂気の加速!! 12位まで浮上し、ターゲットを完全に佐藤ジュンにロックオン!! このストレートエンドで、シングルランカーたちの領域をすべて破壊し尽くすつもりかァァッ!!」
花「芽衣、、、、ッ! 芽衣がここまで来たの、、、ッ!? 後方に沈んでいたはずなのに……いつの間にそんな速さを身につけたのよッ!!」
産業ストレートの終端、時速300kmの風域の中で、花のWRXの真横に鮮やかな『パイソングリーン』の影が並び立つ。
芽衣「お姉ちゃん......ッ! 驚いた? 私のパイソングリーンのポルシェは、、、薫風のように煌めき貫いていくからね、、、、負けないよ、、、、、、ッ!!」
若林「なんとぉぉ!! 山吹姉妹、ついに産業ストレートの終わりで激突!! 妹・芽衣のポルシェが、姉・花のWRXを外側から飲み込もうとしている!! 薫風のごとき爽やかさ、だがその実体は空気を切り裂く鋭利な刃だぁぁッ!!」
花「……っ! 芽衣、いい顔してるじゃない。
でも、お姉ちゃんだって簡単に道を譲るわけにはいかないんだからッ!!」
フェルリア「……美しい光景です。お姉さんの花ちゃんは『剛』の走り、妹の芽衣ちゃんは『柔』の走り。ですが、今の芽衣ちゃんのポルシェからは、お姉さんを越えようとする強い意志が感じられます。薫風がバイパスの熱気を冷まし、新たな嵐を呼ぼうとしていますね」
若林「山吹芽衣、ついに姉をパス!! 10位から9位へ!! 姉妹の絆を超えた、真剣勝負の幕開けだぁぁッ!! そしてその前方では、5位の佐藤大河がさらなる加速を見せているぞォォォッ!!」
若林「来ましたァァァ!!! 霧山トオルのヴェネーノと、黄色ボディのR8・内藤が後ろから再び加速して並ぶゥゥゥゥ!!!! 12位、13位を走る二台の『怪物』が、時速350kmの世界で手を組んだぁぁぁッ!!!」
内藤「あははっ! 霧山くーん☆ 7億円の車と一緒に走るの、最高にハッピーだわァ!! 前を走る子も、あたしたちと一緒に混ぜてあげましょォォッ!!」
霧山「……ふん、下品な女だ。だが、その加速だけは認めてあげるよ。さあ、ジュンちゃん……逃げ場はもうない。僕たちの『光』に飲み込まれなよ……ッ!!」
産業ストレートの路面を焼き切るような、V10とV12の不協和音。
左右から挟み込むように、内藤のR8と霧山のヴェネーノが、11位を走る佐藤ジュンのFDを包囲しにかかる。
佐藤ジュン「(ひぃぃ……ッ!! 右からも左からも、ボクを壊そうとする音が聞こえる……。カナタくん、佐藤大河くん……助けてぇ、ボク、もうハンドル握ってられないよぉぉ……ッ!!)」
フェルリア「……最悪の並走です! 内藤さんの『ポジティブ・スライダー』による攪乱と、霧山選手の圧倒的な最高速。二台の間に挟まれたジュンちゃんのFDは、発生する巨大な気流の渦に飲み込まれ、直進することすら困難な状況です!!」
若林「霧山と内藤、一気に加速!! ジュンのFDを嘲笑うかのように抜き去り、ターゲットは前方、9位・10位の山吹姉妹へと移ったぁぁッ!!」
霧山「甘いよ内藤ちゃん、、、君アホなんじゃない?」
内藤「えっ……? な、なにがぁ☆ 霧山くーん、あたしたち今、最高にシンクロしてるじゃない!」
霧山「シンクロ? 冗談はやめてよ。7億円のマシンと、たかが数千万の量産車が並んでいること自体、僕にとっては不快なノイズでしかないんだ。君はただ、僕が前へ出るための『風除け』に使わせてもらっただけだよ」
若林「あぁっとォォ!! 霧山トオル、ここで共闘を拒絶!! 内藤のR8を嘲笑うかのように、ヴェネーノのV12エンジンがこれまでとは次元の違う咆哮を上げたぁぁッ!!」
「ゴォォォォォォォォッッ!!」
内藤「ちょ、ちょっと! 待ってよ霧山くん!! あたしを置いていかないで……ッ!!」
霧山「バイバイ、アホな内藤ちゃん。底辺同士、仲良くやってなよ」
ヴェネーノのリアから放たれる圧倒的なダウンフォースが、内藤のR8を風圧だけで押し潰さんばかりに加速する。
霧山は内藤をスリップストリームから引き剥がし、単独で前方の山吹姉妹へと牙を剥いた。
フェルリア「……これが霧山選手の真実ですね。彼には仲間もライバルもいない。あるのは、自分以外のすべてを『ゴミ』と見なす傲慢なまでのプライド。内藤さんは……彼の加速の踏み台にされてしまいました」
若林「内藤、失速!! ポジティブが崩壊し、再び情緒不安定な叫びがバイパスに響く!! 霧山は一気に10位・山吹花をパス!! ついにシングルランカーの領域を蹂躙し始めたぁぁッ!!」
内藤「やって...やってくれたなァァァァァァ!!!! 霧山ァァァッ!! あたしを……あたしをアホ呼ばわりして、ゴミみたいに捨てやがってぇぇぇッ!!」
若林「あぁっとォォ!! 内藤セリナ、本日二度目の精神崩壊!! 霧山への怒りが、アウディR8のV10エンジンに火をつけた!! 排気管から真っ赤なアフターファイアを撒き散らし、内藤が再び狂気の加速を開始したぁぁッ!!」
内藤「4ねェッ! 霧山ァァァァァ!!
7億円だか何だか知らないけど、あたしのプライドをズタズタにした報いを受けさせてやるわァァァッ!!
4ねェェェェッ!!
爆発させてやらァァァァァァ!!!!!」
内藤のR8が、限界を超えたレブリミットまでエンジンを回しきる。
もはやタイヤの摩耗など度外視。四輪を激しく滑らせながら、霧山のヴェネーノが作った気流の穴に無理やり潜り込む!!
フェルリア「……いけません! 内藤さんのR8、水温と油温がレッドゾーンを指しています! まさに命を削る加速……。ですが、その気迫は本物です。霧山選手が作った真空の穴を、彼女は『怒り』だけで埋めようとしています!!」
内藤「逃がさない……ッ!! 地獄の底まで、あたしが道連れにしてやるわァァッ!!」
若林「内藤、驚異の追い上げ!! 12位から再び11位の花を捉え、その目は10位・霧山のリアディフューザーだけを射抜いているぅぅッ!!」
若林「どういうことだッ!? 内藤が命を削る加速で迫っているというのに、霧山のヴェネーノ、わずかではあるがトップスピードが落ちているように見えるぞォォッ!!」
フェルリア「……あれ、、、霧山くんアレでも手を抜いてますね、、、、。データを見ると、アクセルを少し抜いています。おそらく、これ以上踏み込めばダウンフォースが強まりすぎてサスペンションが耐えきれないか……あるいは、ヴェネーノの出力が公道のキャパシティを超えてしまう」
若林「手を抜いているだと!? 350km/hオーバーの世界でかッ!?」
フェルリア「本気出したら相当まずいでしょう、、、、というか、、、建物やガードレールにぶつかると思いますよ、、、。今の彼にとって、この1.4キロの直線ですら狭すぎるんです。彼は今、『怪物』を御すために必死で力を抑え込んでいる……」
内藤「逃げんじゃねぇよ霧山ァァ!! 速度が落ちてるぞッ! 4ね、4ねェェェ!!」
内藤のR8が、霧山のヴェネーノのテールランプに今にも接触せんばかりに肉薄する。だが、霧山はミラー越しにそれを見つめながら、冷めた笑みを浮かべていた。
霧山「……うるさいな。僕が本気を出さないのは、君のためじゃない。この美しいヴェネーノに、下品なガードレールの錆を付けたくないだけだよ。僕の『本気』に……君のガラクタがついてこられると思うのかい?」
若林「霧山、アクセルを戻しながらも、内藤の進路を完璧に塞いでいる!! 復讐に燃える内藤だが、霧山の『自制』という名の壁を突破できないッ!! そしてその前方、石巻ストレートの終点はもう目の前だぁぁッ!!」
黒川「バブーおかあちゃ〜...☆
そこにスバルあるじゃんおかあちゃの車〜☆☆ 仲間がいっぱいいて心強いねぇ、おかあちゃ〜♫」
花「......またそれかァァァァァァ!!!!!
そんなことでいちいち走行中にちょっかい出すなやァァァ!!!!!!」
黒川「はいはい、おかあちゃはどうせスバルなんだよね〜。永遠の宿敵、インプの山とランエボの里、どっちがいいの? おかあちゃ。僕は断然、エボの里派なんだけどさぁ〜☆」
花「黙れやァァァァァァッッ!!!! 誰がおかあちゃんだアア!!
そのふざけたエボのリアウィング、今すぐ叩き折ってやるからそこを動くなァァァッ!!」
フェルリア「……あぁ、また始まりましたね。黒川くん、1位のイオリさんを追撃しながらこの余裕……。相手を怒らせてミスを誘う戦術なのか、単に彼がこういう性格なのか、判断に迷うところです。花ちゃん、完全にハンドルを握る手が震えるほど怒っていますよ」
若林「黒川、赤ちゃん言葉で市街地を猛進!! 対する花は怒りのフルブースト!! 宿命の三菱・スバル対決が、市街地の建物を震わせるぅぅッ!!」




