松島編第54話 蒼きブルーシャーク
美保「この勢いとストリーム...まるでサメが味方しているかのようだね!
海も、潮風も、、、、」
バイパスを吹き抜ける初夏の風が、R33の巨大なリアウィングを押し上げる。
カナタの86が作るスリップストリームに潜り込んだ美保は、恐怖を捨て、アクセルをさらに床まで踏み抜いた。
美保「いくよッ! 私だけのブルーシャークッ!!!」
若林「出たぁぁぁぁ!! 相川美保の必殺、ブルーシャークだぁぁッ!! 蒼いR33の周囲に、本物の巨大なサメの幻影が見えるッ!! 潮風を味方につけ、空気の壁を切り裂きながら、伝説の86を飲み込もうとしているぞぉぉッ!!」
フェルリア「……凄まじい風の読みです。彼女、バイパスを流れる気流を、まるで海流のように捉えている。サメが水の抵抗をエネルギーに変えるように、彼女は空気抵抗を推進力に変えているんです。これこそが、特異点を超えた『ブルーシャーク』の真髄……!!」
カナタ「(……速い! 86が……風圧だけで横に弾き飛ばされそうだッ!!)」
キィィィィィィィン!!
RB26DETTの過給音がバイパスの静寂を切り裂く。
ブルーシャークのオーラを纏ったR33が、86の右サイドを一瞬で掠め取り、地平線の彼方へと突き抜けた。
若林「抜いたぁぁぁ!! 相川美保、5位浮上!! お兄ちゃんの仇敵、腹切カナタを力ずくで引き摺り下ろしたぁぁ!! 蒼きサメが、バイパスの王座を奪い取っていくぅぅ!!」
美保「……お兄ちゃん。私、一歩近づいたよ。これが……相川美保の、本当の走りだよッ!!」
若林「相川美保が赤い戦闘機に迫ってきましたァァァ!!! R45東松島バイパス、地平線の彼方まで続く直線で、蒼きR33が猛然とその牙を剥き出しにしています!!」
美保「逃げ道はないよ、カナタさん……。バイパスの風は、もう私の味方なんだから。
ブルーシャーク……全開だよッ!!!!!!!」
R33 GT-RのRB26DETTが咆哮を上げ、NAの86との車間距離を、まるでビデオの早送りのように縮めていく。
美保の纏う「水と氷」のオーラがバイパスの熱気を切り裂き、カナタの86を蒼い影で飲み込んでいく。
フェルリア「……来ましたね。美保ちゃんの『ブルーシャーク』が、カナタくんの『赤い戦闘機』の尾翼を捉えました。140馬力のスイスポを退けた勢いそのままに、今度は伝説の86を深海へと引き摺り込もうとしています!!」
カナタ「(……っ! 背後から巨大な壁が迫ってくるようなプレッシャーだ!! これが450馬力……GT-Rの本当の加速かよ……ッ!!)」
カナタは86を小刻みに左右へ振り、美保にスリップストリームを完全には使わせまいとする。
しかし、美保はサメが海流を読むように、86が切り裂いたわずかな空気の乱れを正確にトレースし、吸い込まれるように距離を詰めていく。
若林「捉えたぁぁ!! ブルーシャークが赤い戦闘機の真後ろに張り付いた!! 東松島バイパス、時速250キロの世界で、蒼と赤の光が火花を散らすぅぅッ!!」
美保「お兄ちゃんの負けた相手……私がここで、完全に終わらせるッ!!」
若林「なんという事だぁぁぁッ!! 蒼と赤の死闘に、今度は『青き電撃』が乱入したぁぁ!! 伊藤翔太を一瞬でオーバーテイクし、5位争いに並びかけたのは……山吹花ァァァ!!!」
「バリバリッ!! パチパチッ!!」
WRX STIのボンネットから青い電撃がほとばしり、バイパスの空気をオゾン臭で満たす。
桜風のオーラが高速走行の気流を味方につけ、4WDのトラクションが東松島のアスファルトを文字通り「削り取って」加速する!!
美保「何...ッ!!? このバイパスの最高速域で、私の33に並びかける車がいるなんて……ッ!!」
カナタ「、、、、花!? お前、そのマシンの限界を超えてるぞッ!!」
花「……二人とも、熱くなりすぎよ!! このバイパスの風は、誰のものでもない……私のWRXが、一番速く駆け抜けるための道よッ!!」
若林「信じられない!! 蒼きサメ・美保、赤い戦闘機・カナタ、そして電撃の獣・花!! 東松島バイパスの3車線すべてが、この3台のオーラで埋め尽くされたぁぁ!! 誰が引いてもクラッシュ必至、時速260キロオーバーの超高速バトルだぁぁッ!!」
フェルリア「……山吹選手、見事なスリップストリーム・スイッチです! 美保ちゃんが作った空気の穴を、カナタくんの86が使い、そのさらに外側から花ちゃんが二人の乱気流を『翼』に変えて滑空している……!! まさに、バイパスに咲く青い雷光ですね!!」
三台のマシンのサイドミラーが触れ合うほどの超近接距離。
地平線の彼方へ向かって、三色の光がバイパスを焼き尽くしていく!!
若林「三車並走の限界領域!! ここで山吹花が勝負に出たぁぁ!! WRXのブースト計が振り切れ、マシンの周囲に猛烈な『桜風』が吹き荒れるッ!!」
花「これでお別れよ!!
舞いなさい、私の桜吹雪ッ!!!!!」
WRX STIから放たれた青い電撃と桜のオーラが、巨大な渦となってバイパスを包み込む。
舞い散る桜の残像が、時速260キロで走る美保のR33とカナタの86の視界を真っ白に染め上げた!!
美保「くっ……!? 桜の葉で見えない……ッ!! この速度域で視界を奪うなんて……正気なのッ!?」
若林「美保、一瞬のアクセルオフ!! だがその瞬間、左右を大型のマシンに挟まれていた赤い戦闘機に異変が起きているぅぅ!!」
カナタ「(……今だ。WRXとGT-R、二台の巨大な壁が空気を切り裂き、俺の周りに『無風のトンネル』ができている……。この真空に、86を投げ込むッ!!)」
フェルリア「……あれはスリングショット(弾き飛ばし)!? 左右のマシンが発生させる強力な負圧を利用して、パワーで劣る86がパチンコ玉のように前方へ吸い込まれていく!! カナタくん、この瞬間を待っていたのね……!!」
カナタ「行けぇぇぇッ!! 86ォォォォォォッッ!!!」
若林「出たぁぁぁッ!! 桜の煙幕を突き抜け、真空の弾丸となった86が、WRXとGT-Rの鼻先を弾けるように飛び出したぁぁ!! 赤い戦闘機、バイパスの重力を無視して5位奪還だぁぁッ!!」
花「うそ、吸い込まれた……!? 私の桜を逆に利用するなんて!!」
美保「カナタ……!! どこまで私の想定を越えていくのよォォォッ!!」
地平線の彼方へ向けて、86を先頭に三色の光がバイパスをさらに加速していく!!
花「そんな、、、容易く私のスリップを、、、!? だってさっきも同じことしたのに、、、」
高速域でのスリップストリームは、本来なら抜く側も体力を削り、タイヤに多大な負荷をかける。花は、カナタが自分たちの背後で必死に食らいついているのだと思い込んでいた。
カナタ「……あれはわざとタイヤを摩耗させないようにしたんだよ。このバイパスの超高速域で無理にラインを変えれば、86の細いタイヤは一瞬でタレる。だから、お前たちの作る空気の道の中で、じっと『その時』を待っていたんだ」
若林「なんとぉぉぉ!! カナタの激走は、追い詰められた末の足掻きではなかったッ!! タイヤを温存し、ライバルのエネルギーを吸収して弾けるための、冷徹なまでの計算だったというのかァァァ!!」
フェルリア「……恐ろしい子。1.2トンに満たない軽量な86だからこそ、タイヤへの攻撃性を極限まで抑える走りができる。逆に、400馬力を超えるWRXやGT-Rは、そのパワーゆえにバイパスの路面でタイヤを削り続けている……。今のスリングショットは、温存されたフレッシュなゴムが路面を完璧に捉えた結果です!!」
花「(……わざと……? 私の全開走行を、自分の休憩時間にしていたっていうの……!?)」
美保「(……信じられない。450馬力の私の後ろで、そんな冷静な計算ができるなんて……。この人、ただの『伝説の継承者』じゃない……ッ!!)」
赤い戦闘機(86)の排気音が、今まで以上に澄んだ高音を奏でる。
タイヤの余力を確信したカナタが、バイパスの「風」を完全に支配し始めた!!
若林「後方では高速ベッドのような安定性を誇る柳津のM4と、初参戦・ネオンレッドボディを輝かせる佐藤ジュンのFDが、LEXUSとスイスポを一瞬でオーバーテイクだぁぁぁッッッ!!!!!」
柳津「へっ、バイパスの直線なら俺のM4の独壇場だぜ! まるで温泉宿の高級ベッドに寝てるような安定感で、時速270キロまで一気に叩き込んでやるッ!!」
BMW M4 DTMが、ドイツの技術の粋を集めた空力性能でバイパスの風を切り裂く。
その横では、佐藤ジュンのFD3Sが、13Bロータリーの超高回転サウンドを響かせ、ネオンレッドの光をバイパスに焼き付けていた。
佐藤ジュン「ボクだって……! ずっと後ろで震えてるだけの一匹狼じゃないんだ!! このロータリーが回る限り、誰にも負けないッ!!」
フェルリア「……凄まじい伸びです。柳津選手はM4の直進安定性を活かして最短距離を突き進み、佐藤選手はFDの軽量さを武器に、バイパスのわずかな気流の変化を加速に変えている。ミルキークイーンのレクサスと伊藤くんのスイスポが、その二色の残像に置き去りにされました!!」
ミルキークイーン「あらあら〜……私の優雅なティータイムを邪魔する、元気な子たちですわね〜♫」
伊藤「クッ……! 140馬力の限界かよ……! どんどん後ろから化け物が降ってきやがるぜッ!!」
若林「中堅集団の序列が完全に崩壊!! 柳津とジュンが、5位争いのカナタたちの背後へ、猛烈な勢いで迫っていますッ!!」
ミルキークイーン「あらあら、、、まさかの外から行かれましたわ〜......♡」
若林「なんとぉぉ!! 抜かれたミルキークイーン、全く動じていないッ!! それどころか、アウト側から弾丸のように自分を追い越していった二台の後ろ姿を、楽しそうに眺めていますッ!!」
時速270キロオーバー。風圧で車体が浮き上がりかねないこの領域で、アウトサイドから被せるのは狂気の沙汰だ。
だが、柳津のM4の圧倒的安定感と、ジュンのFDの軽量高回転が、その「狂気」を「可能」に変えた。
フェルリア「……ミルキークイーン選手、わざとアウト側を開けましたね。自分のラインを『氷』のように固定して、相手がどこまでリスクを取れるか試したのでしょう。柳津選手と佐藤選手、彼女の挑発に見事に乗って、トップ5集団の尻尾を掴みに行きましたね」
ミルキークイーン「ふふ……あんなに熱くなって、タイヤが溶けてしまわないかしら? 少し……冷やして差し上げましょうか」
LC500の美しいV8サウンドが、冷徹な旋律へと変わる。
彼女の周囲の路面が、バイパスの摩擦熱を奪い、薄い氷の膜を張ったかのように輝き始めた!!
若林「出たぁぁ!! ミルキークイーンの『凍てつくバイパス』だぁぁ!! 抜き去った二台を追うために、彼女もついにレクサスの本気を解放するぅぅ!!」
柳津「今までタイヤを温存してきたが、、、もう我慢ならんッッッ!!! 一気に視界からこのまま消えてやる!!」
若林「来たぁぁぁーーーッ!! 8位を走行していた柳津雄介、ついにリミッター解除だぁぁ!! BMW M4 DTMのエンジンが咆哮を上げ、バイパスのアスファルトを焼き切るような加速を見せるッ!!」
「ゴォォォォォォォォッ!!」
ドイツツーリングカー選手権(DTM)の血を引く怪物が、その巨大なリアウィングでダウンフォースを極限まで生成。
柳津はステアリングを握り直し、前方の美保、花、そしてカナタの三台を射程距離に収めた。
フェルリア「……凄まじい決断力! 柳津選手、タイヤの摩耗を度外視した『スクラップ・アンド・ビルド』の走法です!! 今この瞬間にすべてを賭け、バイパスの風そのものを切り裂こうとしています!!」
美保「何……!? 後ろから……熱気が……っ!!」
花「このスピードで後ろから来るなんて……嘘でしょ!?」
柳津は一瞬の迷いもなく、美保のR33と花のWRXの間、わずか数センチの隙間にM4をねじ込んだ。
時速280キロの世界で、二台のサイドミラーをかすめ取りながら、柳津は一気に二人をごぼう抜きにする!!
若林「抜いた! 抜いたぁぁ!! 柳津雄介、一瞬で7位、6位をパス!! さらにその勢いのまま、5位を走るカナタの86の真横に並びかけたぁぁッ!! まさに死神の鎌が、バイパスを横一文字に切り裂いたぁぁッ!!」
柳津「...この伝説、俺のM4がここで塗り替えてやる......ッ!!かならず赤い戦闘機を捉えてみせる!!!!」




