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86伝説エーペックス[POWER!!!]  作者: SAI
POWER!!!松島編
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松島編第53話 深海のサメと140馬力の獣

伊藤「ん、? あのディープマリンブルーの33は……」


若林「来たァァァッ!!! なんと、伊藤翔太の射程圏内に、、、ディープマリンブルーのR33 Vスペック、相川美保が近づいてきたァァァ!!!!」


前方を走るR33 GT-Rのワイドなリアフェンダーが、松島の木漏れ日を浴びて妖しく光る。

それは、深海から獲物を狙うサメのような威圧感。

直列6気筒、RB26DETTの重低音が、前方の空気を震わせて後方のスイスポを威嚇する。


若林「サメのように鋭いRのテールライトが、、、、伊藤翔太を待ち構えているゥゥゥゥ!!!!」


フェルリア「……信じられません。伊藤くんが本当にこの位置にいらっしゃるんですか? 彼は140馬力ですよ? 対する相川選手のGT-Rは、その数倍のトルクとアテーサE-TSという最強の武器を持っている。普通なら、バックミラーの塵になるはずなのに……!!」


伊藤翔太「……ハァ、ハァ……。やっぱり、GT-Rはデケェな……。だけどよ、馬力がないなら、ないなりの戦い方があるんだ。カナタが86で教えてくれたんだ……『限界なんて、自分が決めるもんだ』ってなァ!!」


スイスポのタコメーターが140馬力の限界を突き破り、レッドゾーンへ。

伊藤はブレーキをミリ単位で遅らせ、GT-Rが描く完璧なラインの内側へと、黄色い鼻先をねじ込んでいく!!


相川美保「(バックミラーを見て)……あの黄色いスイスポ、まだついてくるの!? お兄ちゃんのRを継いだ私が、こんなところで立ち止まるわけにはいかない……!!」


若林「ええぇぇぇッ!? フェルリアさん、今なんとおっしゃいました!? あのR33を駆る相川美保……まだ14歳なんですかッ!!?」


フェルリア「……ええ。驚くべきことですが、事実です。美保ちゃんは14歳でよくやってますよね、、、、。5歳上のお兄ちゃん(律)が先に、せっかくのR35ニスモを海にダイブさせているのに……」


若林「14歳……中学生が、280馬力の怪物を手なずけているというのか!! 兄が三陸の海に沈めたプライドを、彼女はその小さな肩に背負って走っているんですね……!」


相川美保「(……お兄ちゃん。見てて。R35を失くしたお兄ちゃんの代わりに、私がこのR33で、相川家の速さを証明してみせる……!!)」


美保の瞳には、14歳とは思えないほど深く、冷たい決意が宿っている。

アテーサE-TS Proが路面状況を瞬時に演算し、R33の巨体を内陸のタイトなコーナーへと強引にねじ込んでいく。


伊藤翔太「……っ、なんだよ……! 140馬力の俺の全開走行に、あいつは鼻歌まじりで対応してやがるのか……!? だけど、お兄さんが海に落ちたからって、俺が譲ってやる理由にはならねぇんだよォォォッ!!」


フェルリア「……伊藤くん、無茶です! 14歳とはいえ、彼女は『本物の天才』だ……。そのスイスポの140馬力では、彼女が描く『完璧な円』の中には入れない……ッ!!」


伊藤「入れる……入れるんだよッ!! カナタなら、絶対に行ってるはずだ。俺だって……あいつの隣に並びたいんだよッ!!」


黄色いスイスポのフロントタイヤが、白煙を上げてアスファルトを削る。

美保のR33が描くディープマリンブルーの軌跡に、140馬力の執念が今、真っ向から衝突する!!


美保「抜かせないよ、、、、ッ!! スイスポなら、、、普通なら抜けない、、、、ッ!!! サメのように私はブロックして突き刺すッ!!!」


ディープマリンブルーのR33が、コーナーの出口でテールを鋭く振り、スイスポの進路を完全に塞ぐ。

それは単なるブロックではない。獲物の動きを先読みし、逃げ道を一つずつ潰していくサメの狩りのような、能動的なディフェンスだ。


伊藤「......ッ!! さっきの奴ら(ミルキークイーンや柳津)より速い、、、ッ!! 相川の妹がこんなんだなんて、、、想定外だ、、、、ッ!!!」


伊藤のスイスポは、140馬力を絞り出すためにエンジンをレブリミットまで回し続けている。

しかし、美保のR33は、コーナーでの立ち上がりのトラクションが桁違いだ。

アテーサE-TSが路面を噛み砕き、伊藤が詰め寄ったはずの車間距離を、一瞬の加速で再び引き離す。


若林「相川美保、まさに深海の捕食者だぁぁ!! 伊藤のラインを完璧に読み切り、黄色いスイスポの鼻先を次々と弾き飛ばしていくッ!!」


フェルリア「……彼女、14歳にして『相手を絶望させる走り』を知っていますね。伊藤くんのラインは悪くない。でも、美保ちゃんはそのさらに一歩先、スイスポが一番パワーを出したい瞬間に、そっと自分のマシンの巨体を置いてくるんです」


伊藤「(クソッ、なんて冷静なガキだ……! だけどよ、俺には失うもんなんてねぇんだよ!!)」


美保「無駄だよ。このR33は、お兄ちゃんの悔しさと……相川の誇りでできているんだからッ!!」


R33のテールライトが、まるで見開いたサメの眼のように赤く、鋭く、伊藤を睨みつける!!


美保「抜かせない、、、ッ!!! コーナーが刺さるように抜けていくこの33は、、、、止めさせないッ!!!」


若林「見たか今のターン!! 重量級のR33とは思えない、鋭角的なコーナーへの刺入アタック!! まさに深海のサメが獲物を貫くような、鋭利なライン取りだぁぁ!!」


フェルリア「……凄まじいですね。彼女、R33の重さを逆に利用して、フロントを強引にインへ向けさせています。ブレーキの残し方、ステアリングを切るタイミング……すべてが『最速』ではなく『敵を封じ、自分を突き刺す』ための走り。伊藤くんのスイスポが、ラインをクロスさせようにも、その隙間をR33のリアフェンダーが完璧に塞いでいます」


相川美保の瞳は、一点の曇りもなく前方のコーナーだけを見据えていた。

かつて兄・律が「最強」と信じたGT-Rの名を、今度は自分が、この熟成されたR33で証明する。

イン側を刺すように駆け抜けるたび、路面にはサメの歯形のような黒いブラックマークが刻まれていく。


伊藤「……ッ、なんてキレだよ……!! 刺さるようなコーナーワーク……!! 140馬力の俺の立ち上がりを、あいつは旋回速度だけで無効化してやがるのか……ッ!!」


伊藤のスイスポが、軽さを活かしてインを突こうとするたび、美保のR33はまるで「ここに刺され」と言わんばかりに、絶妙な位置に車体を置く。

それは誘いか、あるいは拒絶か。


美保「お兄ちゃんの悔しさも、相川のプライドも……全部このRに乗ってる。あんたの140馬力じゃ、この『重み』は動かせないッ!!」


ディープマリンブルーのサメが、内陸の森を切り裂くように、さらに加速を強めた!!


フェルリア「美保ちゃんの走りいいですね、、、本当に海やサメを味方にしているかのようです、、、、、! ファンタジーで言うと、、、水と氷を掛け合わせた感じでしょうか、、、、」


若林「水と、氷……! なるほど、あの変幻自在なライン取りは『水』の如く、そして相手を刺し貫くようなブレーキングは『氷』の如し!! 14歳の少女が、松島の内陸に蒼き深海の幻想を呼び出しています!!」


相川美保のR33 GT-Rの周囲に、陽炎とは異なる「青い粒子」が舞い上がる。

それは彼女の凄まじい集中力が生み出したオーラ。

コーナーを曲がるたびに、路面からは海水が弾けるような音が響き、後方を走る伊藤のスイスポには、絶対零度の冷気が襲いかかる。


美保「……重いなら、その重さを氷の硬さに変えるだけ。速いなら、その速さを水の流れに乗せるだけ……。お兄ちゃん、私はもう、嵐の中でも滑ったりしないよ」


美保の指先が、氷の彫刻を作るかのように繊細にステアリングを動かす。

R33はサメが海中を滑るように、空気抵抗さえも「水流」に変えて加速し、内陸のタイトコーナーを「氷の剣」のように鋭く切り裂いていく。


伊藤「(……っ、なんだよこれ!? 目の前のGT-Rが、急に蒼く光りやがった……!! 水の中にいるみたいにハンドルが重い……いや、これはあいつの気迫に押されてるのか……ッ!?)」


若林「伊藤翔太、絶体絶命!! 美保の放つ『水と氷の結界』に、140馬力のスイスポが飲み込まれようとしているぅぅ!! 14歳の天才少女が描く、美しくも残酷な完封劇だぁぁッ!!」


伊藤「そうか、、、そういう事かよ。

コイツの本性はこれだったのか、、、、ッ!!」


若林「おっとぉ!! 伊藤翔太、何かを掴んだか!? 蒼き幻想の中に沈んでいた黄色いスイスポが、今までにない鋭い動きを見せたぁぁ!!」


伊藤の目には、美保のR33が描くラインが、もはや「水の流れ」ではなく「震え」に見えていた。

美保の「水と氷」のオーラ。それは彼女の圧倒的な強さの象徴ではなく、兄・律が海に消えたあの日の恐怖を、必死に氷の壁で固めて押し殺している「防衛本能」そのものだったのだ。


伊藤「……お前、怖いんだろ。お兄さんが海にダイブしたあの瞬間が、今でも足元で渦を巻いてる……。だからお前は、この重いR33を氷の塊にして、沈まないように必死に踏ん張ってるだけなんだッ!!」


美保「(……っ!?)……何を、勝手なことを……ッ!! 私はお兄ちゃんの代わりに、このR33で勝つって決めたんだ!! 怖いなんて、そんなわけ……!!」


フェルリア「……気づきましたね、伊藤くん。美保ちゃんの完璧すぎるブロック。それは裏を返せば『一歩もラインを外せない』という強迫観念。海水は硬いけれど、一点に強い衝撃を与えれば、脆く砕け散る……!!」


伊藤「……悪いな、お嬢ちゃん。俺は140馬力の『熱』しか持ってねぇが……その冷たい水裁き、俺が全部溶かしてやるぜッ!!」


スイスポのタービンが真紅に輝き、1.4リッターのエンジンが限界を超えた「蒸気スチーム」を放つ。

絶対零度の深海の結界に、140馬力の泥臭い情熱が、今、真っ向からヒビを入れにいく!!


若林「さぁ、内陸のヘアピンが迫る!! 逃げる蒼きサメ、相川美保!! 追う黄金の弾丸、伊藤翔太!! 1.4リッターのタービンが真っ赤に焼け、エンジンルームから本物の蒸気スチームが噴き出しているぞォォォッ!!」


伊藤「氷が溶けたら、ただの『水』だろッ!! 流されるんじゃねぇ、俺がその流れを奪ってやるッ!! 行けぇぇぇ、俺のスイスポォォォッ!!」


伊藤はステアリングを強引に切り込み、あえて美保のR33が最も嫌がる「氷のヒビ」――わずかに乱れたラインの隙間に、フロントをねじ込んだ。

140馬力の熱気が、美保の纏っていた冷たいオーラを瞬時に気化させ、視界を真っ白な蒸気が覆い隠す!


美保「(……っ!? 視界が……真っ白!? 怖い……お兄ちゃん、海の中みたいに何も見えない……ッ!!)」


一瞬の躊躇。それが美保の「氷のライン」を完全に砕いた。

重量級のR33が外側へわずかに膨らんだその刹那、伊藤のスイスポが「水を得た魚」のようにその内側を滑り抜ける!!


若林「抜いたぁぁぁぁぁぁッ!!!!! 伊藤翔太、ついに、ついにやったぁぁ!! 140馬力が280馬力を、努力の熱が天才の氷を打ち破ったぁぁぁ!! 6位浮上だぁぁッ!!」


フェルリア「……お見事です。伊藤くんは、彼女の『恐怖』を『勇気』で上書きしました。溶けた氷は今、彼の進む道を濡らすただの勝利の水へと変わりましたね」


相川美保「(……負けた……? 私が……140馬力の車に……?)」


蒸気が晴れた先、美保の目に見えたのは、前を走る「親友」カナタの背中を全力で追う、泥臭くも輝かしい伊藤のテールライトだった。


若林「あぁっとぉ!! 伊藤翔太の先行はわずか数秒だったぁぁッ!! サメのように、背後からディープマリンブルーのR33が再び飛び出してきたぁぁぁ!!」


「ギャァァァァァァァッ!!」


RB26DETTのツインターボが過給圧を最大限に高め、450馬力のパワーが四輪へと叩きつけられる。

立ち上がりの加速。140馬力のスイスポを、まるで止まっているかのように抜き去る圧倒的な暴力。


若林「やはりスイスポでは敵わないッ!!! 450馬力の33GT-Rはやはり化け物だぁぁぁッ!!! 140馬力の努力を、排気量と技術が完膚なきまでに叩き潰していく!!」


フェルリア「……チューンすればGT-R史上最強ですからね、、、、。R33のロングホイールベースが生む直進安定性と、熟成されたアテーサE-TS。美保ちゃんは今、マシンのポテンシャルを120%引き出しています。140馬力でこれに抗うのは、もはや物理学への反逆ですよ……」


美保「……お兄ちゃんが言ってた。GT-Rは、負けるために作られたんじゃないって。140馬力で私に勝てるなんて……思わないでッ!!」


美保の瞳が蒼く輝き、R33が放つ「氷のオーラ」がさらに巨大なサメの形を成す。

抜き返された伊藤の目の前には、スイスポの全開走行を嘲笑うかのような、巨大なテールランプの壁が再び立ちはだかった。


伊藤「……っ、クソがぁ!! 450馬力だと!? 嘘だろ……あんな加速、化け物じゃねぇか……!! これが、本物のGT-Rの力だってのかよ……ッ!!」


奇跡の灯火が、深海の冷たい水圧によって押し潰されようとしていた。


美保「簡単には抜かせないよ、、、、ッ!!!! サメのように突き刺すR......ッ!! 33は失敗作とか言われたけど私はそうは思わない、、、、、、ッ!!!!」


若林「相川美保の叫びが、RB26の咆哮と共に松島の山々に響き渡るッ!! 世評を、偏見を、すべてその圧倒的な加速で塗り潰していくぅぅ!!」


かつてR33は「大きく重い失敗作」と叩かれた。しかし、美保にとってはそうではなかった。

安定したロングホイールベース、研ぎ澄まされた空力、そして兄・律が最後まで愛し、自分に託したGT-Rの血統。


美保「あえて失敗作と言われたけど、本当は特異点だと思うの……。この世界の空と、深海を結ぶ地平線のように……誰もたどり着けない場所へ、私はこの子(R33)と一緒に行くんだッ!!」


フェルリア「……特異点シンギュラリティ、ですか。なるほど、彼女はR33の『安定感』を、恐怖を打ち消すための『不動の地平』に変えたんですね。空を飛ぶような軽やかさと、深海に潜るような重厚さ。その二つが交わる場所こそが、今の彼女のドライビングラインです」


ディープマリンブルーのボディが、陽光を浴びて空の色を映し、影に沈んで海の色を纏う。

コーナーを抜けるたび、R33は「突き刺すサメ」から「揺るぎない地平線」へと姿を変え、背後の伊藤を絶望の淵へと追いやる。


伊藤「(……っ、なんて威圧感だ。ラインが……地平線みたいに横に広がって見える。どこを狙っても、あいつの背中に吸い込まれちまう……ッ!!)」


美保「無駄だよ。特異点の中に、140馬力の光は届かない……ッ!!」


450馬力のパワーが爆発し、R33は蒼い残像を残して、内陸の高速区間を支配した。

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