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86伝説エーペックス[POWER!!!]  作者: SAI
POWER!!!松島編
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松島編第52話 ギアを叩き込めば

吉田(生前)「ギアを叩き込めば山道だって俺の遊び場だ、、、、、、滑る路面?それがどうした。

ハンドルは俺が握っている、、、、、」

「少年であれ怪物であれどハンドルとキーを握れば...全てがこの世に久遠の革命を引き起こさんことを......ッ!!!全てを超えていくがいい......

少年少女達よ、、、、、、、ッ!!!!」


それは、この過酷なエーペックスカップに身を投じた全ての走り屋たちが、その魂の奥底に刻み込んでいる不文律。

最新の電子制御も、数千万円のカーボンボディも、最後は「意志」という名の加速には勝てない。だが、現実は残酷だ。


腹切カナタと伊藤翔太と山吹花、、、この3人に何らかの覚醒が芽生えようとしていた。


しかし、一向に腹切カナタの86はNA(自然吸気)のまま。

過給器の暴力的なトルクを持たぬそのエンジンは、登り坂のたびに悲鳴を上げ、先行する怪物たちの背中が遠のくのを必死に繋ぎ止めている。


伊藤翔太のスイスポもまた、140馬力のまま。

「軽量」という武器だけで戦うには、この海岸線のハイスピードバトルはあまりにも過酷だ。1馬力、1ニュートンの差が、じりじりと彼の精神を削り取っていく。


そして山吹花も、順位を上げられないままだった。

WRXの四輪駆動がどれほど優秀でも、上位に陣取る「化け物」たちの狂気、あるいはミルキークイーンが放つような超常的な「力」を前にして、彼女の正攻法の走りは突破口を見出せずにいた。


覚醒の光は確かに見えている。

だが、マシンのスペックという「物理の鎖」が、彼らの飛翔を許さない。

初夏の陽光の下、もどかしさと焦燥が、アスファルトの熱気と共に陽炎となって揺らめいていた。


若林「松島セクションはいよいよ中盤のヤマ場!!内陸区間へと差し掛かっていく!!

ここで9位・内藤セリナと10位・山吹花、因縁の二台が急接近だぁぁ!!」


山吹花「またお前か内藤ォォォォォ!!!!

アンタ....あの時は伊藤を良くも、、良くもォォォォォ!!!!」


WRX STI(VAB)のステアリングを握りしめ、花の瞳に青い炎が宿る。

脳裏をよぎるのは、かつての三陸戦。セリナの非情な走りに翻弄され、ガードレールに叩きつけられた伊藤翔太のスイスポの無惨な姿。


内藤セリナ「えへへ? なんのことかなー?? あの三陸戦のこと? セリナ、忘れちゃったよ〜♫ 負ける方が悪いんだもん、あははははッ!!」


セリナはR8のネオンカラーを煌めかせ、バックミラー越しに挑発的な笑みを浮かべる。

その余裕を打ち砕くように、花のWRXがブースト圧を限界まで跳ね上げた。


若林「山吹花、ブースト全開ッ!! 四輪駆動(AWD)の暴力的なトラクションで、R8の真後ろに一気に食らいついたぁぁ!!」


フェルリア「……これほどの殺気、山吹選手からは初めて感じますね。彼女は冷静なタイプですが、仲間のためなら、その牙は誰よりも鋭くなる。WRXのEJ20エンジンが、まるで彼女の怒りを代弁するように叫んでいますよ」


山吹花「……許さない。アンタだけは……ここで私が引きずり下ろしてやるッ!!」


コーナーの入り口、花はブレーキを極限まで遅らせた。

タイヤがアスファルトを「むしり取る」ような激しい音を立て、WRXの青い影がR8のサイドに並びかける!!


若林「追突寸前ながらも追い詰めるEJ20ターボの電撃の獣!!! 山吹花ァァァ!!! ハイパワー四輪駆動のアウディに襲いかかるゥゥゥゥ!!!!!」


「パチッ……パチパチッ!!」


WRX STI(VAB)のボンネットから、青い電撃が火花となって散る。

花の怒りに呼応するように、EJ20エンジンが真っ赤に加熱され、過給圧はレッドゾーンを突き抜けた。

さらに、マシンの周囲には季節外れの「桜風さくらかぜ」が舞い上がる。それは美しくも、触れるもの全てを切り裂くような鋭い旋風。


山吹花「……見てなさいセリナ。これが、仲間を傷つけられた私の……私たちが積んできた時間の重さよッ!!」


若林「対するはフミッパスライダーの使い手、内藤セリナッ!!! コーナーでもアクセルを一切緩めない、死を恐れぬ全開走行!! フミッパで走る彼女相手に、勝ち目という隙は生まれるのでしょうかァァァァァァ!!!??」


内藤セリナ「あははははッ!! 綺麗だね、お姉さん!! 青い電気と桜の葉っぱ……でも、全部まとめてセリナが優しく踏み潰してあげるッ!!!!!」


セリナのR8が、タイヤを悲鳴を上げさせながら横滑り(スライド)でコーナーに飛び込む。

アクセルは全開。フミッパが生み出す遠心力を、力技で前進するエネルギーに変える「フミッパスライダー」。

しかし、その狂気を、青い電撃が切り裂いた!!


花「……逃がさないッ!!」


電撃を纏ったWRXが、桜の舞う軌跡を残しながら、R8のインサイドに強引にフロントをねじ込む!

トラクションが抜けない。四輪が路面を掴み、

電撃の獣が獲物の喉元へと喰らいついた!!


若林「さらに後方から伊藤翔太のスイスポと佐藤ジュンのFD3Sが接近して、4台並びかけるゥゥゥゥ!!!!! 物理的にあり得ないッ!! この狭い海岸道路に、4つの魂が横一線に並んだぁぁぁ!!」


花「ウソでしょッッ!? FDに伊藤くんまで!?

なんで……なんで140馬力の車が、この速度域でついてこれるのよッ!!」


内藤セリナ「えへへ☆ この狭い道で4台並びかけるの面白いんじゃなーい?☆

まるでチキンレースだねっ!!」


フェルリア「……本来なら、140馬力が620馬力やラリーベースのWRXに並ぶなんて思いもしませんからね。山吹選手は明らかに油断していました。伊藤選手と佐藤選手の『覚悟』が、マシンのスペックを一時的に凌駕しています!!」


伊藤翔太「俺も見てられッかよ! 俺があげたカナタの86が前にいるんだ……ッ!!

ここで俺が脱落して、あいつに顔向けできるかよォォォォォ!!!」


1.4リッター直4ターボが、レブリミットを遥かに超える悲鳴を上げる。

だが伊藤の目には、130Rを超える高速コーナーの先に、微かに揺れる「86の背中」が確かに見えていた。


佐藤ジュン「ボクも……ボクも……。怖いけど、ここで逃げたらずっと一匹狼のままだ……だけど、みんなと……みんなで肩を並べて走りたいんだァァァァァァ!!!!!」


ネオンレッドのFDが、タイヤをアスファルトにめり込ませながら、WRXのサイドミラーに接触せんばかりの超近接距離でノーズを押し込む!!


若林「右からセリナのR8、花のWRX、ジュンのFD、そして左端に伊藤のスイスポォォ!! 誰が引いてもおかしくないこの状況、誰もアクセルを戻さない!! 第2集団の均衡が、今ここで完全に崩壊するぅぅぅ!!」


若林「信じられない光景だぁぁ!! 7位争いの二強、ミルキークイーンと柳津の背後に、伊藤翔太と山吹花が完全に追いついた!! 140馬力のスイスポが、レクサスとM4を射程圏内に捉えているぞぉぉッ!!」


フェルリア「……伊藤くんは、ラインをクロスさせましたね! ミルキークイーン選手のLC500が、その重厚さ故にコーナーで僅かに外側へ膨らんだ……そこを逃さなかった!!」


伊藤「……今だぁぁ!! カナタ、見てろよ……! 140馬力だって、奇跡は起こせるんだァァァッ!!」


スイスポの1.4Lターボが、火を噴くような咆哮を上げる。

ミルキークイーンの「ミルク氷」の結界が、伊藤の放つ無謀なまでの熱気に一瞬だけ揺らぎ、LC500のラインがさらに外側へと押し出される!!


花「……今よ、伊藤くん!!

鉄壁が今、崩れたわッ!!

まとめて抜き去るわよッ!!!!」


WRX STIの周囲に舞う桜風が、電撃を伴ってさらに激しさを増す。

山吹花は、膨らんだレクサスのインサイド、そして再加速に手間取る柳津のM4のわずかな隙間に、青い巨体を弾丸のように撃ち込んだ!!


若林「行ったァァァァァァ!!!!!!!

伊藤翔太がインを刺し、山吹花がそのさらに内側をえぐり取る!! ミルキークイーン、まさかの二台抜きを許すのかぁぁッ!?」


柳津「……俺のM4を……踏み台にしやがった……っ!!」


ミルキークイーン「あらあら〜……少し遊びすぎましたかしら? 私のラインが……桜の葉っぱで滑ってしまいますわ〜……♫」


LC500のタイヤが白煙を上げ、初夏の路面で悲鳴を上げる。

松島の海岸線を、黄色いスイスポと青いWRXが、王者の如き二台を置き去りにして駆け抜けた!!


若林「そしてェェェ!!! 後方ではこの内陸区間で高村圭吾の黒いZ33が一気に仕掛けようとしているぞォォォォォ!!!! 4台ごぼう抜きできるのかァァァ!!?」


高村圭吾「……ハァ、ハァ……。やっと来たぜ、俺の『庭』がよ……!! 海岸線じゃパワー負けしてたが、このタイトな内陸なら……俺のZが一番速いってことを教えてやるッ!!」


Z33のVQ35エンジンが、地の底から響くような重低音を奏でる。

高村は一瞬の迷いもなく、17位から前方の集団へと突っ込んだ。


まずは山吹芽衣のカレラをブレーキングで刺し、続く岡田のGRカローラを立ち上がりのトラクションでパス!!


若林「二人抜いたぁぁ!! さらに柊蒼真のシビック、佐藤大河のコルベットが横に並んでいるが、高村は止まらない!! 縁石を蹴り飛ばし、三車並走の真ん中を割って入るぅぅぅ!!」


フェルリア「……凄まじい集中力です。高村選手、Z33の重いノーズを、まるで指先で操るかのようにインに叩きつけている。大排気量NAならではのレスポンスが、このトリッキーな内陸セクションで完璧に噛み合いましたね」


蒼真「クソッ!! なんだこの黒い塊は……!? 前が見えねぇ!!」


佐藤大河「コルベットのパワーを以てしても、この低速域じゃあいつのトルクには勝てねぇのか……ッ!!」


高村「……どけぇぇ!! 俺の道は、俺が切り拓くッ!!」


黒いZ33が、シビックとコルベットを左右に弾き飛ばすかのような気迫でパス!

わずか数コーナーの間に、高村圭吾が17位から13位へと一気にジャンプアップを果たした!!


若林「高村圭吾がまさに爪を隠してた黒猫のように4台をごぼう抜き!!!! シケインからの強烈オーバーテイクゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!! 誰も予想しなかった、漆黒のZ33による下克上だぁぁ!!」


高村圭吾「……へっ、猫っつーよりは、腹を空かせた野良犬だけどな……ッ!!」


Z33のVQ35エンジンが、低回転からの強大なトルクで路面を蹴り上げる。

左右に切り返すタイトなシケイン。高村はあえて縁石を深く踏み越え、車体を跳ね上げながら最短ラインを強行突破した。


フェルリア「……素晴らしい。Z33の重さを逆手に取った荷重移動です。シケインの切り返しで生じる慣性を、次のコーナーへの推進力に完全に変換している。芽衣選手も、蒼真選手も、この『強引かつ精密』なラインには対応できませんでしたね」


岡田「……っ、横を通り過ぎた瞬間に、Zの排圧でこっちのステアリングが取られた……! なんてパワーだ……ッ!!」


佐藤大河「(……チッ、高村の野郎、あんな隠し球を持ってやがったか。中堅の掃き溜めにいるタマじゃねぇな……!)」


高村はバックミラーを一瞥もせず、シフトアップ。

4台の残像を置き去りにして、内陸の木々の合間を黒い閃光が駆け抜けていく。

その爪が次に狙うのは、12位に沈む内藤セリナの背中だ!!


【松島・内陸セクション 全20台ランキング】


1位:黒川 海斗(EVO IX MR)

2位:小岩 イオリ(Ferrari 812 Superfast)

3位:古賀 加奈子(BMW M3 E46)

4位:サテラ(EVO VII MR)

5位:腹切 カナタ(TOYOTA 86 NA)

6位:相川 美保(R33 GT-R V-spec)

7位:伊藤 翔太(Swift Sport ZC33S)

8位:山吹 花(WRX STI VAB)

9位:ミルキークイーン(Lexus LC500)

10位:柳津 雄介(BMW M4 DTM)

11位:佐藤 ジュン(RX-7 FD3S)

12位:内藤 セリナ(Audi R8 V10)

13位:高村 圭吾(Fairlady Z Z33) ↑↑↑↑

  → 13位浮上! 内陸区間で怒涛の4台抜きを達成。

14位:佐藤 大河(Corvette C8) ↓

15位:柊 蒼真(Civic Type R FL5) ↓

16位:岡田 大成(GR Corolla) ↓

17位:山吹 芽衣(Porsche 911 Carrera GTS) ↓

18位:霧山 トオル(Lamborghini Veneno)

19位:川村 修一(K-Works)

20位:湯川 サトル(Honda S2000)


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【リタイヤ:相川律、クレア、坂田五郎丸】

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