松島編第44話 海岸クランク突入
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相川美保は、潮風が頬に当たるのを感じながら、静かに目を閉じていた。
その表情は、戦う者というよりも——海に何かを語りかけるような、柔らかい祈りのようだった。
海は凪いでいた。午後の松島。
太陽が海面に斜めから射し込み、ミッドナイトブルーのR33は、波の影のようにそこに佇んでいた。
美保「私は……海が大好きなの……!」
その静寂を破るように、二つの影が美保の背後に近づいてきた。
一台は、黄色く煌めくスイスポ。もう一台は、もふもふのピンクのアウターを着た少女が操る青いWRX STI VAB型だ。
花「わぁ……海の匂い強いね……箱根って山だけじゃないんだ」
山吹花が、潮風の強さに目を細める。隣にいる伊藤翔太は、ミッドナイトブルーのR33に釘付けになっていた。
伊藤「あれが……相川律の妹、美保さんのR33か……」
美保は目を開け、振り返る。濃い青髪が潮風にふわりと揺れる。彼女の視線は、伊藤のスイスポを通り越し、その先の86の方を向いていた。
美保「あなたが……矢田原カナタくんね」
カナタは少し戸惑いながらも、真っ直ぐに答える。
カナタ「……ああ、そうだ。あんたは、相川美保さん」
美保は軽く微笑んだ。
美保「さっき、海にお願いしたの。この松島で、あなたの走りを近くで見させてほしいって」
その時、さらに別の軽やかな声が響いた。
セリナ「うふふふ〜♪内藤セリナ、高校2年生〜〜〜☆よろしくね〜〜ん♡」
花「なおさらわかんねぇよォォォ!!!!!!」
ピンクの派手なデコレーションが施されたKワークスから、内藤セリナが手を振りながら降りてくる。そのノリからは想像もつかない速さを持つ電撃の少女の登場に、場の空気は一気に賑やかになった。
内藤「よ〜し!みんな〜気合い入れてこーっ☆ いいとこ見せなきゃだしねっ♪」
花「そのノリで速いのホント意味わかんねぇんだけど!!!」
松島の海岸線に、新たなバトルを予感させる排気音と、若きドライバーたちの熱気が混ざり合っていく。
(この松島で、海に愛されたR33は、紅い86の前に、どんな軌跡を描くのか___)
若林「先頭グループが観瀾亭のそばにある海岸クランク突入です!!!」「観瀾亭とは、、、日本三景・松島の絶景を眼前にのぞむ高台に建つ、伊達家ゆかりの歴史ある茶室です。もともとは伊達政宗が豊臣秀吉から譲り受けたとも伝えられ、伊達家代々の藩主が納涼や月見の際に使ったことから『月見御殿』とも呼ばれた、格式高い場所なんですね。その名刹のすぐそばで、激しいバトルの火蓋が切られようとしているゥゥゥ!!!!!!!!!」
美保のR33、ミッドナイトブルーのボディが、海岸線のクランクへ吸い込まれていく。
伊藤「う、速い……! クランクの入り口で一瞬のブレーキ、そこからのクリッピングポイントへの最短ルートを完璧にトレースしている……!」
伊藤翔太の黄色いスイスポが、そのすぐ後ろを追う。美保の走りは、海風のように淀みなく、しかし、潮の満ち引きのように力強い。彼女の走りのリズムは、松島の穏やかな波の動きと重なっていた。
花「すごい……まるで、車と海が会話してるみたい……!」
青いWRX STI VAB型の山吹花が、思わず息をのむ。そして、その二台のさらに内側から、紅い閃光が切り裂いた。
カナタの駆る86が、クランクのインを突く!
美保が選んだ最短ルートよりもさらにタイトなライン。砂浜に近いアウト側の僅かな路面変化も厭わず、まるで岩場を飛び回る海鳥のようなアクロバティックな進入だ。
伊藤「なっ……インベタ!? そこから立ち上がれるのか!!」
カナタ「美保ちゃん……あんたのラインは、優雅すぎるんだよ」
86のタイヤが、一瞬、アスファルトのざらつきに悲鳴を上げる。しかし、カナタの繊細なアクセルワークが、その限界をねじ伏せるようにトラクションを路面に叩きつける。
美保のR33が、クランク出口で一瞬、鼻先を前に出したかに見えた。しかし、カナタの86は、その勢いを殺さず、美保のサイドに並びかける。
松島の海岸クランクは、一気に二人のドライバーの熱気に包まれた。
美保のR33と、カナタの86。二台は海岸線の出口で完全に並び、時速100キロを超える速度で、松島の穏やかな景色を背景に、猛烈な加速競争を繰り広げた。
カナタ「ちくしょうっ……やっぱりR33の立ち上がりは化け物か!」
美保のR33は、その巨体からは想像もできないほどの暴力的なトラクションをリアタイヤに伝え、路面を鷲掴みにする。ミッドナイトブルーのボディが、まるで深海の生物が獲物を追うかのように、一歩、また一歩とカナタの86を引き離しにかかる。
しかし、カナタは決して諦めない。彼の86は、クランクのインを突いたことで得たわずかな勢いを、全身のバネのように使って維持していた。
カナタ「こんなところで、海に愛されてる女に負けるかよ!」
彼の繊細なアクセルワークが、一瞬の失速さえも許さない。86の紅い閃光は、R33のサイドミラーに焼き付いたまま、離れようとしない。松島の穏やかな海風は、今や二人のドライバーの熱気と排気ガスの匂いを運び、激しい熱戦の舞台を包み込んでいた。
若林「さあ、次のストレートに入ります!美保、カナタ、そして後続の山吹花、伊藤翔太の四台が、ほとんど一団となって次の難所、**瑞巌寺前ヘアピン**に突っ込むのかァ!!」
観客の熱狂的な歓声が海岸線に響き渡る。14歳の少女と、ストリートの伝説を背負う若きエース。松島を舞台にした、この熱き戦いの結末は、まだ誰も予測できない。
若林「こんなこと誰が予想したのでしょうか、、、、!??5位から9位で激しいドッグファイト!!!!迫り来る松島海岸の街道を、、、4台並走ォォォォォ!!!!!!」
トップグループの美保とカナタの激闘に目を奪われていた観客たちは、今、中位集団の信じられないほどの混戦にも熱狂していた。
松島の海沿いを走る彼らの熱気は、海岸線を伝い、次の難所「瑞巌寺前ヘアピン」へと向かう。誰一人として譲らない、まさに魂を削るようなバトルが、この美しい観光地を、一瞬にして灼熱のサーキットへと変えていた。
若林「こんなこと誰が予想したのでしょうか、、、、!??5位から9位で激しいドッグファイト!!!!迫り来る松島海岸の街道を、、、4台並走ォォォォォ!!!!!!」
観客の熱狂的な歓声が、トップグループの美保とカナタの激闘から、一瞬にして中位集団の信じられないほどの混戦へと移った。
若林「5位、内藤セリナのアウディR8 V10!6位、腹切カナタのTOYOTA 86!7位、ミルキークイーンのレクサスLC500!8位、山吹花のWRX STI!なんとこの4台が、クランク出口から完全に横一線に並んだまま、ストレートに突入しています!!!」
松島の穏やかな海岸線を、4色の閃光が切り裂く。
5位のR8 V10は、セリナの派手な外見からは想像もつかない精密なコントロールで、その大排気量NAエンジンを咆哮させる。
そのイン側、6位の腹切カナタが駆る86 NAは、非力なはずの車体から最後の最後までトルクを絞り出し、R8の巨体に食らいつかんとノーズをねじ込んでいる。
中央、7位のLC500、ミルキークイーンの優雅なマシンは、その名の通り流麗なクーペのボディを揺らしながらも、怒涛のパワーで4台並走の一角を占める。
そしてアウト側、8位のWRX STI VAB、山吹花の駆る青いスバルは、シンメトリカルAWDのトラクションをフルに使って、わずかな路面のうねりさえも推進力に変えている。
4台のスーパーカーとハイチューンマシンが、時速150キロを超える速度で、文字通り肩を並べている。誰一人として引く気配はなく、お互いのサイドミラーにはライバルの鬼気迫る表情が映し出されているだろう。
若林「そして、その後方、9位から驚異的なスピードで追撃を仕掛けているのは、相川美保のR33 GT-R V-specだァァァ!!!ミッドナイトブルーの巨体が、先行する4台のテールランプを食い破るかのように迫る!!!」
中位集団の熱気は、海岸線を伝い、次の難所「瑞巌寺前ヘアピン」へと向かう。誰一人として譲らない、まさに魂を削るようなバトルが、この美しい観光地を、一瞬にして灼熱のサーキットへと変えていた。
海岸線を切り裂く轟音は、松島の美しい景色を完全に飲み込み、その音は、次に迫る難所、「瑞巌寺前ヘアピン」へと吸い込まれていく。
5位のR8 V10、セリナは焦りの色を全く見せず、余裕の笑顔さえ浮かべている。しかし、その瞳の奥には、一瞬のミスも許さないプロの集中力が宿っていた。
セリナ「うふふ、みんな、仲良しこよしで並走なんて、可愛すぎ〜〜!
でも、このままじゃ瑞巌寺の鳥居にぶつかっちゃうよ〜ん?」
彼女の挑発的な言葉とは裏腹に、R8のブレーキランプが、四台の中で最も遅く、最も鋭く点灯した。
内側、6位の86 NA、腹切カナタは、R8の巨体が作り出すエアポケットから抜け出そうと、必死にステアリングを握りしめる。
カナタ「くそっ、この馬鹿力!ここで引いたら、このNAじゃもう追いつけねぇ!」
彼はヘアピンのイン側、瑞巌寺の石垣にキスをするようなタイトなラインを狙い、非力な車体の限界を超えるブレーキングに踏み込む。
中央の7位、LC500のミルキークイーンは、優雅な走りのイメージとは裏腹に、その巨体を力任せにねじ伏せていた。
ミルキークイーン「あらあら〜...これが……私の流儀。速さとは、優雅さと暴力を両立させるのですわ〜...」
V8エンジンの猛々しい唸りが響き渡るが、幅の広いLC500は、この四台並走の中で最もスペースに苦しめられていた。
アウト側8位、WRX STI VABの山吹花は、この極限のバトルに興奮しつつも、冷静さを失っていなかった。
花「みんな、速すぎ!でも、私はスバルのトラクションを信じる!!」
彼女はわずかに立ち上がり重視のラインを選び、ヘアピンをコンパクトに回るイン側の三台に対し、アウト側から立ち上がりの加速で勝負をかける戦略を採る。
4台が団子状となり、瑞巌寺の石垣の直前、ついにブレーキの限界点が訪れる。
若林「ヘアピン突入!4台ほぼ同時にノーズをインに向ける!接触は避けられるのかァァァ!!!」
その刹那、後方から、一際深く、地を這うような排気音が響き渡った。
9位、相川美保のR33 GT-R V-specだ。
彼女は、4台のブレーキング合戦が生み出した混迷を、チャンスと見た。R33は、その巨体が嘘のように、まるで獲物に飛びかかる猛獣のように、イン側の空間を一瞬で切り裂きにかかる。
美保「私は、海に愛されている。この潮の流れは、私に味方する……!」
他のドライバーがわずかに余裕を見たインベタのラインを、R33は完全に踏み潰す。LC500と86の間に、ミッドナイトブルーのノーズが強引に割り込み、美保はヘアピンのクリッピングポイントを、この五台の中で最速で通過した。
若林「なんということだァァァ!!!9位だった相川美保のR33 GT-R V-specが、一瞬にして中位集団を分断!!ヘアピンのインを強引にこじ開け、一気に5位に浮上したァァァ!!」
R33の強引な進入に、他の四台はわずかにラインを乱される。その一瞬の遅れが、勝敗を分けた。
美保のR33は、ヘアピンからの立ち上がりで、そのATTESA E-TSが路面を鷲掴み、暴力的な加速で先行するトップグループへと迫り始める。
そして、その直後。
若林「さらにR8、LC500、86、WRX STIの4台が、怒涛の立ち上がり加速で、再び横一線に!!松島の街道は、まだ誰にも予測不能の展開が続いている!!」




